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最弱職の召喚士ですが、初召喚で太古の神獣と契約したら現実に戻れなくなりました  作者: あげまんじゅう


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「蒼海の遺跡」

妖精の森から戻って、穏やかな日々を過ごしていたある日、ギルドから、新たな依頼の知らせが届いた。

「これを見てくれ」

 ギルドの一室で、シルヴァンが、これまで以上に真剣な表情で、一枚の海図を広げた。

「大陸南方の海域、その海底に、古い遺跡が沈んでいるとの報告がある。しかも、その周辺で、これまでにない規模の魔力反応が、観測されているそうだ」

「海底遺跡、ですか」

 ルートの言葉に、コハクが、資料を確認しながら頷いた。

「はい。漁師たちの証言によれば、夜になると、海面が、不気味な光を放つことがあるとのことです。……それに」

「それに?」

「その海域で、漁に出た船が、何隻か、行方不明になっているという報告も、上がっています」

 その言葉に、一同の間に、緊張が走った。

「行方不明……また、同じような現象、ってことですね」

 シィナの呟きに、シルヴァンが、深刻な表情で頷いた。

「恐らくな。これまでの経緯を踏まえると、召喚術の『核』が、その遺跡に眠っている可能性も、十分に考えられる」

 その言葉に、アシュルが、静かに口を開いた。

「海の底、か。正直、あまり、得意な環境ではないな」

「アシュルでも、苦手なことがあるんだね」

 ルートの、少し驚いたような言葉に、アシュルは、少し不満げに、眉をひそめた。

「当然だろう。私は、水中での戦闘に、特化した存在ではない。だが――」

 アシュルは、真剣な眼差しで、ルートを見つめた。

「行かないという選択肢は、ないのだろう?」

「うん。行方不明になってる人たちがいるなら、なおさら」

 ルートの、迷いのない答えに、アシュルは、静かに頷いた。

「ならば、しっかりと、準備をしていくぞ」

 こうして、ルートたちは、新たな依頼を受け、海底遺跡への遠征を決意した。

 準備を進める中、リュゼリアは、工房で、水中活動に適した装備の開発に、頭を悩ませていた。

「水中戦闘用の装備なんて、初めての試みだわ。……でも、やりがいがあるわね」

 リュゼリアは、そう言いながら、様々な素材を、試行錯誤しながら組み合わせていった。

「呼吸を確保するための、魔導具も必要ね。あとは、水の抵抗を減らすための、軽量化も」

 その真剣な作業ぶりに、様子を見に来たルートは、感心したように、その手元を見つめた。

「リュゼリアさん、本当に、器用ですね」

「ふふ、ありがとう。皆さんが、少しでも安全に、海の底を探索できるように、頑張るわ」

 その温かい言葉に、ルートは、嬉しそうに微笑んだ。

 数日後、装備を整えたルートたちは、南方の海域へと向けて、出発した。馬車を乗り継ぎ、辿り着いたのは、小さな漁村だった。

「ようこそ、いらっしゃいました」

 村長らしき初老の男性が、緊張した面持ちで、一行を出迎えた。

「最近、本当に、恐ろしいことばかりで……。海に出た若い衆が、もう、五人も、戻ってきていないのです」

 その報告に、ルートたちは、痛ましい表情を浮かべた。

「必ず、原因を突き止めます」

 ルートの、力強い言葉に、村長は、深く頭を下げた。

「どうか、よろしくお願いします」

 村での聞き込みを終えた一行は、漁師の案内で、問題の海域へと、小舟で向かうことになった。

「この辺りだ。夜になると、海面が、不気味に光るんだよ」

 案内してくれた漁師の男が、震える声で言った。

「ありがとうございます。ここから先は、僕たちで」

 ルートの言葉に、漁師は、安堵したように頷き、慌てて村へと戻っていった。

 小舟の上、一行は、これから潜る海を、静かに見つめた。

「アシュル、カイン、準備はいい?」

 ルートの問いに、二体は、それぞれ、頷いた。

「問題ない」

「いつでも、参れます」

 リュゼリアが作った、水中呼吸を可能にする魔導具を、それぞれが装着する。

「これを着ければ、水中でも、普通に呼吸ができるはずよ。ただし、効果時間には、限りがあるから、気をつけて」

 リュゼリアの説明に、一同は、真剣な表情で頷いた。

「よし、行こう」

 ルートの号令と共に、一行は、次々と、海へと飛び込んでいった。

 水中は、これまで見てきたどの景色とも違う、幻想的な世界だった。差し込む光が、水面越しに、揺らめきながら、辺りを照らしている。色とりどりの魚たちが、一行の周りを、興味深そうに、泳ぎ回っていた。

「わあ……綺麗ですね」

 シィナが、水中でも、はっきりと聞こえる声で、感嘆した。魔導具の効果か、水中でも、普段通りに、会話ができるようだった。

「気を抜くなよ。この美しさの奥に、何が潜んでいるか、分からないんだから」

 ゼクスの忠告に、一同は、気を引き締めた。

 一行は、海底へと、慎重に、潜っていった。深くなるにつれ、光は、次第に弱まり、辺りは、薄暗い、幻想的な青に、包まれていった。

「アシュル、この先に、何か感じる?」

 ルートの問いに、アシュルは、周囲を見渡しながら、答えた。

「ああ。あの方角に、強い魔力の反応がある。恐らく、そこに、遺跡があるはずだ」

 アシュルが指し示した方向へ、一行は、慎重に、泳ぎ進んでいった。

 やがて、視界の先に、巨大な、石造りの構造物が、見えてきた。長い年月をかけて、海底に沈んだと思われる、古代の遺跡だった。表面には、様々な種類の、海藻や、貝類が、びっしりと、張り付いている。

「これが、海底遺跡……」

 カインが、静かに、その威容を見つめた。

「間違いない。あそこに、核が、眠っているはずだ」

 アシュルの言葉に、一同は、緊張した面持ちで、頷いた。

 だが、遺跡に近づくにつれ、周囲の水が、少しずつ、不穏な色合いを、帯び始めていった。まるで、何かが、こちらの接近を、警戒しているかのように。

「――何か、来る」

 アシュルの、鋭い声と共に、遺跡の奥から、いくつもの、巨大な影が、ゆっくりと、姿を現し始めた。

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