表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱職の召喚士ですが、初召喚で太古の神獣と契約したら現実に戻れなくなりました  作者: あげまんじゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/74

第32話「家事戦争」

新しい家での生活にも、少しずつ慣れてきたある朝のこと。ルートが起きてリビングに向かうと、そこには、思いがけない光景が広がっていた。

「――お待ちください。その洗濯物の畳み方では、ルート様の衣服に、無用な皺が寄ります」

「うるさい。長年の経験から言えば、この畳み方が最も効率的だ」

 テーブルの上に山積みになった洗濯物を前に、アシュルとカインが、真剣な表情で睨み合っていた。

「え、何してるの、二人とも」

 ルートが恐る恐る尋ねると、二体は、揃ってこちらを振り返った。

「おはようございます、ルート様。洗濯物を畳んでおりました」

「おはよう、ルート。カインが、私のやり方に、いちいち口を出してくる」

 その説明に、ルートは、思わず苦笑した。

「二人とも、家事、手伝ってくれてたんだ。ありがとう」

「当然のことです。ルート様の身の回りのことは、この私が完璧にこなしてご覧に入れます」

「私だとて、負けてはいない」

 二体の張り合いに、リビングに顔を出したシィナが、くすくすと笑った。

「お二人とも、朝から元気ですね」

 その頃、キッチンからは、ゼクスの声が響いていた。

「おい、朝飯できたぞ! 早く来ないと、冷めるからな!」

 その声に、ルートたちがキッチンに移動すると、テーブルには、簡単ながらも、それなりに整った朝食が並んでいた。

「わあ、美味しそう。ゼクス、料理できたんだね」

「まあな。育ての親が、料理も上手かったから、自然と覚えたんだ」

 ゼクスが、少し誇らしげに言うと、後ろから、リュゼリアがひょっこりと顔を出した。

「あら、私が教えたこと、ちゃんと覚えていてくれたのね」

「リサの教え方が、良かったんだよ」

 その姉弟のようなやり取りに、シィナが、微笑ましそうに見守っていた。

 朝食を終えると、この日は、家の中の役割分担を決めることになった。リビングに集まった一同を前に、ルートが切り出した。

「みんなで暮らすようになったし、そろそろ、家事の分担を、ちゃんと決めておこうか」

「賛成です。行き当たりばったりだと、いずれ、不公平感が出てきますから」

 シィナの提案に、一同は頷いた。

「まず、料理は、俺とリサでいいか?」

 ゼクスの提案に、リュゼリアも頷いた。

「ええ、私も、料理は嫌いじゃないし。それに、工房の仕事の合間なら、時間の融通も利くから」

「なら、洗濯と掃除は……」

 ルートがそう言いかけた瞬間、アシュルとカインが、同時に手を挙げた。

「私がやろう」

「私が担当いたします」

 その即答ぶりに、ルートは思わず笑ってしまった。

「二人とも、やる気満々だね」

「当然です。ルート様の生活環境を整えることも、私の重要な役目ですので」

「私も、同様だ。それに――」

 アシュルは、ちらりとカインへと視線を向けた。

「貴様に任せて、手抜きをされては困るからな」

「それは、こちらの台詞です。あなたにこそ、任せるわけにはまいりません」

 二体の視線が、再び火花を散らせた。その様子に、シィナが、苦笑しながら提案した。

「それなら、洗濯と掃除、日替わりで交代するのはどうでしょう。それぞれ、得意な家事もあるでしょうし」

 その提案に、二体は、渋々といった様子で頷いた。

「まあ、それが公平というものか」

「異論はございません」

 こうして、なんとか、家事の分担が決まった。

 その日の午後、早速、掃除の当番となったアシュルが、リビングの掃除を始めた。てきぱきとした手つきで、埃を払い、床を磨いていく。

「なかなか、様になっているじゃないか」

 自画自賛するアシュルの横で、カインが、腕を組みながら、その様子を観察していた。

「――あなた、その拭き方では、家具の隅々まで、埃が取りきれておりません」

「なに?」

「見てご覧なさい。この角の部分、まだ埃が残っています」

 カインが指摘した箇所を、アシュルが確認すると、確かに、わずかに埃が残っていた。

「……ふん、些細なことだ」

「些細なことでも、ルート様が快適にお過ごしになれるかどうかに関わります。妥協は、いたしません」

 カインは、そう言うと、自ら布を手に取り、その部分を丁寧に拭き始めた。その完璧主義ぶりに、アシュルは、少し苛立たしげに眉をひそめた。

「貴様は、いちいち細かいな」

「細部にこそ、真心が宿るものです」

 その哲学めいた言葉に、アシュルは、呆れたようにため息をついた。

 夕方、外出から戻ってきたルートが、家の中を見渡すと、リビングも、廊下も、これまでにないほど、隅々まで綺麗に整えられていた。

「わあ、すごい、ピカピカだ」

 その様子に、アシュルとカインは、それぞれ、誇らしげな表情を浮かべた。

「当然だ。私が手掛けた仕事だからな」

「私の仕上げがあってこそ、この完璧さです」

 互いに、自分の功績を主張する二体に、ルートは思わず笑ってしまった。

「二人とも、ありがとう。すごく綺麗になってて、嬉しいよ」

 その素直な感謝の言葉に、アシュルとカインは、揃って一瞬、動きを止めた。それから、どちらからともなく、満足げな表情を浮かべる。

「――ルート様に、そう言っていただけるなら、これ以上の報酬はございません」

「私も、同感だ」

 珍しく意見が一致した二体に、リビングにいたシィナとゼクス、そしてリュゼリアが、思わず顔を見合わせて笑った。

「なんだかんだ、息が合ってるよな、あの二人」

 ゼクスの呟きに、リュゼリアも頷いた。

「争っているようで、ちゃんと、ルート君のためという一点では、揺るがないのね」

 その言葉に、ルートは、温かい気持ちで、賑やかな我が家を見渡した。

 新しい生活は、こうして、笑いと賑やかさに満ちた、かけがえのない日々として、少しずつ積み重なっていくのだった。

バチバチな2人

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ