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【完結】大師匠は大嘘つき 〜剣なんて握ったことの無い俺がでまかせで妹に剣術を指導したら、最強の剣聖が出来てしまいました〜  作者: ロナルド愛


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第103話 天罡吸魔法 その3

 兄である俺の言葉に従って、レイラはすぐ横へと立った。剣を握り直し、その切っ先を改めて邪神へと向ける。


 今のレイラの胸の内は、興奮で湧き立っているのが手に取るように分かった。


 思い返してみれば、突拍子もない修行法ばかりを課してきた俺が、こうして真正面から剣技を教えるのはこれが初めてだ。そりゃあ興奮もするだろう。


「覚えてるよな。先生が毎日欠かさずやってた鍛錬を」


 俺が隣で剣を構えながら言うと、レイラは迷いなく頷いた。


 あれほどまでに千年求敗の物語に憧れていたレイラのことだ忘れるはずがない。むしろ、俺と離れていた六年間、レイラはその鍛錬を一日たりとも欠かさず続けてきたはずなのだ。


 だが、未だその努力は実を結んではいない。


「力はお腹に宿り、それを全身に巡らす。力は全身を巡り、それを再びお腹に宿す」


 レイラは憧れの大師匠が行った修行方法を、まるで呪文のように繰り返した。


「そうだ。よく覚えてたな。で、ちゃんと鍛錬は積んでたか?」


「うん……お兄ちゃんが戦争に出てから、ずっと毎日。でも……」


 頼もしい言葉ではあったが、レイラは悔しそうに眉を寄せた。


 だが、その表情を見た瞬間、俺は確信する。


 これは絶対にいけると――


 俺は、妹の諦めの悪さを嫌と言うほど知っている。そして恐らく彼女が今日まで必死にその鍛錬を続けて来たことも。


 もちろん、レイラが目指していたのは、俺がさっき邪神の首を落として見せた“大師匠の名もなき一刀”だ。


 日々の鍛錬でレイラはすでに基礎を習得している。 あとは、今の彼女に足りないもの――それを俺が補ってやればいい。


 ならば、もう俺に剣は必要ない。 次の一撃は、レイラが決める番なのだ。


 俺は地面に剣を置き、剣を構えたままのレイラの腕にそっと手を添えた。


「さぁレイラ。やってみろ」


 レイラは不安げな視線を俺に向けた。

 今度こそ、剣の運びから力の入れ方まで直接教えてもらえると思っていたのだろう。


 だが、俺は邪神から視線を外さない。


 失敗の不安を抱えながらも、レイラは俺が導くままにゆっくりと剣を握る手に力を込めた。


 力は丹田に宿り、それを全身に巡らす。

 力は全身を巡り、それを再び丹田に納める――


 レイラは心の中でその言葉を繰り返し、自分の身体を巡る“気”を必死にイメージしている。


「大丈夫。それで合ってる」


 俺は優しく諭すように声をかけ、添えた手から“気”の波動をレイラへと流し込んだ。


「どうだ。お前のと同じだろ?」


 耳元でそう囁いた瞬間、レイラの身体がびくりと震えた。


 体内を物凄い勢いで駆け巡る熱い波動―― レイラはそれを、はっきりと感じ取ったようだ。


 そう。これが“気”の波動なのだ。


 ならば、この波動を剣に集め、一心に振り下ろすだけでいい。


「ありがとう、お兄ちゃん。後はもう私一人でも出来る!」


 レイラは俺の手を振りほどき、邪神の目の前へと躍り出た。


 もちろん振るう剣はただ一つ。


 あいつがずっと憧れ続けてきた――

 千年求敗の渾身の一刀だ。


 レイラが剣を高々と掲げ、全力で振り下ろす。


 その一撃は見事に邪神を捉え、三度(みたび)、その首を切り捨てた。


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