第102話 天罡吸魔法 その2
さて、そうなると問題になってくるのが、『天罡吸魔法』の準備が整うまでの時間をどうやって作り出すかだ。
妹が邪神の気を逸らせない今のままでは、大法の準備をしている俺が、お地蔵さんのように突っ立ったまま無防備な状態を邪神に晒すだけである。
そうとなると……どう考えても俺の身体が、邪神の爪で真っ二つに切り裂かれる未来しか見えない。
ならばどうする?
エイドリアンとその幼き主人は、むしろ今のまま邪神の力を抑える方に気を注ぐべきだろう。邪神の力がこれ以上強くなられては元も子もない。
エデンはどうだ?
いや。あいつには荷が重すぎる。それに、あいつには保険としてここぞという時の奇襲の一発を取っておいてもらいたい。
………。
つまり、今のままの状態なら俺達は全滅しかない――
だが、それはあくまでも俺達が今のままの状態ならである。
なら……考えられる答えは一つ。
もうここは『俺の妹レイラ』にどうにかしてもらうしかないじゃないか。
正直、妹と共に戦って俺はすぐに気がついた。
今まで《《普通の人間》》しか相手にしてこなかった彼女にはテクニックはあるがパワーが足りないんだ。
それが分かっているなら……。もうやる事は一つだろ?
こうなったら、今そのパワーというやつを、この場で妹に身につけさせるだけだ。
そう。アレをやるんだよ。今この場所で!
ほら、見てみろ。
レイラだってしきりに見様見真似でやろうとしているじゃないか……。俺がさっき邪神の首を落としたあの技を。
精神統一?
気の練り方?
気を丹田に落とす方法?
レイラ。お前なら、そんな手順。十段階くらいすっとばせるはずだ。
俺は心を決めた。
「おいレイラ!」
「何?お兄ちゃん?」
「俺の隣へ来い。今からアレをやる!」
《《アレ》》――そんな小さな単語だが、俺達兄妹はいつしかそんなふうに呼ぶようになっていた。
「えっ……今から!?」
戸惑い気味の言葉とは裏腹に、妹の顔には歓喜の表情が満ち溢れていた。もちろん妹も覚えているはずだ。あの山深い村での日々を……。
俺達にとって《《アレ》》と言えば、もう《《アレ》》に決まっている。
「そうだ。今ここでやるぞ!お前が大好きな修行ってやつを!」
そして邪神よ、よく見ておくがいい。これから起こる信じられないほどの奇跡ってやつを……。




