第37話 第一次、餓島撤収部隊が到着
五隻の駆逐艦と三隻の回収艦、三隻の警戒駆逐艦が岬に向かって音も無く接近して来る。
『日本海軍の救助艦隊』である。
五隻駆逐艦が岬から少し離れた所に錨を下ろす。
回収艦から数十艘のカッター(小舟)が下ろされる。
暫くして上陸網が下ろされ、水兵達が急いでカッターに乗り組む。
後に数十人の海軍陸戦隊の奇襲部隊兵が上陸網を降りてカッターに乗り込む。
力強くカッターを漕ぐ水兵達。
カッターは岬に向かって進んで来る。
静かに見守る岬の残兵達。
泣いている兵士。
拳を固く握り締める兵士。
唇を噛みしめる兵士。
俯く兵士。
座り込み合掌する兵士。
地獄の島からの撤収である。
暫くして、断崖の下に無数のカッターが着岸する。
海軍陸戦隊の奇襲部隊の兵士達が次々にカッターから飛び降りる。
岬の下から一斉に叫ぶ水兵と奇襲部隊の兵士達。
「お~い! 居るか~。皆んな集まってるか~! 迎えに来たぞ~!」
矢野周作少佐を先頭に、足早に岬を登る数十人の陸戦隊の兵士達。
矢野少佐が岬に立つ。
菊池中佐と向き合い、挙手の敬礼をする矢野少佐。
矢野少佐が、
「奇襲隊の命を受けた海軍陸戦隊の矢野周作です。御苦労様でした。只今から攻撃を代わります。ごゆっくりお休み下さい」
菊池中佐が、
「ご苦労。もう一度やるのか?」
「いえ、我々は島の残兵達を救う為に来た『捨石部隊』です」
「ステイシ?」
菊池中佐が驚く。
矢野少佐が、
「岬には三日後の二月四日と七日に再度、撤収部隊が来ます。我々はその『かく乱部隊』です。この後、大隊をもって飛行場に強襲をかけます。ガダルカナルの残兵達は大至急、この島を撤収して下さい」
菊池中佐は矢野大隊長を見詰めている。
頭上を第二波のゼロ戦の編隊が飛行場に向かって飛んで行く。
菊池中佐は上空のゼロ戦を見て、
「あのゼロ戦も俺達を援護に来たのか?」
「そうです!」
餓島の残兵達が岬の下の砂浜に降り始める。
陸戦隊の矢野大隊の軍装と『餓島の残兵達の軍装』が対照的である。
野村AI兵は黙って木原少尉に安全な降り口を指で示す。
木原少尉が、
「中佐殿、こちらが安全です」
「よし! 全員その少尉の後に続け。足元に気を付けろ」
「はい・・・」
残兵達は整然と順序良く木原少尉の後に続く。
断崖の下の砂浜では、カッターの水兵達が残兵に手を差し伸べる。
「ご苦労さまでした。良く頑張りました」
「足元に気を付けて下さい。焦らなくても大丈夫です。全員乗れます。全員連れて帰ります。そう、そう。ゆっくりと・・・」
痩せた残兵達は順序良くカッターに乗り込んで行く。
残兵達を満載したカッターが次々と岸を離れて行く。
先行するカッターの中から残兵達の声が。
『お~い! 先に行くぞー。気を付けて来いよ~』
水兵が叫ぶ。
「残兵を降ろしたら直ぐにまた戻って来ます! 安心して下さい」
AI兵達が餓島の残兵達を順序良くカッターに乗せて行く。
早坂AI兵や佐々木AI兵、野村AI兵、西村AI兵、他の数十基のAI兵が残兵達に指示をしている。
関元曹長や福原軍曹達も手際よく残兵達をカッターに乗せて行く。
何艘ものカッターが水兵の力強いオール捌きで回収艦に向かう。
矢野奇襲部隊が整然と飛行場に向かう
飛行場から聞こえる連射砲音と機銃音。
三機のゼロ戦が空中から滑走路に向けて爆弾を落として行く。
飛行場の方角から数本の煙りが上がる。
他のゼロ戦は空中を駆け巡り、20ミリ機関砲を米軍の兵舎に向けて連射して行く。
続く




