第36話 エスペランサ(希望)が見えた
夜が明けてジャングルの隙間から『岬』が見えて来る。
佐々木AI兵が、
「中佐。・・・あそこが『エスペランサ(希望)岬』です」
俯いていた菊池中佐が顔を上げて、眩しそうに朝の岬を見る。
「おお、あれがエスペランサか・・・」
後ろに続く兵士が菊池中佐のその声を聞いて顔を上げる。
「岬だッ! エスペランサ(希望)が見えたぞ」
兵士達がどよめく。
どよめきは瞬時に最後尾の兵士まで伝わる。
兵士達の顔色が変わる。
一人の負傷兵が力の無い声で、
「バンザ~イ・・・万~歳。もう少しだ。・・・もう少しだ!」
次々に兵士達が叫ぶ。
「戻れるぞ。・・・生きて帰れる。助かった。俺達は生きて帰れるんだ!」
涙を流すの兵士達。
兵士達の進む脚に力が入る。
突然、上空に『ゼロ戦の編隊』が通過して行く。
四機編隊のゼロ戦はルンガ(ヘンダーソン)飛行場の方向に向かって飛んで行く。
上空を見上げてどよめく兵士達。
飛行場の方角から、機関砲の発射音が鳴り響く。
続いて第二波のゼロ戦が飛行場に波上攻撃をかける。
兵士達は涙して、
「バンザーイ。頑張れ~。ヤッツケロ~! ぶッ潰せー!」
兵士達の群れで岬はどんどん膨れ上がって行く。
椰子の樹に見張り担当の原住民が二人、拘束されている。
先に到着していたボロボロの軍装の木原少尉が、菊池中佐に不動の姿勢で「挙手の敬礼」をして、
「早坂中隊 木原猛夫 少尉です。ご苦労様でした! 船がもう直ぐ来ます」
菊池中佐が怪訝な顔で、
「ハヤサカ中隊? 船がもう直ぐ来る? キサマ達は無電機を持っとるのか」
「いえ。情報が入って来るのです」
「ジョウホウが入る?」
「今、ここで中佐に説明しても信じてくれないでしょう」
「? 何だそれは?」
突然、関元曹長が叫ぶ。
「あッ! 木原少尉。来ました! 日本の船です」
岬に集まった全ての兵隊がどよめく。
「来た? 来たーッ! 帰れる。来たぞ~ッ!」
兵士達がむせび泣いている。
続く




