第35話 軍服の汚れてない兵士(AI兵)
藤田中尉が野村AI兵に尋ねている。
「野村伍長達は何処に居たのだ」
「浜です」
「ハマ? あそこで?」
野村AI兵の全身を見る藤田中尉。
「怪我は無いのか?」
「ハハハ、怪我だらけですよ」
藤田中尉は不気味な眼で、舐める様に野村AI兵を見る。
「? キサマ、それで怪我をしていると言うのか? 歩けるじゃないか」
「そうですね」
「そうですね??」
藤田中尉は立ち止まり、
「オマエは?・・・」
佐々木AI兵が菊池大隊長の前を進む。
菊池中佐は前を歩く真新しい軍服の兵士を見て、
「オマエ等の戦闘は無かったのか?」
佐々木AI兵は黙っている。
菊池中佐が、
「オマエは・・・?・・・」
佐々木AI兵が、
「中佐。私はあなた達を一兵たりとも残さずさこの島から撤退せる責任が有ります。黙って私達に付いて来て下さい」
菊池中佐は立ち止まり、不気味そうに前を歩く佐々木AI兵を見ている。
行列に紛れ込み、必死に疲れ果てた兵士達を支えている元早坂中隊のAI兵達。
細いジャングルのケモノ道。
やつれた負傷兵達が『蟻の行列』の様に進んで行く。
いつの間にかシンガリに付いている西山AI兵が、
「おい、遅れるな。頑張れ。しっかり付いて行け」
斉藤AI兵が、
「頑張れ、頑張れ。皆で故国へ帰るんだ」
兵士達は泣いている。
他の部隊の残留兵達も列に合流して、どんどん膨れあがる。
「皮だけ」の一人の兵士が、後ろの「骨だけ」の丸腰の兵士に話しかける。
「おい! オマエは何処の部隊だ」
「石井部隊だ」
「石井部隊? 何人残った」
「二九」
「二九? 上陸時は」
「三百だ」
皮だけの兵士は驚いて、
「三百で二九か・・・。大変だったのう」
「・・・何日もろくな物喰ってねえんだ。あまり話しかけないでくれ」
「そうか、すまん。・・・よかったら、これを喰え」
皮だけの兵士が雑嚢から「煮干しの様」な物を取り出す。
「ほら、喰え」
「? スルメか」
「・・・乾燥させたトカゲだ」
骨だけの兵士は表情も変えずに、ジッと 差し出された「黒いトカゲの干物」 を見ている。
続く




