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第32話 一万人の残留兵

 椰子林を敵機に見つからないように急ぐ木原少尉以下六人の兵士。


木原少尉が、


 「森 、島にはどの位の残兵が居るんだ?」 

 「ハイ! 一木の兵隊が言うには一万以上は居るだろうと言ってました」


全員が驚く。


 「えッ!」


木原少尉、


 「いッ、イチマン! そんなに居るのか?」


河野上等兵、


 「誰とも会いませんねえ。・・・いったい何処に隠れて居るんでしょう」


森 二等兵、


 「山の方に居るらしいです」


木原少尉、


 「山? オーテン(アウステン)山か? あそこは敵機の爆撃でハチの巣だろう」


森 二等兵、


 「北側の川沿、マタ川(マタニカウ川)に陣を構えてると言ってました」


木原少尉、


 「何を喰ってるんだろう」

 「病人だらけで弾も米も薬も少なく、まさに生き地獄だと言ってました」


木原少尉が心配そうに、


 「岬まで来れるんだろうな」


森 二等兵は黙り込む。


編隊を組んだ米軍戦闘機(F4Uコルセア)が戻って来る。


関元曹長は悔しそうに空を見上げて、


 「クソ~。ラバウルのゼロ戦はどうした。百機は在ると言ってたじゃねえか」


木原少尉が、


 「何処かで戦っているんだろう。俺達の為に」


福原軍曹、


 「少尉。ここから先は断崖ですよ。ジャングルに迂回しましょう」


関元曹長、


 「ジャングルか。背嚢が重いのう」


木原少尉は関元曹長の背嚢を見て、


 「キサマは詰め過ぎだ」

 「腹が減っては戦(イクサ)が出来ませんからねえ」


森 二等兵、


 「腹がイッパイでも戦(イクサ)が出来ませんよ」


六名が笑う。

                          続く

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