第30話 AI兵の知らせ
砂浜で夕飯の支度をしている七人の兵士。
ドラム缶を覗く森二等兵が、
「あ、マッチが有りました」
木村一等兵が海水を入れた飯盒を持って来る。
それを見て福原軍曹が、
「塩水で飯を炊くなんて生まれて初めてだ」
木原少尉が、
「俺達が此処でやってる事はみんな生まれて初めてだ」
関元曹長、
「へへ、まったくですわ。ここで生き延びられたらどんな所でも生きられます」
木村一等兵、
「俺達は人間ですか」
全員が笑う。
夕飯の後、ヤシの根元で一服している七人。
木原少尉が、
「米が上手く煮えてなかったな」
関元曹長、
「そうですか? 腹が減ってたから分らなかったです」
木村一等兵が突然、
「あの~・・・さっき、水を汲んでる時から気に成ってたんですけど」
関元曹長、
「何だ」
「あそこに誰か居る様な気がして。それも、一人じゃない」
全員が木村一等兵の指先を見る。
関元曹長が、
「ああ、あれは壊れた戦車だ。気にするな」
森 二等兵はジッと見て居る。
と、
「あれ? 動いていますよ」
木原少尉が、
「おい、森、見て来い」
「はい!」
森 二等兵が38銃を構え、そっと砂浜を進む。
暫くして森 二等兵が叫ぶ。
「少尉殿! 皆、ここに居ますッ!」
木原少尉と関元曹長、福原軍曹が顔を見合わせる。
関元曹長が、
「皆んな? 皆って誰だ」
森 二等兵の喜ぶ声。
「早坂中隊長殿が居ります。中隊の皆が此処に集まってますよ」
木原少尉、
「まさか!」
関元曹長、
「先に逝った連中がですか?」
森 二等兵の叫ぶ声が続く。
「早坂中隊長殿、高橋軍曹殿、佐々木准尉殿、野村伍長殿、・・・あ、岡田上等兵殿、西山、石井、飯田も、林、渡辺。おい、オマエ等、俺達の後ろに居たのか・・・。少尉殿! 早く、早く来て下さい。全員此処に集まってます」
木原少尉達六人が38銃を肩に立ち上がる。
関元曹長は眼を凝らして黒い塊を見る。
木原少尉が、
「おいッ! 行ってみょう」
七人が黒い塊に向かう。
木原少尉が驚いて叫ぶ。
「あ~ッ!!」
早坂AI兵を先頭に、横一列に並んだAI兵達。
木原少尉を見て優しく笑う。
木原少尉が叫ぶ。
「中隊だッ! 中隊がここに在る。早坂中隊が全員此処に集まって居るぞ」
関元曹長や痩せた敗残兵達は「故早坂中隊」を見て驚いて立ち尽くす。
木原少尉は暫く次の言葉が出ない。
「・・・」
早坂AI兵は木原少尉を見て、
「どうした」
木原少尉が、
「早坂中隊長以下、英霊に敬礼!」
七人の兵隊が不動の姿勢で挙手の敬礼をする。
AI兵達は何も言わず七人の兵士を見ている。
『早坂AI兵』が、
「おい。もう良い。此処には階級なんか無い。在るのは思い出だけだ」
木原少尉は納得した様に、
「え? ・・・はッ!」
木原少尉が直る。
六人が敬礼を解く。
木原少尉は早坂AI兵を見詰め、
「一緒に逝けなくてすいません。」
「バカな事を言うな。此処で遭った事を伝えろ。生きて生きて生き抜くんだ。キサマ達の周りには、これだけの再生された兵隊(AI兵)が憑いているのだ。・・・もうこれ以上、キサマ等を死なせはしない」
佐々木AI兵が、
「俺達はこの島で永遠に戦います。故国に戻ったら俺達の事を必ず家族に伝えて下さい」
西山AI兵が、
「頼みますよ」
木原少尉、
「俺達にとり憑いて一緒に故国に帰りましょう」
AI兵達全員が、優しく淋しげに笑って木原少尉達七人を見る。
すると佐々木AI兵が一歩前に出て来て、
「あと五日(二月一日)したらエスペランサ岬に救援部隊が来ます。間違えないで下さい。『五日後』ですよ」
早坂AI兵が、
「この島にはまだ多くの残兵が居る。速やかに『エスペランサ岬』に集めろ。時間がないぞ。一兵たりとも、この島に残すな」
高橋AI兵が、
「皆さん、無事に撤収して下さい。ワタシ達(AI兵)全員が残兵達を安全に見守ります」
早坂AI兵が、
「木原! 頼んだぞ。必ず故国に戻ってオレ達の事を家族に伝えてくれよ」
AI兵達は月夜の砂浜から笑顔で消えて行く。
月明かりに舞う極楽蝶も消えて行く。
木原少尉が、
「あッ! お待ち下さい。早坂中隊長殿・・・」
続く




