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第03話 二人の斥候

 ※ 日下AI兵 は斥候の「佐籐上等兵」を見守って居る。


佐籐上等兵は夕暮れのジャングルのケモノ道を一目散に西に下って行く。


声が聞こえた。

佐藤上等兵は急いで茂みに隠れる。


 「・・Rock 7,Rock 7・・・ , I'm going to east.There isn't a Japsoldier・・・」


38銃を構え息を殺す佐藤上等兵。

三人の米兵が藪を掻き分け、獣道(ケモノミチ)を歩いて来る。

先頭は自動小銃を構え、次の一人は無線機を背負い、シンガリは軽機銃を携えて通り過ぎて行く。


 ※ 緒方AI兵 はもう一人の斥候「菅井上等兵」を見守っている。


菅井上等兵も夕日に染まったジャングルの獣道(ケモノミチ)のを『南』へ下って行く。


小さな空き地に、日本兵の死体が四体、転がっている。

死体の腹部からは蛆(ウジ)が湧いている。

地雷を直接踏んでしまったのか一体の下肢は無い。

千切れた死体には、蠅(ハエ)が小豆(アズキ)を撒いた様にたかっている。


菅井上等兵は死体に合掌して、また藪(ヤブ)の中を掻き分け進んで行く。


 早坂中隊が夜営の支度をしている。


早坂が、


 「おい、斥候が戻るまで米は三十粒迄だぞ。梅干しは箸、一切れだ!」


兵士達が、


 「はいッ!」


早坂は森 秀雄二等兵の飯盒炊飯を見て、


 「おい、もっと水を入れろ、バカ者」

 「あッ、ハイ!」


河野源太郎上等兵が、


 「中隊長殿ッ!」

 「うん?」

 「先ほど、バナナの実が菜って居りました」

 「そうか。 採って来い」

 「はッ!」

 「気を付けろ。敵の狙撃兵が居るかも知れんからな」

 「大丈夫です。アメ功は五時で仕事は終わりです」


兵士達が大笑いする。

早坂は河野上等兵を睨んで、


 「良いから早く採って来い」


 ジャングルに地獄鳥の啼く声が木霊(コダマ)する。


 斥候の佐籐上等兵が満月の月明かりの下で、腰袋から「乾パン」を摘み、口にする。

眼を凝らして川辺り(カワべリ)を見ると、「米兵の死体」と「日本兵の死体」が転がっている。

米兵の死体は拳銃を握って、日本兵の死体は銃剣を握っている。

佐藤上等兵が、


 「・・・相討ちか」


佐籐上等兵は乾パンを摘みながら、米兵の装備を見ている。


 「 ?! 」


米兵のショルダーバックの中から「缶詰め」が覗いている。

佐藤上等兵は死体に近付きバックを開く。

中からは缶詰め、パン、チョコレート、ガムが出て来る。

夢中で缶詰めを手に取り、銃剣の先で蓋を開ける。

更にバックの中を漁ると、「ナイフ付きホーク」が出て来る。

ホークで缶詰めの中身を貪(ムサボ)る佐藤上等兵。


ふと米兵の肩に掛った薄い皮の『図嚢カバン』に目をやる。


米兵に近づき、死体の肩から図嚢カバンを外す。

カバンを開けると中から地図と方位計(コンパス)が出て来る。

月明かりに照らして地図を広げる。

地図上には『飛行場』が描かれている。

佐籐上等兵はそれを見て驚く。


 「あッ! 飛行場だ。?・・・この印は敵の配置か? 此処(ココ)が俺のいま居る川だ。俺は・・・ああ、東から来たんだ。と云う事は今の中隊の位置は・・・此処か。俺達の部隊は・・・あれ? これは、まったく逆だ。反対側に進んでいる。俺達は何処へ上陸したんだ?・・・ええッ! 上陸地点が反対側だ。こッ、これは! 早く部隊に知らせないと」


佐籐上等兵は缶詰めをほおり投げて、月夜のジャングルの中を走って消えて行く。


 もう一人の斥候、菅井上等兵も岩陰で「乾パン」を摘んでいる。


それを見守っている緒方AI兵。

菅井上等兵は岩に寄りかかり、水筒の水を一口飲み月を眺めている。


 「綺麗な月だなあ。戦争か・・・。内地じゃ皆どうしてるんだろう。もう田植えは終った頃だろうなあ」


と、突然、枝が折れる音がする。


菅井上等兵が急いで38銃を取り、音の方向に構える。


人影が見えて来る。


菅井上等兵は決められた合言葉を小声で、


 「ヤ・・・マ!」


人影も小声で、


 「タカ」


再度、菅井上等兵が、


 「ヤマ・・・」


人影が、


 「タカ!」

 「タカ? おお? 児玉中隊か?」


人影が、


 「ハヤサカか?」


二人が立ち上がる。


近寄って月明かりの下で互いを確認する。

菅井上等兵が、


 「キサマ、一人か?」

 「そうだ。自分は児玉の兵隊だ。部隊がはぐれてのう。自分は斥候なんだ」

 「斥候? 何だ、俺もだ。児玉は何人残ってる」

 「九名だ。ほとんどやられてしまった。隊長もやられた」

 「隊長も?」

 「早坂は?」

 「俺を入れて九名だ。オマエ等の部隊と同じだ。だが早坂中隊長は生きとるぞ」


児玉中隊の兵士は驚いて、


 「えッ? 中隊長は生きてる? よし! 俺達は早坂中隊に合流しよう。此処に居てくれ。直ぐに皆を呼んで来る」


菅井上等兵が、


 「傍に居るのか?」

 「うん」

 「戻る道は分かるだろうな」

 「枝に手拭いを裂いて目印を付けて来た」

 「ハハハ。ジブンと同じだな。気を付けて戻れよ」

 「分った。キサマの名前は?」

 「菅井上等兵だ。オマエは?」

 「大宮 滋上等兵だ」


大宮上等兵が月明かりのジャングルに消えて行く。

                          続く

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