第24話 片足を背負う兵士
太い樹の根元で、大宮上等兵が座って「見張り」をしている。
『丸山道』の奥から、誰かを呼ぶ声が聞こえて来る。
「オ〜イ・・・オ〜イ・・・」
声は徐々に迫って来る。
暫くすると上半身裸の日本兵(彷徨兵)が、杖を突いて現れる。
兵士はヨタヨタしながら大宮上等兵の前を通り過ぎて行く。
大宮上等兵は兵士に声をかけた。
「おい、キサマッ! 何処の部隊だ」
兵士は大宮上等兵の掛けた言葉が聞こえないのか、一点を見詰めて歩いて行く。
「おいッ! オマエ・・・」
ジッと通り過ぎた男の後ろ姿を目で追う大宮上等兵。
「気がフレテいるのか」
暫くするともう一人の兵士が、後を追って来た。
大宮上等兵が、
「オイ、待て! キサマ等は何処の・・・」
この兵士も俯いて、樹の枝を杖代わりに大宮上等兵の前を通り過ぎて行く。
大宮上等兵はやはり、兵士の後ろ姿もジッと見詰めていた。
と、背中に奇妙な『骨付きの肉』を背負っている。
その肉には沢山の蠅がたかっていた。
大宮上等兵は蠅のたかった肉棒の先を見て腰を抜かす。
「あ、・・・指だ。ヒッ、人の脚だ! アッ、・・・アァ~~ア~・・・」
一目散にホラ穴営舎に飛び込んで行く大宮上等兵。
洞穴営舎では木原少尉が横に成っている。
「ア~~~、ヒヒヒ、ヒト、ヒト」
大宮上等兵の発狂した声に驚き、木原少尉が飛び起きる。
「来たかッ!」
同時に、関元曹長、福原軍曹、河野上等兵、森 二等兵が壁の38銃とカービン銃を取る。
大宮上等兵は震えながら。
「チチ、違います。ヤ、ヤ、ヤツ等、ヒトの足を喰っています」
木原少尉が冷静に
「ヤツ等?」
大宮上等兵が震えながら、
「どッ、どこかの日本兵です」
関元曹長が、
「ニホンヘイが? 血迷ったか」
木原少尉は急いでホラ穴営舎の外に出て行く。
それを追って全員が穴から出て来る。
大宮上等兵はホラ穴営舎の中で気が触れた様に、宙の一点を見詰めて居る。
ジャングルの中に不気味な声が木霊する。
「オ~~~イ。・・・オ~イ・・・」
木原少尉は関元曹長を見て淋しそうに、
「戻ろう」
沈黙する五人。
俯きながらトボトボと『ホラ穴兵舎』に戻って行く。
木原少尉が穴に入る前に急に振り返る。
ジャングルを見回し唇を噛み締め「不動の挙手の敬礼」をする。
木原少尉の目からは涙が溢れ出ている。
関元曹長達四人も木原少尉に倣って、ジャングルに響く不気味な声の方向に向かって、
不動の敬礼をする。
続く




