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第22話 野村AI兵の伝言

 小休止が終わり、先頭に木原少尉、後ろに関元曹長、河野二等兵、大宮二等兵が麻袋を担ぎ、シンガリに福原軍曹が付いて行く。


五人の兵士が周囲を窺(ウカガ)いながら、足早にホラ穴兵舎に向かう。

木原少尉が、


 「おい、木村の薬は有ったか」


河野上等兵、


 「分からないから薬箱ごと全部カッパラッテして来ました」


木原少尉は感心して、


 「オマエ等プロの泥棒に成れるぞ」


大宮上等兵、


 「いやあ、早坂中隊長殿のお陰ですよ。俺達を最後まで見守っててくれる」


木原少尉、


 「あの中隊長は、本当に死んでるのかなあ」


関元曹長、


 「死んじゃいないです。俺達が普段見えないだけです。あの人達は国の為に、この島で永遠に戦っててくれるんです」


木原少尉は未(イマダ)だに納得が行かない様子。


 「何とか生き延びて、彼らの最期を家族に伝えなくてはのお」


福原軍曹、


 「その為に、あの人達は俺達を見守ってくれてるんですよ」


木原少尉はしみじみと、


 「オマエ等死ぬなよ」


河野上等兵、


 「木原少尉も」


木原少尉、


 「バカ者! 俺は死んではいけない兵隊だ」


河野上等兵は木原少尉を見て、


 「あ、失礼しました」


 ホラ穴営舎が見えて来る。

木村一等兵と森 二等兵がホラ穴兵舎から出て、外に立っている。

木村一等兵は咳き込み、苦しそう。

木原少尉は木村一等兵を見て心配そうに、


 「アイツは、寝てなくて大丈夫なのか?」


関元曹長が遠目で、


 「おお? 木村の隣に兵隊が立ってるぞ」


福原軍曹が、


 「あれは森だ」

 「いや違う。その隣だ」


大宮上等兵、


 「誰だ?・・・あッ! あれは野村伍長殿です」


関元曹長が驚き、


 「ええ!・・・あッ、野村さんだ!」


兵士達はどよめく。

木原少尉が、


 「有り難いのお。皆、俺達を草場の陰から見守って下さる」


 ホラ穴兵舎の前で木原少尉は立ち止り、鉄帽を被った野村AI兵に対し「不動の姿勢」で敬礼をする。

それに倣って四人の兵士も荷物を置いて、挙手の敬礼をする。

野村AI兵が優しい笑顔で軽く敬礼を返す。

木原少尉が野村AI兵に近づき、


 「ご苦労様です」


野村AI兵は木原少尉の前に出て、


 「何をおっしゃいますか。私はもうこの世の者ではありません。苦労などは有りません」


木原少尉は驚いて、


 「え?」


すると野村AI兵が、


 「もう少し我慢して下さい。『エスペランサ岬(希望岬)』に援軍が到着します」


六人が驚き、


 「エングン?」


関元曹長達六人がどよめく。

木原少尉が、


 「それはいつですか?」


信じられない顔の木原少尉。


野村AI兵が薄笑いを浮かべて、


 「また、知らせに来ます。それまで頑張って下さい」


野村AI兵はそう言い残し、頭上の極楽蝶(ドローン)と共に、七人の前から陽炎(カゲロウ)のように消えて行く。

木原少尉が、


 「あ! 野村伍長」


七人は呆気にとられて周囲を見回す。

諦めた様に全員が俯(ウツム)く。

七人は野村AI兵の立って居た場所に合掌する。

                          続く

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