第21話 コカコーラ
木原少尉の縛られている樹の周りに、ヘトヘトに成った関元曹長達が集まって来る。
「少尉、成功しましたよ」
木原少尉は一点を見詰めて動かない。
関元曹長が、
「おい、福原、水はねえか」
「ミズ? そんな物は無かったです」
河野上等兵が、
「あッ、ビールみたいな物をカッパラって来ました」
「酒か? ・・・まあ良い。元気が出るだろう。出せ」
河野上等兵が麻袋から「こげ茶色の瓶」を取り出す。
福原軍曹は瓶を見詰めて、
「アメ功はそんな色のビールを飲んでるのか?」
河野上等兵は戦利品の「十徳ナイフ」の中から栓抜きを選び出して、栓を開ける。
溢れた泡を舐める河野上等兵。
「うッ、何だこれは。甘いような・・・、薬か?」
「どれ、俺に舐めさせろ」
渡された瓶の周りを舐める関元曹長。
「うん? これは・・・生姜サイダーだ」
福原軍曹が、
「甘いんですか?」
関元曹長はゆっくり、味わう様に瓶の『水?』を飲む。
「・・・う~ん、甘いと言うか・・・美味い」
旨そうに飲む関元曹長をみて福原軍曹が、
「私にも一口毒味させ下さい」
「おお、飲め、飲め」
福原軍曹は喉を鳴らせ瓶の中身を飲む。
河野上等兵と大宮上等兵が恨めしそうに福原軍曹を見ている。
河野上等兵が、
「・・・旨いですか?」
「旨い。これは気付け薬だ。少尉に飲ませよう」
大宮上等兵、
「俺も飲みてえなあ」
福原軍曹は大宮上等兵を見て、
「待てや。焦るな。まずは木原少尉殿だ」
福原軍曹は関元曹長に瓶を渡す。
「・・・こぼさないで下さいよ」
「分かっとる」
関元曹長が虚ろな眼の木原少尉に『奇妙な色の炭酸水』を飲ます。
木原少尉は咳き込み、鼻から泡を出す。
「ブフ、ゴホゴホゴホ。・・・何をする!」
関元曹長が、
「お、気が付いた。さすがアメ功の気付けだ」
木原少尉は関元曹長の持つ瓶を見て、
「・・・? これはコカコーラじゃないか」
「何スか? それは」
「アメリカのサイダーだ」
「サイダー・・・。ほう。コカーラねえ・・・」
木原少尉は関元曹長達四人を見て、
「・・・成功したようだな」
関元曹長、
「 何だ、木原少尉、俺達の突撃を知ってたんですか」
「うん?・・・うん。佐々木准尉が来て教えてくれた」
「佐々木准尉? ああ、ホトケ様ですか。実は俺達の所にも早坂中隊長と佐々木准尉が出て来てくれましてね。上手く段取ってくれたんですよ」
木原少尉は河野上等兵の傍に置いてある麻袋を見て、
「それか」
大宮上等兵が笑顔で、
「はい。当分、腹との戦いは落ち着きそうです」
骨と皮の木原少尉が笑う。
「ハハハ、良くやった。オマエ等に勲章をやろう」
関元曹長が、
「クンショウ? 要りませんよ、そんな物。・・・木原少尉、頭の方はどうですか」
「アタマ? 何にか遭ったのか」
四人が顔を見合わせる。
関元曹長は感心した様に、
「やっぱりコカーラのせいだ」
福原軍曹が、
「効くねえ。木村にも飲ませてやろう」
木原少尉が、
「そうだな。おい、ここで少し腹ごしらえしょう」
関元曹長が、
「おお。そうだ! 早速、缶詰めを開けましょう」
大宮上等兵が、
「待ってました」
河野上等兵、
「ヨッシャ!」
河野上等兵が麻袋から缶詰めを取り出し、一つ一つ缶切りで開けて行く。
眼が点の残存兵達。
続く




