第12話 死を選択する兵士
早坂中隊長の傍で関元曹長が指揮を取り、ブタを解体している。
佐籐上等兵がイモ袋を担いでホラ穴(営舎)から出て来る。
兵士達は久しぶりの「贅沢」に眼の色が変わっている。
佐籐上等兵が元気よく、
「イモを持って来ましたッ!」
兵士達が、
「おお、豚汁、豚汁。 ハハハハ」
嬉しそうな兵士達。
イモを切る兵士。
肉を刻む兵士。
飯盒を提げて水を汲みに行く兵士。
森 二等兵が、
「おい、何処かに塩はねえかなあ」
木原少尉が、
「営舎に有るぞ。俺の背嚢の右側だ。持って来い」
「えッ、よろしいんですか」
「構わん。一心同体だ」
森 二等兵は木原少尉を見詰めて、
「・・・木原少尉殿の部下で光栄で有ります!」
「キサマ、調子が良いぞ」
兵士達が爆笑する。
早坂が、
「今日は腹いっぱい食え」
森 二等兵は泪を浮かべて、
「はいッ!」
森 二等兵は急いでホラ穴営舎に塩を取りに行く。
早坂が、
「関元! 火を熾せ」
「はい!」
「煙は出すなよ」
「勿の論です」
西山軍曹が、
「あ~あ、コレで酒でも有ったらなあ~」
木原少尉が、
「コラ! 調子に乗るな。此処は最前線だぞ」
兵士達が爆笑していると、
「ターン・・・」
突然、ジャングルの中に『銃声』が響く。
河野上等兵が急いで銃を取る。
「・・・敵か!」
福原軍曹が、
「?・・・あれは『短銃』の音だ」
兵士達が顔を見合す。
森 二等兵が、
「もしかしたらあの兵隊・・・」
木原少尉が、
「あの兵隊?」
「住吉部隊の戦車兵です」
西山軍曹が、
「センシャヘイ?」
「はい。・・・アイツ・・・ヤッタな」
木原少尉が、
「自殺か?」
渡部二等兵は森 二等兵を見て、
「オマエが会ったと云う兵隊か?」
「多分な。小便を垂れ流していたから、最後の力で引き金を引いたんだろう」
森 二等兵は銃声の方向を向いて立ち上がり、深く頭を下げて合掌する。
それを見て早坂、木原少尉、西山軍曹、河野上等兵、渡部二等兵、その他全員が起立し、合掌をする。
河野上等兵が、
「まあ、いずれ俺達もああ成るんだ」
兵士達は何も無かったかの様に朝飯の準備を進める。
あちこちで笑い声が起こる。
久しぶりにタンパク質を摂ったせいか、兵士達の顔色が桃色に変わっている。
続く




