第八話「買い出し、初めて見るもの」
これまでのプロテイン伝説は......
……ヒタ、ヒタ、ヒタ
ビクッ!!
国王「異世界の勇者殿、よくぞ参られた!」
ボルドー(この男、果たして剣術などできるのだろうか?)
メッテ(分からないわ......)
ベルナルド「プロテインの確保!」
メッテ(分からないわ......)
ボルドー「ベルナルド殿、ちょっとよろしいですか?」
マリア「本日は、お誘いに参りました......」
ベルナルド・センサーが反応を示したようです。
ゴトゴトゴトゴトッ。
荷馬車に揺られながら隣町へ向かうのはベルナルド、護衛のニックとヒッチ、倉庫番のキパール、そしてメイドのマリアの5名。
みんな、何だか眠そうにしています。
それもそのはず、城を出発したのは早朝4時。
みんないつもより睡眠時間が短く、特にマリアとキパールは夜中まで準備作業をしていたため、ほぼ徹夜です。
道中は、左右を小さな山や草原に挟まれた畦道が延々と続いており、暖かな日差しの中で馬車に揺られていると、眠くなってしまうのも仕方ありません。
皆それぞれお互いに気を遣い、静かに馬車に揺られる旅となります。
一番元気なのはベルナルドですが、彼は自分なりにこの小旅行を楽しんでいる様子です。
「……」
まるで、自分たちの為だけに用意されたようにも思える、長い長い一本の道。
空を見上げると、視界一面に広がる空。
澄んだ空間に、仄かに地面からの芽吹きの香りが混じる、軽い空気の匂い。
新鮮な映像が脳に入ってくる時のあの感覚。
日本での生活とは真逆の環境。
全てが新鮮。
荷馬車に乗るのも、当然初めての経験である。
乗り心地については、快適と言うと嘘になるが、それはこの世界のアトラクションのようなものに感じた。
ベルナルドは、全身で旅路を楽しんでいた。
♢♢♢
町の外からでもはっきりと感じる喧騒。
ペシミールとは全く違う、異国の雰囲気。
お祭りの時にも似たあの感覚。
日も暮れた18時頃、何時間もの間、畦道の波に揺られ、ようやくハブ町に到着しました。
まだこの時間でも、通りは多くの人たちで賑わっており、ペシミール国の城下町と比べたら遊園地並みの賑わいです。
「私は宿の手配をとってきます」
そう言って、マリアはすぐにいなくなりました。
「私も先に寄るところがあります。ベルナルド様は先に酒場に行っていてください」
キパールも1人行動をとるようです。
「酒場へ向かうといっても、急ぐ必要はありません。ベルナルド殿は、この町は初めてですから色々と見ながら向かいましょう」
気遣いのニック。
「いやー、この町に来るのは久しぶりだなー。今日は飲むぞー」
金使いのヒッチ。
3人は町を観光しながら酒場へと向かいます。
町には、布を張った簡易的な露天や木製の屋台から2階建ての木造の建物まで、規模の異なる店舗が立ち並びます。
そこには、ペシミール国では見かけないような乳鉢や石臼といった石細工、食器類や壺といった陶器類、靴やカバンといった革製品、また馬具や農具には金具がついているものなどが店頭を飾っています。
そして食べ物も、カブやニンジンやタマネギやニンニク、干しリンゴ、干し梨、干しベリーの他に保存用に加工された肉と魚。それ以外にも、バターやハチミツといった、ペシミール国にはない色鮮やかさが広がっていました。
「普段見ないものばかりだ」
ベルナルドは興味津々な様子。
「ここは、2つの中級国家の間に位置しています。また、中級国家自体もそれぞれ別の国家と交易しています。そのため、多様な品が集まりやすくなっていますね。中級国家という存在は、それなりに他国と交易がある国だと思っていただければ大丈夫です」
ニックはちゃんとガイドしてくれる様子。
「ここに置いてあるもので、ペシミール国の品はほんの一部といった程度ですね」
ヒッチは少しご不満な様子。
どうやら、中級国家と下級国家には大きな開きがある様子です。
寄り道しながらも酒場へ到着する3人。
「おや、遅かったですね。どこで道草を食っていたんですか?」
3人が酒場に到着すると、既にマリアが到着していました。
怒っているのでしょうか?
「冗談ですよ。あちらの奥にテーブルを取ってあります」
マリアはこちらを安心させるような笑顔でテーブルへと案内してくれます。
その表情は少し子供っぽさを含んでおり、城内では見ることのないものでした。
♢♢♢
酒場で、4人が食事をしているところに男が2人現れた。
「遅れてすみません」
キパールが合流した。
「紹介します、この人は商人のマルティンさん。ペシミールと長年付き合いがあります。彼は色々と国を渡り歩いてきているのですが、今はこの町の一角で店を開いています。この町の事情なら、彼に聞けば大体のことは分かりますよ。……マルティンさん、こちらは、ベルナルド様です」
「あなたがベルナルド様ですね。事情はお聞きしました。いや、実際お会いすると気圧されてしまいますね。何というか、纏っているものが違うというか……」
ベルナルドの人並外れた体格にピッチリと張り付いた服装を見て、マルティンはちょっと引き気味。
2人はテーブルに付き、飲み物と食事を注文する。
マルティンに食事を奢るようだ。
取引の手数料といったところか。
バンッ!
2人がオーダーした後に、酒場のドアが大きく音を立てた。
店内の客が一斉に視線を向ける。
ガチャガチャと鎧をかき鳴らしながら酒場へ入ってきた体格の良い男たちの団体。
見るからに粗暴な感じがするお近づきになりたくないタイプ。
他の客たちは、すぐに入口から視線を戻し、何事もなかったかのように振る舞い始めた。
「なんでしょう。初めて見る人たちですね」
ニックが声を抑えながら質問する。
「ああ、あれはミッドライフ国の騎士団だな。自分たちはミッドナイト騎士団と名乗っているそうだけど、末端の連中だよ。真昼間から表で偉ぶっていやがる。こういう場所じゃなきゃ大きな顔ができないような奴らさ。肩を怒らせながら歩き回り、ぶつかった相手に因縁をつける。ここらじゃ「ぶつかり騎士団」と呼ばれているよ。ちょっとしたチンピラみたいなものだが、中級国家がバックについている分タチが悪い。あいつらに関わっても損するだけだ、ぶつかられないように気をつけなよ」
マルティンは親切に忠告してくれた。
やはり、エンカウントしたくない相手だ。
「厄介事には巻き込まれたくありませんね」
マリアは酒に口をつけながら、呟いた。




