第十八話「それぞれの夏」
「ニックとヒッチの夏休み」
ニックとヒッチ、今日は二人とも城の仕事も家の手伝いもないようです。
二人は、国を流れている慎ましい川に足をつけ、寝転びながら涼んでいます。
「ふー、こうして過ごすのはいつぶりだろう」
「あー、最近色々ありすぎたなー」
ニックとヒッチは、久々に力を抜いてくつろいでいます。
「さすがに、暫く落ち着いてくれるといいけど」
ニックは状況が落ち着くことを願っています。
「そうなってもらわないと、こっちの身がもたないって」
ヒッチは状況が落ち着くことを願っています。
「でも、この調子でいくと、秋はどうなるんだろう?」
「またなんか色々あるんだろうけど、想像つかないな」
ニックもヒッチも、次の季節のことを考えています。
ニックとヒッチは、太陽の日差しと川の流れと草の柔らかさを感じながら過ごしています。
♢♢♢
「メッテの夏」
夏は苦手だ。
太陽のエネルギーを一身に受け、生き物が一番輝く季節。
それが私には眩しすぎて、思わず目を細めてしまう。
「やっぱり、何にでも相性というものがあるのよね」
農家としても読書好きとしても個人的にも、やっぱり秋が一番好きかな。
「自分と秋という季節には、パズルのピースがピッタリと嵌る感覚がある」
メッテは、秋を心待ちにしています。
♢♢♢
「ラインマールの夏」
生命が有頂天である頃 国は谷底へ
しかし輝きを失わず 光は闇から脱する
その輝きと軌跡こそが人を惹きつける物語となる
山の麓の煌きはどのような価値を持つのかまだ分からない
……
「さて、今はこれ以上この国に滞在しても意味は無いようですね……。しかし、夏も色々と収穫がありました。やはり、ベルナルド様は只者ではありません……」
夏を過ごしても、ペシミールでは宴が催されない様子であったため、ラインマールはまたどこかへ帰ってしまった。
♢♢♢
「ボルドーの夏」
「おい!もっとキビキビ働け!」
「チッ、一々うるせえな。ちゃんと働いてるだろうが!」
ゲハールは、ボルドーの祖父母の畜産業家で働くことになりました。
そのため、監視役はボルドーがメインになります。
ボルドーは、子供の頃はこの畜産業を手伝っていました。
城の兵士長に憧れていた少年ボルドーは、時間を見つけては剣を振り、大きくなってから兵士として務められるようになると、祖父母から背中を押され兵士の任務に注力することになったという経緯があります。
そのため、ボルドーは祖父母と畜産業と家畜には、特に尊敬の念を抱いています。
「盗賊なぞやっていた貴様には分からんだろうが、生き物の面倒を見るということは想像以上に大変なんだよ。畜産業は甘くないぞ!」
「へぇへぇ、そうですか。俺はあんたに見られている方が大変だけどな」
「口の減らないやつだ。貴様の性根は、私がきっちり叩き直してやるからな。覚悟しておけ!」
ゲハールはボルドーに任せておけば大丈夫かもしれません。
♢♢♢
「ベルナルドの夏休み」
なつは たくさん たくさん はしりまわりました
エッホエッホとやまをのぼり ヤッホヤッホとやまをくだり
ズルズルとなわをひっぱり ズルズルとタルをひきずり
おおきなイノシシさんに おさけをおごって ちょっぴり おとなのきぶん
そのあと ニホンのおとぎばなしを おはなしたら
くにのみんなには せいだいに かんちがいされてしまいました
でんごんゲームって むずかしいね
そしてクワガタ じゃなくて とうぞくのおかしらを つかまえました
ブンブンうごいて げんきがよかったです
いろいろ たのしかったです
♢♢♢
「国民の夏」
この夏、なんとベルナルドは、毎朝鼻歌を歌いながらラジオ体操をやっていました。
その姿を見た国王「勇者殿の運動は誠に見事である。このような日々の地道な鍛錬こそが勇者殿を作り上げたのだろう。これは、わが国にも広めねばならぬ」
という訳で、国王はベルナルドにラジオ体操と鼻歌を習い、城から国民へと広めていきました。
「なんだこの体操は?妙にリズミカルだな」
「なんでも、ベルナルド様の国で流行っていた体操らしいわよ」
「ベルナルド様って子供の頃から、特殊な体操やってたの?うちの子にもやらせないと!」
「え、この体操やるとベルナルド様みたいになれるって?そんな訳ないでしょー。一応やってみるけどさぁ、一応ね」
「わたくしも、このような珍しい歌と踊りに出会えて愉快で〜す♪」
「ベルナルド様って、子供の頃からこの体操を続けることにより、勇者になったらしいぞ。やるっきゃないだろ!」
「ベルナルド様の国の子供達は、みんなこの体操をやってるってさ。体操民族か何かなの?」
次回「体操民族襲来!!」......しません!
ここまでで、中盤は終了となります。
次回からは1章の終盤に突入しますが、また新しい展開が始まります。




