第十五話「緊急事態発生!?」
ドタドタドタ!
コンコンッ!
「失礼します!」
バンッ!
「トレーニング中に失礼いたします。緊急事態です!国王と大臣たちが集まっています。ベルナルド殿もすぐに来ていただけますか?」
只事ではない雰囲気を感じとり、トレーニング中だったベルナルドは、すぐに国王たちの元へと向かいます。
……
「ベルナルド殿、突然お呼びして申し訳ございません。緊急事態故、ご容赦下さい」
「……皆揃ったようなので、緊急会議を始める」
それほど大きくない部屋。
部屋の中央には、矩形の長机が鎮座している。
この部屋にあるものは全く派手ではないが、その机と椅子が存在感を放っており、何のための場所であるかが一目で分かるようになっていた。
既に、1つを除き椅子は埋まっており、その他にも緊張した面持ちで壁際に立っている兵士たちもいる。
ベルナルドの着席を合図に、大臣が会議を進行していく。
「まずは、概要の報告から」
「はっ!本日未明、キパールが商談より帰城中に何者かに襲撃され、調達した物資の多くを奪われたとのこと。何とか自力で帰城したキパール本人の証言より報告を受けました。キパールは襲撃の際に怪我を負いましたが、幸い深い傷はなかったとのこと。しかし、現在は大事をとり治療中となります」
「次は、詳細の報告を」
「はいっ!キパールが城を出立時に馬車に積んだのは、塩を3袋ほど。これをハブ町にて、商人マルティンと取引後、馬2頭、酒樽10個、麻20袋に作業具としてクワやツルハシなどと交換。ハブ町で一泊後、帰城中の街道にて身元不明の集団より襲撃を受け、貨物の全てを収奪されたとのことです。城に戻ってきたのは、我が国が所有していたメインの馬2頭のみでした。しかし、キパールと同様に馬も怪我を追っているため、暫くは馬車を引くことは難しいでしょう。これらは、キパールの証言を元に、実際の馬の状況を確認したものとなります」
「やはり、状況は最悪だな……。襲撃犯についての情報は?」
「こちらについては、キパールの証言しか情報がありませんが、以下の通りとなります。推測ですが、襲撃犯は、ハブ町周辺で目撃情報があった盗賊団の一味と思われます。襲撃犯たちは、顔を布で覆っており顔は確認できなかったとのこと。襲撃人数は3,4人程度ですが、裏に控えていた人数はもっと多いはずです。また、走行中の馬車に飛び乗りキパールを襲おうとした人物は、猿のように身軽だったという話です。キパールは、我が国所有の馬までも奪われるという最悪の自体を回避するため、荷馬車を切り離すことにより難を逃れました。その後、襲撃犯たちはそれ以上の追撃を早々に諦め、手に入れた貨物で満足した様子だったとのこと」
「キパールとメインの馬2頭が戻ってこれたのは、不幸中の幸いということか……荷馬車を切り離したということであれば、貨物は壊滅的だろう……それに、馬と荷馬車が……」
折角、岩塩の採掘により国に利益がもたらされるようになろうとしたところに、この知らせ。
大臣の顔色は、急激に暗くなる。
一通りの報告を確認した後、真剣な表情をしたガルド国王は命令を下す。
「まずはキパールの証言を元に、襲撃場所へ斥候を出し、襲撃犯の寝ぐらを割り出すのだ!」
♢♢♢
城の中では、今回の件の話でもちきりです。
「全くとんでもないことになったな」
「ほんとだよ。折角、岩塩を採掘できるようになったのに……」
「こんな辺鄙なところにまで盗賊がやってくるなんて思わないよな」
「しかし小国を狙うしかないってんだから、大した連中じゃないさ」
「多分、小規模だろうな。でないと、割に合わない」
「キパールと馬の怪我はそんなに酷くはないんだよな?」
「俺もそう聞いている。不幸中の幸いってやつだな」
「しかしそれでも、痛いよな。すぐに塩のトレードを再開できるわけじゃない」
「今回の分の荷物も全部パーだし、また立て直ししないとなぁ」
「それにしても、国王のああいう顔は久々だな」
「あれは完全に怒ってるな」
「ああ、普段穏やかな分、こういう時怖いんだよなぁ」
「この国にとっては、貴重な資源は命取りになるから……」
城の者たちは、もどかしさを紛らわすように呟き合っています。
♢♢♢
国王の命令により、任務に赴いた斥候が戻り報告を受けた後、2度目の会議が開催される。
「斥候の報告によると、盗賊の一見は街道沿いにある山に拠点を構えているらしい」
「あの辺りは低山ばかりしかない所だ。盗賊が隠れるような場所じゃないだろう」
「奴らが何を考えているのかは、分からん。しかし、このペシミールが舐められていることは確かだ」
「低く見られるのは慣れておるが、こういうことが起こるのは久々だのう……」
ガルド国王は、普段とは全然違う難しそうな雰囲気を纏い、真面目な視線を机に向ける。
「すぐに兵士たちを選定し、討伐隊を編成せよ。場所が分かっているのであれば、話が早い。夜間にかけて進軍した後潜伏し、夜明け直前に奇襲を仕掛ける!」
ガルド国王は全員に対し、最大限の威厳を含ませた号令をかける。
「やっぱり本気だ。ちょっとした盗賊くらいなら、すぐにカタがつくだろう」
その場に居合わせた兵士は呟く。
「ベルナルド殿はどうされますか?今回は特に参加される必要はないですが」
大臣は、ベルナルドに意向を尋ねる。
「私も同行させてもらおう」
「おお、なんと心強い。これなら、チンケな盗賊などすぐ朝食にでも出せますな。……しかし、本当によろしいのですか?」
「うむ、気になることがあるのでな……」
ベルナルドは、何か気になっちゃったようです。




