第十三話「ベルナルドvsヌシ」
ベルナルドは、警戒しながら慎重に歩みを進める。
イノシシは基本的には昼行性。
しかし、人間などを警戒する場合、早朝や夜間に行動することもある。
前回遭遇したのは、昼間。
ヌシたちは統率がとれた集団で行動している可能性も考えられる。
未知数な部分が多い。
セントラルマウンテンでの行動は、神経を削られるものとなる。
今回も、中腹あたりまでは問題なく到達できた。
問題はここから。
前回ヌシに遭遇したのは、塩泉エリア。ここがフロントライン。
ベルナルドは、セントラルマウンテンの中腹まで物資を運ぶ。
1日に日帰りで実施できる作業は限られているため、作業は分割する。
そして、獣たちに物資を荒らされないよう、カモフラージュして隠しておく。
更に、物資から人間の匂いをできる限り消しておく。
そのような作業を繰り返し、準備は整った様子。
(さてと……)
準備が整った後、ベルナルドは、セントラルマウンテンの中腹の下あたりで、自分自信をカモフラージュした上で休息する。
そして、夜がしっとりと深まってきた頃、ベルナルドは静かに動き出す。
密かに隠しておいたある物資を、ひっそりと上へ運んで行く。
(この辺りか)
ドンッ!
ベルナルドは大きなタルを置く。
そして、大きな木皿にタルの中身を注いでいく。
その中身は、芳しくも怪しい魅力をもつ香りを放つ、酒。
それを木皿に注ぎ、一定の間隔で配置していく。
準備が整った後は、できる限り人間の匂いを消す作業を行い、再度中腹の下あたりまで戻り、昼まで休息する。
準備は整った、後は待つだけ……。
♢♢♢
太陽が、鬱蒼と繁る山林を強火で炙り始めた頃、ベルナルドは体を起こす。
注意を払いながら上を目指す。
気配を感じ取りながら歩みを進める。
虫、小動物、獣たちの気配。
今までより柔らかなものに感じる雰囲気。
酒を置いた場所に到着する。
皿の中の酒はすっかり無くなっていた。
ぐるっと見渡して見ても、周囲にイノシシは見当たらない。
ベルナルドセンサーにも、豪胆な獣の気配は感知されない。
深い自然に包まれた山林の雰囲気はこれまでとは明らかに異なっている。
(よし!)
ここから、フェーズ2へと移行します。
ベルナルドが目指すのは、山頂。
セントラルマウンテンの山頂で作業を行います。
まずは木材が必要。木材は現地調達します。
その木材を用いて、何やら組み立てていきます。
金属製の部品も持ってきています。
これは、キパールが城内からかき集めてきた物です。
さて、これらを組み立てた後に何をするのか。
最後は、フェーズ3。
メインの実装は、セントラルマウンテンの頂上とミッドマウンテンの頂上に麻縄を引くことです。
セントラルマウンテンの標高は1600m、ミッドマウンテンの標高は1200m。
両方の山の高低差を利用して、簡易的なロープウェイを作成し、木桶や樽に入れた岩塩を運ぶというフローを構築します。
作業は1日では決してできないため、分割して実施します。
その度にヌシたちにはお酒を献上し、酒宴を楽しんでいただきます。
週5日程度、ヌシたちにお酒を楽しんでもらいつつ1ヶ月程の期間で、2つの山を結ぶロープウェイの仕組みを完成させました。
流石はベルナルドです!
……
己の信念を通す 筋繊維
類稀なる鎧を纏いし 勇ましき者
山を巡るは 逞しきケモノ
猛きものは酒に酔いしれ 勇ましき者は山に踊る
マウンテンの星空の元 国を紡ぐ一筋のあさ
……
こうして、ペシミール王国に新たな特産品がもたらされることになりました。
ちなみにですが、ミッドマウンテン側の作業は別部隊が担当しました。
♢♢♢
「しかし、ベルナルド殿。一体どのようにして、ヌシを手懐けたのですか?」
国王は興味津々です。
日本には、スサノオノミコトという神の一人が、ヤマタノオロチという8つの頭を持つ巨大な大蛇を、酒に酔わせて倒したという神話が存在します。
ベルナルドは、国王に今回の作戦のアイデアについて話をしました。
国王は、この話を大変気に入りました。
その後、この話はあっという間に国中に広がっていきます。
「実は、ベルナルド様の国には、8つの頭を持つ巨大な大蛇を酒で酔わせて倒したという、おとぎ話があるらしい」
「ベルナルド様は、以前8回も巨大なトカゲと酒を酌み交わして、マブダチになった事があるらしいってよ」
「ベルナルド様って、この国にくる前に、酔っ払ったドラゴン8匹と戦ったことがあるんだって」
「おい聞いたか。ベルナルド様は、酒に酔っ払って8匹のドラゴンを倒したことがあるらしいぞ。洒落にならないだろ」
完全に伝言ゲーム失敗です。
麻縄とロープウェイの話は、あくまでファンタジーやおとぎ話ということで、あまりリアリティ面を深く考えずに読んでいただけたらと思います。
それでも、違和感が大きいと感じるのであれば、完全に筆者の実力不足となります。




