077⚫️近づく危機 & 078●理想と現実
077⚫️近づく危機
ゼルド・ファルマ王国の湾岸部は、ようやく水が引き始めた。
大きな津波だったが、どういうわけか勢いがなかった。
徐々に水位が上がる中、
住民は比較的余裕をもって丘や山に避難することができた。
多くの家や施設が被害を受けたが、
それでも死者がいなかったことは、驚きという他ない。
行政の救援部隊が各地点に到着し、避難所生活が始まる。
だが・・・夜空に浮かんでいた赤い光は、
その数を増やし、今や昼間でもその姿を見ることができるようになっていた。
078●理想と現実
義勇兵たちは、槍や剣も折れ、矢も尽きている。
食糧もなくなり、水の補給さえままならない。
‘早く行かないと、戦闘が終わっているかもしれない!’
‘活躍できる場に、間に合うか?!’
と勇んで来たものの、
ラベリアの評議会からの支援は寸断され、彼らには届かない。
名将のヴァルターがひとり、要衝で持ちこたえているが、明らかに劣勢である。
義勇兵は正規兵に守られ、かろうじて死者こそ出ていないが、
もはや戦闘ができる状態ではない。
だれもが後悔した。
勝手に盛り上がってやって来た。
だが、実際の戦いは‘命の奪い合い’だと、彼らはようやく理解した。
とはいえ、今さら故郷に戻ることも難しい。
既に街道は戦闘行為で荒れ果て、
夜陰に紛れて帰ろうにも双方の軍が巡回している。
見つかれば、敵味方の区別なく、即、攻撃されるのだ。
ため息をつきながら、涙を浮かべながら、彼らは思った。
‘正義の戦争なんて、もういい。不正義でも平和であれば・・・。’
夜空を‘赤い星’が横切りつつある。
その姿はまさに、妖星であった。




