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死にたくないので婚約ご遠慮します  作者: 夏笆


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十三、フレミング侯爵領 1、



「はあ。今日がアイリーンの家に集まる日で、ほんっとよかったよ」

「ぼくもそう思う。今日のお昼は、あの不愉快令嬢のせいで食べ損ねてしまったからね」

 教員室での一件の後、お昼を食べ損ねたまま午後の授業を受けた五人は、ドレイク伯爵邸に着くなり、げっそりとテーブルに懐く。

「ふたりとも。どうして今日集まることになったか分かっているか、と聞きたいが。オレも同じ気持ちだ」

「フレミング領のことも気になるけど。今日の節操無し女には、心の底から殺意が湧いたよね。ああ、湧いた、なんて可愛い表現じゃ足りない。マグマが噴き出す思いがしたよ」

 黒い笑みを浮かべるブラッドフォードに、アイリーンが、ぽんと手を叩いた。

「ブラッドフォード様!今度の絵本は、火山のお話にするというのはどうでしょう!それで、火山の噴火の部分を動かせるようにするんです」

「なるほど。それは、カイルも喜ぶね」

「はい!」

 自分の両手を合わせ、嬉しそうに言うアイリーンと、そんな彼女を幸せそうに見つめるブラッドフォード。

 そして、そんなふたりを呆れた瞳で見つめる三人。

「噂に聞くバカップルって、こういう奴らのこと言うんだろうなって。俺、思うんだよね」

「馬鹿じゃないのに?」

「馬鹿というか。一瞬で自分達の世界を構築できるのは、もはや特技だな」

 既に慣れっこな三人は、そう言いながらも口調は優しい。

「それにしても。院長先生には、ちょっと同情するかな。ぼくが居るから、っていうのもあるだろうから、責任っていうか」

「そうか?そんなん、感じることないだろ。まあ、王族が居る年は大変だと聞くけど、おかしな令嬢が多数出現するのは、何も王族のせいじゃないだろ」

 悩まし気に入ったクリスに、アシュトンはきっぱりと言い切った。

「そうですよ、クリス様。それに、クリス様だけってわけでもないと思いますよ?院長先生もおっしゃっていたではないですか。高位貴族の子息、って。それって、ブラッドフォード様やモーリス様、それにアシュトン様のことでしょう?あ!攻略対象の方々ですね!」

「アイリーン。そこで、目の色を変えない」

「いたっ」

 ぴしっ、と額を指で弾かれて、アイリーンは、領てで自分の額を押さえる。

「しかし。この短期間で、侯爵令嬢ひとり、子爵令嬢三人が退学だからな。頭が痛いのは確かだろう」

 先にアイリーンに絡んだ元ソープ子爵令嬢マドリンは、青くなった両親によって、即刻縁を切られた。

 そうすることでソープ子爵家は、条件付きではあるものの、ドレイク伯爵家との取引を続けることに成功している。

 その後、マドリンはドレイク伯爵家を憎むギャレット侯爵家に侍女として雇い入れられたものの、王妃主催のお茶会の件で追放となった。

 そして同じように、王妃主催のお茶会でギャレット侯爵令嬢と共に再びの禁忌を侵した、元ハッカー子爵令嬢エイダとラヴ子爵令嬢ベッキーも、家族から絶縁され、それぞれ修道院に送られている。

「いっそあの場に、節操無し女もいれば話は早かったのにな」

「不愉快令嬢は、単独で行動しているものね」

 ブラッドフォードが言えば、クリスが続き、アシュトンが身を乗り出した。

「そうだよ。それで、王城にも突撃しているんだから、もっと厳しい処理は出来なかったのか?」

「その前に。あの女、すべからく己のいいように捉えているように感じた」

「ああ。それは、ゲームの知識があるからじゃないかな、って思う」

 現実はまったく違うことになっているのに、最終地点には同じように辿り着くことが出来ると信じて動いているベティ・コーツ。

「アイリーン。前から気になっていたのだけれど。今日、不愉快おん・・・令嬢が言っていて、王城でも言われたことなのだけれどね。そろそろ死人が出るとか、本当に不愉快なことを言いながら、今年か来年か再来年、とも言っていたよね?あれは?」

「あ、それは。王都に蔓延する疫病の話は、好感度によって起こる学年が違うんです」

 アイリーンの説明に、四人は、瞳を瞬かせた。

「疫病が流行るという話なのに、三年も幅があるのか?」

「クリス様と親しくなるかどうか、というお話なので」

 アシュトンの問いに、アイリーンも困った顔で答える。

「それはつまり。アーサーズ公爵領の話も、そうなるってこと?」

「はい、そうです。ブラッドフォード様」

「でも、王都の疫病は既に防いだ・・ああ!そうか。あの時アイリーンは言っていたね。疫病が発生する原因があるなら、それを取り除きたいって」

 考えるように話していたブラッドフォードが、納得と明るい顔になった。

「それで、うちの領も先んじて手を打ってくれたってことか。あれ、ほんっとに助かったよ」

「でも未だ、油断は禁物ですよ?」

 アイリーンが、ぴりっと言えば、アシュトンは真面目な目で頷くも、大きな危機を脱した安心感があるのは否めない。

「分かってるって。みんな、頑張っているからさ。今度、うちの領にも来てよ。稲穂の海、いいよー」

「それは、見てみたいです」

「オレも見てみたいが。その前に。フレミング侯爵領へ、来てもらえないだろうか」

 うっとりと、稲穂の海を想像したアイリーンに、モーリスが固い声で言った。



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