第八十九話 未踏破ダンジョン
星斗は浅井の怒涛の連続攻撃を精霊の盾で防御しつつ考える。
(これだけ連続で攻撃してれば、疲れて必ず隙ができるはず。そのチャンスを待つ)
星斗はそう考えながら防御に専念している。一方、浅井は模擬戦開始からずっと激しい攻撃を続けていたが、動きが一瞬、鈍った。
「ここだ!」
星斗はその隙をついて、青竜の剣を突き出す。
「かかった!」
だがそれは浅井の罠だった。彼はわざと隙を見せて星斗の攻撃を誘って、それを高速の動きで回避しつつ、光をまとわせた聖剣を振る。
「聖光斬!」
浅井が攻撃後の星斗の隙を狙って光の斬撃を繰り出す。それを星斗は空間把握のスキルで感知し、後方へ高速でステップして回避した。
「なっ! かわされた!」
浅井は完璧なタイミングで星斗の隙を突けたと思っていたので驚く。一方、星斗は、浅井の光の魔法剣を放った直後の隙を突いて、彼から距離をとりつつ、青竜の剣に極寒の冷気をまとわせる。
「氷神飛翔斬!」
星斗が放った高威力の冷気の斬撃が、浅井に向かって高速で飛んでいく。
「くっ、勇者の盾!」
それに対し浅井は、体の前に高さ三メートル、幅二メートルくらいの半透明の光の盾を作り出す。この勇者の盾は、盾の大きさ以内の攻撃を一度だけ完全に防御できるが、クールタイムが三時間あるスキルだった。それで浅井は星斗の必殺技を完全防御し、散らばった冷気が彼の前に拡散する。
「あ、危なかった。俺がここまで追い込まれるとは……」
「召喚! アガートラーム! ニュクス! 九尾の狐!」
星斗はこの隙に召喚の魔法陣を作り出し、三体のモンスターを召喚する。
「し、しまった!」
浅井は星斗の最強の必殺技を完全防御してダメージは受けなかったが、その衝撃は全身に受けていて、その動けない隙に星斗はモンスターを召喚することに成功した。
「あー、降参する。これを防ぐためにがんばってたのに」
「勝者! 本条君!」
浅井は前の大規模作戦の時にアガートラーム達の強さを見ていたので負けを認める。
「ふー。何とか勝てた」
「いやー。モンスター達の強さは知ってたけど、本条君自身も強かった。あっ、ギルドマスターが負けちゃったのはまずいかな?」
「お前のスキルは魔王特攻だから、本条君が魔王を召喚してたら勝てたのにな」
(魔王特攻? 浅井さんは魔王相手ならもっと強いってことか。さっき使ったのも勇者の盾って言ってたし、本当に勇者みたいだ)
星斗は浅井と前田の話を聞いて、そんなことを考えている。
「もう。そんな話はいいから、本条君の合格に手続きをしましょう。あっ、本条君は受付の所にある椅子に座って、名前を呼ばれるまで待っててください」
「はい。わかりました」
立花にそう言われた星斗は、試験会場の受付があるフロアに行く。するとそのフロアにある長椅子にすでにアンリが座っていた。
「本条君、終わったの?」
「うん。そっちも?」
「まあね。それでどうだった?」
星斗は浅井と戦って勝ったことをアンリに話す。
「すごっ! 模擬戦で浅井さんに勝つなんて!」
「勝ったのは勝ったけど、俺は隙を突いてアガートラーム達を呼び出したら、浅井さんが降参しただけだから、一対一で戦ってたら、どうなってたかはわからないよ」
「いやいや、モンスター達の強さも含めて本条君の力だから、もっと喜んでいいでしょ」
「まあ、そう言われると悪い気はしないけど」
「本条さん。朝比奈さん」
受付の女性職員が二人の名前を呼び、星斗達は受付へ行く。
「ランクアップおめでとうございます。こちらが新しい覚醒者カードです」
星斗とアンリは、Sランク覚醒者カードを受け取る。
「朝比奈さんが日本で十二人目のSランク覚醒者で、本条さんが十三人目です。それでお二人はSランク覚醒者になったことを公表しますか?」
「あー、名前を秘密にもできるんですよね」
「はい。ライトウィングギルドのエースパーティの三人は匿名希望だったので、名前は公表されてません」
「俺は別に公表してもいいかな」
「私も公表して大丈夫です。姉も公表してますし」
「わかりました。ではそのように手続きしておきます。おそらく今日の午後から覚醒者協会が新たなSランク覚醒者の登場を公表すると思います。それと今日の夜のニュースで、お二人のことが流れると思いますよ」
「うわっ、それはちょっと恥ずかしいな」
「私も……でもお姉ちゃんと一緒に見よう」
その後、星斗とアンリは試験会場を出る。
「ん? 本条君。何か考え事?」
「いや、あー、うん。授業で習ったような気がするんだけど、敵に自分のスキルやステータスを操作されないようにする防御系のスキルがあったような……」
「ああ、スキルステータスブロックでしょ。それがあれば、戦闘中に相手にスキルを封印されないし、能力も下げられなくなるレアスキルよ」
「ああ、それだ!」
(浅井さんの時は、それで俺のエクストラスキルコピーが使えなかったのかもしれない)
「俺もこれからの戦いのために、そのスキルステータスブロックが必要だ」
星斗はスマホを取り出し、覚醒者協会のホームページでスキルステータスブロックを検索する。
「これか。おお、音無ダンジョンのシールドゴーレム(Aランクモンスター)が、スキルブックを落とすのか」
「音無ダンジョンは、まだボスが倒されてない未踏破ダンジョンで、AランクとBランクのモンスターが出現する高難易度ダンジョンだって」
アンリもスマホで音無ダンジョンのことを調べながらそう話す。
「アガートラーム達の力を借りれば、Aランクモンスター相手でも問題ない。次の目標は音無ダンジョンでスキルステータスブロックを狙ってみるか」
星斗のその話を聞いてアンリは少し考える。
「本条君。私も一緒に行っていい? 私も欲しいんだけど」
「えっ? うん。いいけど」
「じゃあ、行く日が決まったら教えて」
「わかった」
星斗とアンリは、そんな話をしながら家に帰っていった。そして星斗は帰宅後、家族に自分がSランク覚醒者になったことと、ニュースでそのことが流れることを話し、それを聞いた家族は喜んだ。
そして次の日の夜、星斗の父はケーキやフライドチキンを買ってきて、母はたくさんの料理を作り、妹は嬉しそうにそれらの夕食を食べて、星斗達は楽しいひと時を過ごした。
それから数日後、星斗とアンリはダンジョン攻略届を提出して学校を休み、〇〇県にある音無ダンジョンにやってきた。
次回 音無ダンジョン に続く




