第九十〇話 音無ダンジョン
「近くで見ると、でかい塔だな」
「結構、人がいるね。高難易度ダンジョンだから、あんまり人がいないと思ってたけど」
音無ダンジョンは塔型のダンジョンで、その周辺には自衛隊の待機所と救護所、覚醒者協会の魔石買い取り所、覚醒者ショップなどの店舗が建てられていて、それらに複数の覚醒者達が集まっていた。
「音無ダンジョンは、一階から五階まではBランクモンスターだけが出現するから、そっち狙いの覚醒者だろう」
「なるほど。なら六階から上は、人が少なそうね」
「俺達の目的は六階から上にいるAランクのシールドゴーレムだから、最短距離で五階にある転移の石碑を目指そう」
「了解」
星斗とアンリは音無ダンジョンの入り口でSランク覚醒者カードを見せて塔の中に入る。
「召喚! アガートラーム! ニュクス! 九尾の狐!」
星斗は一階フロアに入ってすぐに三体のモンスターを召喚し、スマホで音無ダンジョンの一階のマップを表示する。
「十階までのマップが公開されてるのはありがたいな」
「十一階から上は公開されてないけど、どうする?」
「今は進むのは止めておこう。シールドゴーレムは六階から十階に出現するから、まずスキルステータスブロックのスキルブックを五個、手に入れてから考えよう」
「わかった」
星斗達は一階のマップを見ながら音無ダンジョンを進んでいく。すると鋼鉄製の槍と鎧と盾を装備したアーマーリザードマン、巨大で筋肉質の獣型モンスター、グレートゴリラ、体長が二メートルを超える毒を持つトカゲのモンスター、ポイズンリザードなどのBランクモンスターが出現したが、星斗達はそれらをすべて倒しながら進んでいく。
その後、彼らは一日かけて五階の転移の石碑の部屋まで到着した。その道中、宝箱をいくつか発見し、フルポーション、マナポーション、魔法の鎧、金貨などを入手した。
「今日はここまでにしとこう」
「明日からはAランクとの戦いね」
星斗達は地上に戻って覚醒者ショップで使わない戦利品を売却し、二人で利益を分けて、その後、バスで移動し予約してる旅館に到着した。
(前の時は一人で旅館に来たけど、今日は朝比奈さんと二人……)
星斗はダンジョンでは仲間のモンスターもいたのでアンリと普通に接していたが、アンリと二人で旅館に入る時、心の中でドキドキしていた。もちろん部屋は別々に予約してあった。
「ダンジョン攻略に来て、旅館に泊まるなんて、なんか背徳感があるわー」
アンリは学校を休んでここに来てるので、そう感じている。前の大規模作戦の時はビジネスホテルに泊まっていたことも、そう感じる原因のひとつだった。
「ダンジョンから帰ってきて疲れてても、温泉と豪華な夕食が癒してくれるんだよ」
「へー。それは楽しみね」
星斗は以前、冥月ダンジョンに行った時に旅館に泊まっていたことをアンリに話していたので、今回も旅館に泊まろうという話になって、ここを予約していた。
「私はあっちみたいね。それじゃあ、また後でね」
「うん」
予約した部屋がひとつしかないとかのトラブルもなく、星斗とアンリは別々の部屋に行って、温泉や夕食で今日の疲れを癒した。そして次の日、星斗とアンリは再び音無ダンジョンにやってきて、五階の転移の石碑の部屋から上の階に進んでいく。すると六階からは、動く古い樹のモンスター、エンシェントトレントや、宝箱に擬態するモンスター、ミミックの上位種、カオスミミックなどのAランクモンスターが出現したが、星斗達は力を合わせてそれらを倒しながら進んでいく。
「Aランク相手でも普通に倒せる。アガートラーム達の強さのおかげね」
「いやいや。朝比奈さんも前より強くなってるでしょ」
「そりゃあ、四つ目のエクストラスキルを手に入れたからね」
アンリはエクストラスキルの宝珠を使う前と比べると、彼女の使う光系のスキルの威力が、段違いに強くなっていた。
(たぶん、光属性を強化するエクストラスキルを手に入れたんだろう。光激化とか、光強化とかかな)
属性を強化するエクストラスキルは、存在しているという噂はあったが、まだ誰も覚醒者協会に登録していない未登録スキルだった。
「むっ、見たことないモンスターがいる!」
「あれは……」
星斗達は七階の通路の先に、鋼鉄の体で巨大な人型のモンスターを二体発見した。そのモンスターは一体が巨大な剣を持ち、もう一体が巨大な盾を持っていた。
「あれがシールドゴーレムだ! 剣の方はソードゴーレムだろう」
「やっと目的のモンスターと遭遇できた」
二体のゴーレムは身長が二メートル五十センチメートルを超えていて、シールドゴーレムは太めの体で巨大な盾を持ち、ソードゴーレムは細めの体で巨大な剣を持っていて、どちらもAランクのモンスターだった。
「ゴゴゴゴゴゴゴ」
星斗達の存在に気づいたソードゴーレムとシールドゴーレムは、彼らに向かってゆっくりと歩きだす。一方、星斗達はその場で待ち構えていると、星斗の目の前に二つのエクストラスキルコピーウィンドウが表示された。
(どっちのもいらないな。熟練度稼ぎに盾術をコピーしておこう)
ソードゴーレムはAランクの剣術と速さ激化、シールドゴーレムはAランクの盾術と防御激化を持っていたが、それらは星斗が欲しいものではなかった。
「朝比奈さん、手分けしよう。どっちに攻撃する?」
「私は剣の方にする」
「じゃあ、俺は盾の方だな」
「ゴゴゴゴゴゴ!」
「ガガガガガガ!」
ソードゴーレムとシールドゴーレムが急に走りだし、星斗達と距離を詰める。それを見た星斗とアンリも二体に向かって走りだし、先に攻撃を仕掛ける。
「雷迅斬!」
「聖光斬!」
星斗はシールドゴーレムに雷の魔法剣を繰り出し、アンリはソードゴーレムに光の魔法剣を繰り出す。それに対しシールドゴーレムとソードゴーレムは盾と剣でその攻撃を受け止めるが、二人の強力な一撃に、二体は態勢が崩れた。
「ハイオーラブレード!」
「シャドウチェーン!」
アガートラームが、星斗の攻撃でよろめいたシールドゴーレムに接近し、強大な魔力をまとわせたクラウ・ソラスで腹部を突き刺す。続いてニュクスが闇系上級魔法発動し、アンリの攻撃でよろめいたソードゴーレムに闇の鎖が巻き付いて闇属性ダメージを与える。
「ガガガガガガガガ!」
「ガガガガガガガガ!」
「クオーーーーーン!」
さらに九尾の狐が魔力をまとわせた右の爪を振るって飛ばし、それがソードゴーレムの体に命中してダメージを与え、その鋼鉄の体に魔力の爪の痕を残した。
次回 スキルステータスブロック に続く




