第八十八話 Sランク試験
「すみません。ランクアップポイントを確認したいんですが」
星斗とアンリは、覚醒者協会の魔石買い取り所カウンターにいる女性職員にAランク覚醒者カードを渡す。
「少々お待ちください……。お二人とも、ポイントがたまってますね。Sランク試験を受けることができます」
(やった!)
「試験はいつ受けられますか?」
「申請から約二週間後です。Sランク試験を申請しますか?」
「はい」
「私もお願いします」
「ではこちらに必要事項を記入してください」
そう言って女性職員が、星斗とアンリに申請用紙を渡す。
(Sランク試験も三種類から選べるのか。もちろん模擬戦にする)
星斗は模擬戦を選び、名前や連絡先などの項目も記入して提出する。Sランク試験は、Aランク試験の時と同じように、模擬戦、魔法威力測定、治療の三つから選ぶことができた。
「では日時と場所が決定次第、お知らせしますので、それまでお待ちください」
Sランク試験への手続きを終えた星斗とアンリは、魔石買い取り所を出る。
「朝比奈さんは、三つの試験のどれを選んだ? 俺は模擬戦」
「私は魔法威力測定よ。魔法を一回撃てば終わるしね。本条君も魔法でも合格できると思うけど」
「Aランク試験の模擬戦の相手はAランクの覚醒者だったけど、Sランクなら試験官はSランクだろうから、戦ってみたいんだ」
「そうか。Sランクの誰かと戦うのか。それは大変そう……。でも三体のモンスターを召喚できたら、たぶん勝てると思う」
「相手もそれは知ってるだろうから、召喚する隙がもらえないかもしれない。それに試験官がライトウィングギルドのエースパーティの三人の誰かだったら、召喚できたとしても多分勝てない」
「ああ、あの三人は別格だもんね。でも模擬戦って、勝たなくても力を認めてもらえれはいいんだよね」
「そう。だから全力で戦えば合格できると思う。ああ、そういえばちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
星斗は聞きづらそうにそう質問する。
「わかった! エクストラスキルの宝珠のことでしょ」
「そう。いや、何のスキルを習得したかまでは言わなくていいんだけど、ほんとにスキルを増やす宝珠だった?」
「ふふふ。遠慮しなくていいのに。まあ、結論から言うと、エクストラスキルの宝珠は、間違いなくエクストラスキルを増やすアイテムだったわ」
「おお! やっぱり!」
「何のスキルが増えたのかは、今は内緒にしとこうかな」
「俺も人には自分のスキルは言わないし、秘密にしておいた方がいいよ」
「うん。そうしとく」
星斗とアンリはそんな話をしながらその日は帰宅した。彼らは大規模作戦が終わって間もないので、数日は冒険者活動はせずに体を休める予定だった。そして時が過ぎてSランク試験の日になる。星斗とアンリは、バスで一緒に覚醒者協会が用意した試験会場の受付にやってきた。
「本条さんは室内の模擬戦闘場へ移動してください。朝比奈さんは屋外の魔法威力測定場所へ移動してください」
「はい」
「わかりました」
星斗はアンリと別れ、受付の女性職員に言われた模擬戦闘場がある部屋へやってきた。
「誰もいないな。ここで待ってればいいのか」
星斗はアイテムボックスから装備品を取り出して戦闘準備をしている。するとすぐに三人の試験官がやってきた。
(あっ、浅井さん!)
三人の試験官は、ライトウィングギルドのギルドマスターの浅井、戦士系の男性覚醒者の前田、回復系の女性覚醒者の立花だった。
「こんにちは、本条君」
「こ、こんにちは」
「ん? 本条君、緊張してる?」
「は、はい……」
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。身代わりバッジがあるから怪我することもないし」
「そういう緊張じゃないだろ」
「そうそう。若い子が日本一位のギルドマスターに話しかけられたら、普通は緊張するでしょ」
浅井の言葉に、前田と立花がそう話す。
「まあ、そうか。ああ、試験前だけど、本条君はもうSランクになれる力を持ってることは知ってるから合格ね」
「えっ?」
星斗は浅井にいきなりそう言われて驚く。
「おいおい。そんなこと言っていいのか? 本条君が強いことは知ってても、一応試験はしないと駄目だろ」
「うん。模擬戦は俺がするよ。本条君がどれだけの強さなのか、戦ってみたいし」
(ふぅ、よかった。合格は嬉しいけど、もう一つの目的は、試験官のエクストラスキルをコピーすることだからな)
星斗はSランク覚醒者の試験官が相手なら、強力なエクストラスキルをコピーできるだろうと考えていた。
「そっちは準備できてるようだし、さっそく始めよう」
「本条君。これを付けて」
立花が星斗に身代わりバッジを渡し、彼はそれを付けて模擬戦をする舞台に上がる。対する浅井もアイテムボックスから聖剣や豪華な鎧を出して装備し、身代わりバッジを付けて舞台に上がり、星斗と対峙する。
(あれっ? コピーウィンドウが出てこない。浅井さんは間違いなく二十メートル以内にいるのに……)
星斗は浅井のエクストラスキルが確認できず、心の中で焦る。そんなことに気づかずに試験官の前田が、審判の位置に移動して話始める。
「知ってるとは思うが、規則なので一応、説明する。この模擬戦は降参するか、場外に落ちるか、身代わりバッジが壊れたほうが負けだ。だが試験官に負けても、三人の試験官のうち二人がその実力を認めればSランク試験は合格だ。ああ、もちろん勝てば、無条件で合格だからな」
「はい」
(考えるのは後だ。今は戦いに集中しないと)
星斗は気を取り直して浅井と対峙する。
「よし、準備いいな。では模擬戦開始!」
「はっ!」
開始の合図の直後、浅井は光をまとわせた聖剣を構え、星斗に向かって猛スピードで突撃する。一方、星斗も青竜の剣に冷気をまとわせ浅井に向かって突撃した。
「なっ!」
「氷結斬!」
浅井は星斗がモンスターを召喚しようとすると思っていたのでその行動に驚き、対応が遅れて光の魔法剣を使えず、星斗の冷気の斬撃を聖剣で受け止める。
「ふぅ。少し驚いた。だが、ここからだ!」
浅井は星斗の青竜の剣を切り払い、さらに聖剣の斬撃を連続で放ち、星斗はそれを盾で受け止めている。
(くっ、速いし強い……これが国内一位のギルドマスターの力か)
星斗は想定していたより遥かに強い浅井の攻撃に防戦一方になる。一方の浅井も星斗に何度も攻撃するが、有効な一撃を与えられずにいた。
(むっ。全力で攻撃してるのに、すべて防がれてる。本条君のモンスター達が強いのは知っていたけど、本人も負けずに強い)
次回 未踏破ダンジョン に続く




