第八十七話 未知の宝珠
「みなさん、集まってもらっていいですか?」
ライトウィングギルド、ギルドマスターの浅井がそう声をかけて、この場にいる全員が彼の近くに集まる。
「四つある宝箱の分配を決めたいんですが、本来、大規模作戦ではモンスターを倒した者が、その戦利品を手に入れることになってます。それでバフォメットとオーガキングはライジンギルドが単独で倒したので、その二つの宝箱はライジンギルドの物にして、残りのオークキングとヒュドラの宝箱はライトウィングギルドとドラゴンファングギルドで分けるというのはどうでしょう」
「ライジンギルドはそれで構いません」
「ドラゴンファングギルドも了承します。宝箱の件はそれでいいんですが、聞きたいことがあります。バフォメットとオーガキングをライジンギルドが単独で倒したんですか?」
「はい。それは間違いありません」
「運がよかっただけですよ」
浅井と島が、質問してきた酒井にそう答える。
「つまりライジンギルドは、Sランクモンスターを単独で倒せる戦力があると」
「いえいえ。今回のバフォメットは強力なモンスターを三体召喚するタイプなので、我々だけですべて倒さないと、単独で倒したということにはならないかと」
「まあ、確かにそうですが」
(ライジンギルドは確実に戦力を上げてる。国内第二位のうちの立場が……)
酒井はドラゴンファングギルドを、どうやったら今以上に強くできるか考え始める。
「では宝箱の中身を回収しましょう。ドラゴンファングギルドはオークキングとヒュドラ、どっちの宝箱にしますか? うちはどっちでもいいですよ」
「ならじゃんけんで決めましょう」
酒井と浅井がじゃんけんをして、ライトウィングギルドがヒュドラの宝箱、ドラゴンファングギルドがオークキングの宝箱ということになった。
「さあ、開けるよ」
一方、ライジンギルドのメンバー達は、まずバフォメットの宝箱の周りに集まって明日香が蓋を開ける。すると中に宝石のついた腕輪と、紫色の丸い宝珠と、魔石(極大)が入っていた。
「これは?」
明日香が腕輪と宝珠を手に取る。すると簡易鑑定でその名が判明する。
「こっちは大魔導士の腕輪、こっちはエクストラスキルの宝珠だって」
「エクストラスキルの宝珠? 聞いたことないわね。どんな効果があるのかしら?」
明日香と島が、少し考えてから再び話す。
「ランクアップの宝珠なら、エクストラスキルのランクが上がるでしょ。でもエクストラスキルの宝珠って名前なら、もしかして新しいエクストラスキルを習得できる宝珠ってことかも」
「そ、それが本当なら、凄いお宝ね」
「そりゃあ、Sランクモンスターの戦利品だからね。それで誰が使うか明日香が決めてよ」
「そうね……」
明日香はオーガキングとバフォメットとの戦いを思い出している。
「今回、一番活躍したのは本条君のモンスター達だから、これは本条君に……」
「えっ? 俺ですか?」
星斗は少し考える。
(俺はエクストラスキルコピーのおかげで、十個もスキルがある。そこにこの宝珠を使ったらどうなるんだ? 十一個目のスキルがランダムで増えるのか、それともコピー枠がひとつ増えるのか。うーん。今でも枠がひとつ余ってるしな……)
「今回は遠慮しときます」
「えっ? 覚醒者なら誰でも欲しがるレアアイテムよ」
「はい。でも俺の持ってるエクストラスキルと相性が悪い気がするんで。それに前の時も氷の宝珠をもらってますし、俺だけ、もらってばかりなのはちょっと……」
「そう。本条君がそう言うならしかたない。じゃあ、次に活躍したのはアンリちゃんね。バフォメットに光の力で大ダメージを与えてたし」
「私? いいの?」
「いいの、いいの。はい」
明日香はアンリにエクストラスキルの宝珠を渡す。
「やった! ここは人目があるから後で使おう。これでまた強くなれる」
「まだ本当にエクストラスキルが増えるのかわからないから、万が一の時に備えて、私が一緒の時に使ってね」
「わかった」
明日香にそう言われたアンリは、アイテムボックスにエクストラスキルの宝珠を収納する。
「腕輪と魔石は本条君が収納しておいて」
「はい」
「後はオーガキングの宝箱ね」
星斗達はオーガキングが残した大きな宝箱の周りに集まり、明日香が蓋を開ける。すると中に巨大な斧と魔石(特大)が入っていた。
「これはオーガキングが使ってた斧ね。でも本条君のモンスターが真っ二つにしたはずなのに、これは壊れてない。宝箱って不思議ね」
「本条君。こっちもお願い。後で分配するから」
「はい」
星斗は闘神の斧と魔石(特大)をアイテムボックスに収納する。
「それにしても大きくなったなー」
アンリは体長が十メートルくらいある九尾の狐を見ながらそう話す。
「九尾の狐は体長変化のスキルがあるから、小さくもなれるぞ」
「ほんと?」
「試してみよう。九尾の狐。小さくなってくれ」
「クオーーーン!」
九尾の狐は体長が十メートルから一メートルくらいまで小さくなった。
「やった! 可愛い!」
アンリは小さくなった九尾の狐を抱えて、その毛並みを堪能している。
「私もする!」
「ずるい! 私も!」
明日香と島も、九尾の狐のつやつやの毛並みを堪能している。
「九尾達を帰還させるのは、もう少し後でいいか」
その後、三つのギルドの宝箱の回収が終わり、作戦に参加した全ギルドが前線基地に戻ったのを確認して討伐隊は解散し、星斗達は泊まっているホテルに帰って明日香の部屋で戦利品を分配する。そこで星斗は大魔導士の腕輪を手に入れた。
大魔導士の腕輪 魔力+20% サイズ自動調整機能付き
「二個目の大魔導士の腕輪だ。これも九尾の狐に装備させよう」
星斗達はその日はホテルに泊まって疲れを癒し、次の日に自宅へ新幹線で帰っていった。それから数日後、第七覚醒者学校の一年一組の教室で、午前中の授業が終わって帰ろうとする星斗に、アンリが話しかける。
「本条君。政府からの大規模作戦の報酬、もらった?」
「うん。参加報酬、四百万、成功報酬、二百万だった」
「私も。Aランクはみんなそうみたいね」
「Sランクなら、いくらだったんだろう?」
「三千万だって。お姉ちゃんが言ってた」
「三千万か……やっばりSランクは違うな」
「Aランクの六百万だって、普通に考えたら凄いけどね。あっ、そうそう。本条君はSランクへのランクアップポイントはどうなってる?」
「あっ、まだ確認してなかった。バフォメットとオーガキングを倒したから、結構たまってると思うけど」
「ランクアップポイントって覚醒者協会に行かないと確認できないのは不便よね。アプリとかで、すぐに確認できればいいのに」
「制度ができてまだ短いから、アプリの開発が間に合ってないんだろう」
「じゃあ、これから一緒に確認に行く?」
「そうしよう」
星斗とアンリは学校を出て、バスで天ヶ崎ダンジョンの近くにある覚醒者協会の魔石買い取り所へやってきた。
次回 Sランク試験 に続く




