第八十四話 銀の腕
「ぐっ!」
星斗はバフォメットの闇のオーラをまとった手を精霊の盾で受け止めるが、あまりに大きな衝撃にダメージを受けた。
(闇属性の物理攻撃か。暗黒の指輪で威力が半減されてるのにこの威力。これがSランクモンスターの力か)
星斗はHPが削られたが、再生の極意で失ったHPが徐々に回復していく。
「まだ終わらんぞ!」
バフォメットはさらに左手に闇のオーラをまとわせ、星斗に襲い掛かる。その時、
「聖光斬!」
星斗の後方にいたアンリが、赤竜の剣に聖なる光をまとわせ、バフォメットに斬りかかる。
「ぐあっ!」
バフォメットは闇のオーラをまとわせた左手を光の斬撃で切られてダメージを受け、慌ててアンリから距離を取る。
「ぐっ、光使いか」
(厄介な……あの女、ただの光使いじゃない。これほどの威力を出せるなら、何かの強化スキルか装備品を持ってるはず)
バフォメットは、天才(S)で強化された光の力を使うアンリの動きを警戒している。悪魔系モンスターは光属性が弱点なことが多く、バフォメットも光属性が弱点だった。
「サンキュー、助かったよ」
「それはお互い様でしょ」
星斗とアンリは、並んでバフォメットと対峙しながらそう話す。
(ふぅ、さすがにSランク相手はきつい。そうだ。ゴールドナイト達は……)
星斗はオーガキングと戦っているゴールドナイト、ハイダークエルフ、仙狐を見る。
(三人とも無事か。召喚を上書きしても消えなかった。よかった)
星斗がゴールドナイト達の姿を見て心の中で安堵すると、いきなり彼の目の前に、
「ゴールドナイトの戦闘熟練度が最大値になりました。ゴールドナイトは神話級モンスターに変化ができます。変化させますか?」
とウィンドウが表示された。
「えっ? 神話級?」
「! どうしたの?」
「い、いや。ちょっと……」
星斗は突然のウィンドウメッセージに驚き、声を出してしまう。
(神話級に変化……これが神魔召喚の効果なのか。これは変化させるだろ!)
星斗が心の中でそう意志を示すと、オーガキングと戦闘中のゴールドナイトの体がまばゆい光に包まれて、その姿が見えなくなる。
「うおっ、何だ?」
「ゴールドナイトが……」
「もしかして、上位種族変化の光?」
ゴールドナイトと共に前衛を務めていた鈴木と明日香と島が、その光に驚く。そしてその光が消えると、ゴールドナイトの黄金の盾と鎧がスタイリッシュな姿に変化し、その右腕だけが銀色になっていた。さらにゴールドナイトの黄金の剣は、光り輝く聖剣に変化していた。
「おお! ゴールドナイトが変化した! あれが神話級モンスターか!」
星斗は変化したゴールドナイトの方を見ると、目の前にウィンドウが表示され、
アガートラーム
レベル54
HP 988 MP 351
力 132 防御 130
魔力 102 速さ 114
エクストラスキル(3/3)
ダーナ流剣術(S) 全能力激化(A) 盾術(A)
スキル
オーラブレード ハイオーラブレード
魔法障壁 竜麟斬り 黄金軍馬召喚
シールドバッシュ 守りの盾
ミラクルガード 貫通 万物切断
黄金の神気
装備
クラウ・ソラス 攻+100 光属性武器
英雄神の鎧 防+80
英雄神の盾 防+60
大地の腕輪 防+15%
黒竜の腕輪 攻+15% 魔力+15%
英雄の腕輪 攻+15% 魔法耐性20%
万物切断
神の鉱物オリハルコンさえ
切り裂くといわれる剣の必殺技。
黄金の神気を発動中に使用可能。
消費MP80
クールタイム 三時間
黄金の神気
三十分間、全身が黄金のオーラに包まれ、
その間、失ったHPが徐々に回復し、
全状態異常を無効化する。
消費MP40
(これが神話級モンスター……。瞬速乱舞斬が万物切断に変わったのか。凄い! これは強いぞ!)
星斗はアガートラームのステータスボードを見て喜んでいる。アガートラームとは、神話に登場する右手が銀の義手の戦神で、クラウ・ソラスという聖なる力を持つ光の剣を持っていた。
「アガートラーム! オーガキングを倒せ!」
「はっ! 召喚者殿に完全勝利を!」
アガートラームは全身から黄金のオーラを放出して身にまとい、クラウ・ソラスを構えて、その剣身にも黄金のオーラをまとわせて振り上げる。
「万物切断!」
アガートラームが、黄金のオーラをまとわせたクラウ・ソラスを豪快に振り下ろす。一方、オーガキングは持っていた伝説級の武器、闘神の斧を両手で持って前に出し、その斬撃を受け止めようとする。だがアガートラームの黄金のオーラの斬撃が、闘神の斧を真っ二つに切り裂き、さらにオーガキングの体にも深い切り傷を与えた。
「ガアアアアアアアアアア!」
それが致命傷となってオーガキングは仰向けに倒れて消滅し、その場に巨大な宝箱が出現した。
「おお! 倒した!」
「やった! レベルが上がった!」
「俺もだ!」
星斗はオーガキング戦には参加してなかったが、彼が召喚したアガートラームがオーガキングを倒したので彼も経験値を獲得し、レベルが55に上がった。
「喜んでられない! 早くアンリちゃん達と合流しましょう!」
「おう!」
「わかったわ!」
明日香達は宝箱も無視して、星斗とアンリがバフォメットと戦ってる場所に急いで向かう。
「何が起こった?」
一方、バフォメットは、突如現れたアガートラームにオーガキングを倒されて動揺し、さらにそのアガートラームが近づいてきて、その力を感じ取る。
「お前は……なぜ神の力を……」
「アガートラーム! よくやった! 今度はこいつを倒すぞ!」
「はっ! お任せください!」
アガートラームは星斗と一緒に前衛になってバフォメットと対峙する。そこへ明日香、島、鈴木も加わって、成田、ハイダークエルフ、仙狐は後衛の位置についてバフォメットと対峙する。
(ゴールドナイトは、ここまでの戦いで神話級モンスターになるための熟練度がたまってたんだろう。ハイダークエルフと仙狐も変化してくれれば……)
星斗はそう思いながらハイダークエルフと仙狐のほうを見る。すると、
「ハイダークエルフの戦闘熟練度が最大値になりました。ハイダークエルフは神話級モンスターに変化ができます。変化させますか?」
と表示された。ちなみに星斗が仙狐を見ても何も表示されなかった。
「ハイダークエルフもいけるのか! もちろん変化させる!」
星斗は嬉しさのあまり声に出してそう意志を示す。すると後衛にいるハイダークエルフの全身がまがまがしい闇のオーラに包まれて、その姿が見えなくなる。
「えっ? もしかして彼女も!」
ハイダークエルフのとなりにいた成田が、驚きながらその光景を見守っている。
(さっきハイダークエルフを見ても、このウィンドウは表示されなかった。つまり今のオーガキングを倒して熟練度がたまったんだろう。さて、どんな姿になるのか)
次回 夜の女神 に続く




