第八十五話 夜の女神
ハイダークエルフを包んでいた闇が晴れて、その姿があらわになる。
「あれっ……あんまり変わってない……ちょっと背が伸びたくらい?」
ハイダークエルフの近くにいた成田は、神話級モンスターに変化したハイダークエルフの姿を見てそう思う。ハイダークエルフは、装備している物も変わっていなかった。
(見た目はほとんど同じだけど……違う。これも凄い!)
星斗の目の前にはウィンドウが表示されていて、
ニュクス
レベル55
HP 624 MP 684
力 102 防御 98
魔力 145 速さ 115
エクストラスキル(3/3)
闇魔法(S) 雷魔法(A) 魔力激化(S)
スキル
ダークボルト ダークスマッシャー
シャドウチェーン カオスフレア
サンダーボルト サンダーウェーブ
サンダーストーム 魔法障壁
詠唱超短縮 貫通 夜の女神
装備
闇の杖 攻+40 闇魔法20%強化
漆黒のローブ 防+37 闇属性攻撃半減
超魔力の指輪 魔+15%
超魔力の指輪 魔+15%
麻痺無効の指輪 麻痺無効
カオスフレア
すべてを崩壊させる深淵の闇を放つ
闇系最上級魔法。
消費MP55
詠唱超短縮
魔法を発動するまでの
時間が大幅に短縮される。
夜の女神
夜の間、魔法発動に詠唱が必要なくなり、
闇属性魔法の威力が二倍になる。
(闇魔法がSにランクアップしてる。それに詠唱超短縮も凄いけど、夜の女神は、魔法を撃ち放題とか強すぎだろ!)
星斗はニュクスのステータスボードを見てニヤニヤしている。ニュクスとは神話に出てくる原初の神で、夜を神格化した女神といわれている。さらに彼女は夜だけでなく死も司るといわれていて、強大な力を持っていた。
「彼女も変化したの?」
「そう。彼女はニュクスに変化したんだ」
星斗は、ニュクスを見ながら、となりにいるアンリとそう話している。
「ニュクスだと! バカな、ありえない! だがこのプレッシャーは……」
バフォメットは、ニュクスが放つ強者のオーラを感じ取り、さらに動揺している。
「召喚者殿、奴をせん滅しますか?」
「もちろんだ。ニュクス、頼んだ!」
「はっ。奴を夜の闇に沈めてみせます」
ニュクスは目を閉じて精神を集中させ、魔法発動の準備を始める。その様子を明日香が見ている。
(本条君の変化したモンスター達……今までと全く違う。これならバフォメットでも互角以上に戦える)
「恭子、私達でバフォメットを倒しましょう」
「えっ? でも元々の作戦は、まず三体の召喚モンスターを倒してから、全ギルドの力を結集してバフォメットと戦うって」
「大丈夫! この戦力ならいける!」
「明日香がそう言うならわかった。みんな! やるわよ!」
「おう!」
「わかりました!」
「了解!」
星斗、アンリ、明日香、島、鈴木、アガートラームが前衛となり、ニュクス、仙狐、成田が後衛になってバフォメットと対峙する。
「ふん。いくら神の力を持っていても、人間風情に従っている程度なら本来の力は使えまい!」
一方のバフォメットは落ち着きを取り戻し、全身に闇のオーラをまとい星斗達と対峙する。
「シャドウチェーン!」
まずニュクスが闇系上級魔法を発動し、バフォメットの全身に闇の鎖が巻き付く。
「ぐああああああああ! バカなああああ!」
本来、バフォメットは闇属性攻撃を無効化できるのだが、ニュクスは貫通のスキルを持っているので、彼女の闇魔法は敵の耐性を無視してダメージを与えることができた。
「なっ、もう?」
ニュクスの隣で魔法発動の準備中の成田が、ニュクスの魔法発動のスピードに驚く。彼女も詠唱短縮を持っているが、ニュクスの詠唱超短縮はさらに魔法発動までの時間を短くできた。
「いまなら攻撃し放題よ!」
「レイブレイク!」
「氷神飛翔斬!」
「瞬速乱舞斬!」
「大破壊斬!」
「ハイオーラブレード!」
前衛達が闇の鎖で動けなくなったバフォメットに、今使える最強の技で次々と大ダメージを与えていく。
「ぐああああっ! ぐっ、我がこれほどのダメージを……ゆ、ゆるさん!」
バフォメットは力づくで闇の鎖を引きちぎり、行動可能になる。
「同じ手はもう食らわんぞ! ダークバリア!」
バフォメットは全身を守るように球状の黒いバリアを展開する。ダークバリアの強度は使用者の魔力の高さで決まるのだが、バフォメットは魔力激化(S)を持っているので、その強度は大幅に強化されていた。そのことに明日香が気づく。
「あのバリアはやっかいそう」
「簡単には破壊できそうにないわね。クールタイムがある必殺技はみんな今使っちゃったし。でもあのバリアがある限り、向こうも攻撃できないでしょ」
「くっくっくっ。それはどうかな。ダークニードル!」
バフォメットは周囲に展開されている球状の闇のバリアに、五十センチくらいの闇で作られた黒い針を複数作り出し、それを一斉に星斗達に向けて放つ。
「魔法障壁!」
「魔法障壁!」
それに対し星斗と鈴木が魔法障壁を展開して、彼らの後方に明日香、島、アンリが退避する。するとダークニードルが二人の魔法障壁を破壊したが、彼らは闇属性対策をしているので大きなダメージは受けなかった。ちなみにアガートラームは、英雄神の盾でダークニードルを防御していた。
「フハハハハハ! この攻防一体のダークバリアは完璧だ! これで貴様らをじわじわといたぶってくれるわ!」
「カオスフレア!」
後衛にいたニュクスが闇系最上級魔法を放ち、猛烈な勢いの闇エネルギーがバフォメットのダークバリアを吹き飛ばして破壊し、さらに大ダメージを与える。
「ぎゃああああっ!」
ニュクスも魔力激化(S)を持っていて、さらに闇の杖の闇魔法強化と魔力強化の装飾品の効果で、彼女の闇魔法も大幅に強化されていた。
(えっ、どういうこと?)
後方で雷系最上級魔法を準備中の成田は、となりで闇魔法を連発しているニュクスに驚いている。
次回 伝説の神獣 に続く




