第七十六話 極意
(よし、戦いに集中しよう。スキルは制限なく使うけど、全力で戦うのはちょっと怖い。身代わりバッジは、一定以上のダメージを受けたら壊れるけど、想定以上の大ダメージを受けたら、相手にダメージが入るとかあったらやばい。最初は手加減して様子をみよう)
星斗はそんなことを考えながら、対戦相手の朝倉と対峙している。そして戦闘舞台の上にいる審判が右手を上げて叫ぶ。
「では一回戦、第四試合、開始!」
「うおおおおおお!」
斧を持った朝倉が、猛スピードで星斗に向かって走りだす。彼は速さ激化(B)を持っているので、高速の動きが可能だった。
「粉砕烈斬!」
朝倉は斧に強大なオーラをまとわせて、星斗を狙って豪快に振り下ろす。それに対し星斗は精霊の盾を構えたまま、朝倉より高速の動きで左方向へステップして斧の斬撃を回避する。
「なっ!」
「氷結斬!」
星斗は朝倉の側面に移動するのと同時に、電撃の剣に極寒の冷気をまとわせて水平に振り、その斬撃が朝倉の腹部に命中する。
「ぐああああああああ!」
その一撃によって朝倉は後方に吹き飛んで倒れ、同時に彼の身代わりバッジが砕けた。
「そこまで! 勝者! 本条選手!」
朝倉の身代わりバッジが破壊されたことを確認した審判が、星斗の勝利を宣言する。
「は、早いーーーっ! 試合開始から十秒も経たずに本条選手が勝利しました!」
「おおおおおおおおおお!」
「氷の魔法剣か!」
「強烈な一撃だった!」
「今の動き、めちゃくちゃ速かったぞ!」
今の戦いを見ていた実況の出雲や観客達が驚いている。
「酒井さん。今の戦いはいかがでしたか?」
「はい。朝倉選手の動きも速かったですが、本条選手はその速さをさらに上回ってましたね」
「本条君はライジンギルドに入ってるようです。彼の強さなら納得ですね」
「ほんと、うらやま……いえ、ライジンギルドはいい人材を見つけたようです」
その後も二人の解説は続いている。一方、星斗は倒れた朝倉の様子を見ている。
(彼は大丈夫なのか)
「いてーーーっ! くそっ! やられた!」
床に倒れた朝倉は、体を起こして悔しがっている。
(よかった。痛みは感じても、ケガはしてないみたいだ)
朝倉はすぐに立ち上がり、吹き飛んだ時に落とした自分の斧を拾って戦闘舞台から降りていく。
(今くらいの力なら相手を怪我させないで済むな。よし。この調子でいこう)
その後、星斗は控室に戻る途中、自販機で飲み物を買って、控室で次の試合まで休憩する。そして時間が進んで二回戦が始まり、星斗が戦う第四試合になる。彼の二回戦の相手はシード選手で、杖を持った魔法使い風の女性だった。そして星斗と彼女が戦闘舞台の上で対峙する。
佐竹加奈
ユニークスキル
風魔法(A) 魔力激化(A) MP再生(A)
どれを誰にコピーしますか?
(風魔法のエキスパートか。よし、俺のBランクのMP再生に、AランクのMP再生を上書きコピーする)
ユニークスキル(10/10)
ユニークスキルコピー(A) 竜麟(A) 気配察知(B)
全能力激化(S) 召喚(A) アイテムボックス(A)
フレスベルグ流魔法剣術(S) 女神ノルンの加護(A)
MP再生(A) HP再生(A)
MP再生(A)
戦闘中や移動中、
失ったMPを徐々に中回復する。
(よし。MP回復量が小から中に上がった。これは嬉しい。長期戦がやりやすくなる。後は魔法使いの彼女と、どう戦うかだけど……)
「では二回戦、第四試合、開始!」
「物理障壁!」
試合開始直後、佐竹は星斗が自分が魔法を使う前に接近してきて物理攻撃してくるだろうと考え、物理障壁を展開する。だが星斗はその場から動かずに魔法発動の準備を始めていた。
「えっ? 魔法?」
星斗の魔法発動の準備を見た佐竹は、急いで物理障壁を解除して自分も魔法発動の準備を始める。
「おおっと! 本条選手は戦士系の装備をしてますが、魔法も使えるようです!」
「下級魔法ならすでに発動してるはずなので、二人は中級魔法以上を使おうとしているようですね」
「コールドストーム!」
「なっ! キャアアアアアア!」
星斗は、嵐のように吹き荒れる極寒の冷気を佐竹を狙って放つ。それが魔法発動準備中の佐竹の全身を飲み込み、彼女の身代わりバッチが粉々に破壊された。
「勝者! 本条選手!」
「おお! 本条選手、今度は魔法の一撃で佐竹選手を倒してしまいました!」
「今の彼の魔法は氷系上級魔法でした。しかも発動まで早かったので、彼は詠唱短縮のスキルを持っている可能性が高いです」
「なるほど、では本条選手は、剣術も魔法も得意な魔法剣士ですね」
「そうですね」
(あれでさらに強力なモンスターを三体召喚できるんだから、とんでもない。くっ、ライジンギルドより先にスカウトできてれば……)
酒井はそう心の中でつぶやくが、それは表情に出さずに解説を続けている。
(彼女は無事か……)
「はーーーっ! やられた! 私が魔法で負けるなんて信じられない!」
尻もちをついていた佐竹は、立ち上がって悔しがっている。
(よかった。怪我してないみたいだ。このくらいの威力ならいいんだな)
星斗は手加減の仕方を覚え、戦闘舞台から降りて控室に戻る。そして席に座って自分のステータスボードを確認してみると、ユニークスキル欄のHP再生(A)とMP再生(A)の文字が青色になっていた。
(あっ、この二つ、合成できるのか! やった! 合成する!)
星斗が心の中でそう意志を示すと、その二つのユニークスキルが消えて、新たに再生の極意(A)を習得した。
ユニークスキル(9/10)
ユニークスキルコピー(A) 竜麟(A) 気配察知(B)
全能力激化(S) 召喚(A) アイテムボックス(A)
フレスベルグ流魔法剣術(S) 女神ノルンの加護(A)
再生の極意(A)
再生の極意(A)
戦闘中や移動中、
失ったHPとMPを徐々に中回復する。
(やった! HP再生を消さないでよかった! それに枠がひとつ空いたから新しいユニークスキルを習得できる!)
星斗は嬉しさを表情には出さず、心の中で喜んでいる。そして時間が過ぎてお昼休憩の後、午後から三回戦が始まった。そして三回戦、第二試合、星斗は、対戦相手の日本刀を二本持っている男性と戦闘舞台の上で対峙する。すると、
山本隆志
ユニークスキル
二刀流剣術(A) 速さ激化(A) 気配察知(B)
どれを誰にコピーしますか?
と、星斗の目の前にウィンドウが表示された。
(Bランクの気配察知なら俺と同じだ。なら二刀流剣術をコピーしとくか。俺は左手は盾のほうがいいから使わないと思うけど)
ゲームなら二刀流で攻撃力を上げることは有効だが、命が一つしかない現実世界では、防御力も重要だと星斗は考えていた。
次回 カウンター作戦 に続く




