第七十五話 一回戦
「本条選手は十番です」
星斗が係員に引いたくじを見せ、もう一人の係員がトーナメント表の十番に彼の名前のシールを貼る。
(よし、シード枠は回避した。これでたくさん戦える)
トーナメント表にはシード枠がたくさん用意されていて、シード枠の選手は二回戦からの戦いになるので、星斗はそれは望まなかった。その後、全員がくじを引いてトーナメント表のすべての枠が埋まる。
「えー、試合開始の時間がきたら係員が名前を呼ぶので、みなさんは戦いの準備をしながらお待ちください」
(俺の一回戦は四試合目か。結構、早いな。さて、今日の縛りプレイはどこまでするか……)
星斗はトーナメント表を見ながら、今回の戦い方を考えている。
場面は試合会場内の、戦闘舞台の周りに設置されている観客席に変わる。すでにその観客席は満席に近く、そのなかにライジンギルドの明日香、アンリ、島がいた。彼女達は飲み物を持ちながら私服で席に座っている。
「今日が土曜日でよかったよね。アンリちゃんも来れたし」
「まあね」
「多くの人が観戦できるように、運営が配慮したんでしょ。そんなことより、本条君のことよ。どう考えても、ぶっちぎりで優勝でしょ」
島のその言葉に明日香が答える。
「そうね。覚醒者になったばかりの学生で、フェンリルとかフォルネウスとかと戦ったことあるのは彼だけだし」
「ああ、本条君は、うちの学校で戦ってた時は、力を制限してたよ」
「制限?」
アンリの言葉に島が驚く。
「はい。その時の本条君は、召喚したモンスターは一体だけで、魔法も下級魔法だけでした」
「へー、それで優勝するんだから、やっぱり彼をスカウトした私の目に狂いはなかったわけね」
「本条君とまともに戦えるのはアンリちゃんくらいでしょ。私はアンリちゃんが活躍するのを見たかったな」
「もう。私はあんまり人と争うの、好きじゃなの」
「そういうところがアンリちゃんの可愛いところよねー。あっ、トーナメント表が発表されたみたい」
アンリ達はスマホで、発表されたばかりのトーナメント表を見ながら色々な話をしている。
場面は観客席の最前列に設置された実況席に変わる。そこには実況担当の若い女性と、解説の若い男性が座っていた。
「ついに第一回、全国覚醒者学校ランキング戦の放送が始まりました。私は実況アナウンサーの出雲です。そして隣にいるのは、解説の酒井さんです」
「酒井です。今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします。酒井さんはドラゴンファングギルドのギルドマスターで、日本最強の火と氷の魔法使いとして有名な方です。今日は色々な話を聞かせてください」
「はい」
「それではまず今回の優勝候補ですが、やはりドラゴンファングギルドにも所属している松前選手ですよね。彼は四つのユニークスキルを持ってますし」
「いえいえ、そう簡単な話ではないですよ。ほかにも、大手のギルドに入っている選手が何人かいますし、対戦相手との相性もあります」
「なるほど」
(本条君が出場してることを知ってしまったら、松前君が優勝候補だなんて言えない……)
酒井は、今回の解説のために出場者のリストを見せてもらい、星斗が出場することを知っていた。そして彼のことは、フェンリル戦とフォルネウス戦で一緒に戦っていたので、その強さも知っていた。
「では試合が始まるまで時間を利用して、今回のルールを説明します。各覚醒者学校の代表の選手達が、一対一で戦闘舞台で戦います。選手達は身代わりバッジを装備していて、一定のダメージを受けたらバッジが破壊され、その時点で敗北です。ほかに場外に落ちた場合と、本人が負けを認めた場合、試合開始時間に戦闘舞台にいなかった場合も敗北になります」
「選手達は身代わりバッジを装備しているので、この戦闘舞台の上では怪我をすることはありません。安全に戦うことができます」
「はい。そしてルールがもうひとつ。試合時間は、一試合、最大十五分で、それが過ぎた場合、三人の審判の判定で勝敗が決まります」
「そのあたりは、ほかの対戦型のスポーツと似てますね」
その後も出雲と酒井の放送は続いていく。その様子を選手控室のモニターで星斗が見ている。
(解説が酒井さんなのか。これはまずい。あの人は、俺がモンスターを三体召喚できることも知ってるし、氷系上級魔法を使えることも知ってる。今回も使うスキルを制限して戦おうと思ってたのに)
星斗は第七覚醒者学校の校内ランキング戦の時のように、召喚はゴールドナイトだけにして、ハイオーラブレードとアイスバレットだけで戦おうとしていたが、それだと酒井に全力で戦ってないことがばれてしまうと考える。
(彼は舐めプ(手を抜いている)してます。とか全国放送で言われたらやばい。はぁ、もう目立たないようにするのはあきらめるか。もうライジンギルドに入ってるから、他からスカウトも来ないだろうし)
星斗は今回の戦いは何も制限せずに戦おうと決める。そしてついに一回戦、第一試合が始まる時間になり、覚醒者学校の頂点を決める戦いが始まった。そして試合は順調に進み、一回戦、第四試合が始まろうとしている。
「第四試合は、第十五覚醒者学校の朝倉選手と、第七覚醒者学校の本条選手の戦いになります」
(本条君が出てきたか。彼相手では、学生レベルでは相手にならないだろうな。おまけに彼の装備も普通の学生が用意できる物じゃない)
酒井は、戦闘舞台の上で雷撃の剣や精霊の鎧を装備している星斗を見ながらそう考える。一方、星斗は、斧と鎧を装備した戦士風の男性と戦闘舞台の上で対峙した時、彼の目の前のウィンドウに、
朝倉宗司
ユニークスキル
斧術(A) 速さ激化(B) アイテムボックス(A)
どれを誰にコピーしますか?
と表示されていた。
(Aランクのアイテムボックス来たーーー! これを俺のBランクのアイテムボックスに上書きコピーだ!)
ユニークスキル(10/10)
ユニークスキルコピー(A) 竜麟(A) 気配察知(B)
全能力激化(S) 召喚(A) アイテムボックス(A)
フレスベルグ流魔法剣術(S) 女神ノルンの加護(A)
MP再生(B) HP再生(A)
アイテムボックス(A)
異空間に500キロまでの物を、
収納と取り出しができる。
その異空間は時間が止まっている。
(Bランクは百キロだったけど、Aランクは五百キロか。だいぶ増えた)
次回 二回戦、三回戦 に続く




