第七十一話 運命を分ける一撃
「ぐっ!」
「うわっ!」
「ぐあああああ!」
前衛の星斗、ゴールドナイト、明日香、島、鈴木が、ブラックドラゴンが吐いた暗黒のブレスに魔法障壁ごと飲み込まれる。さらにブラックドラゴンは、後衛達がいる入り口付近にも暗黒のブレスを吐きだしたが、後衛のアンリ達はその高い魔力のおかげで魔法障壁を破壊されずにすんでいた。
「ぐあっ!」
「ああああっ!」
「くっ!」
一方、ブラックドラゴンの暗黒のブレスを受けた前衛達は、魔法障壁を破壊され、全身に闇属性の大ダメージを受け、その場にしゃがみ込んだり、膝を突いたりしていた。唯一、星斗だけは全能力激化(S)の効果で魔力が大幅に強化されていたので、魔法障壁を破壊されずに無事だった。
「クオーーーーーーーン!」
明日香達がダメージを受けたのを見た仙狐が、仲間全員を回復するエリアヒールを発動し、前衛達のHPを回復させる。だがエリアヒールは回復量が少ないので、彼女達は持っていたハイポーションを飲んで、失ったHPを回復しようとする。その時、ブラックドラゴンは再び口を大きく開けて息を吸い始めた。
「くっ! またブレスが来る!」
「連続ブレスか!」
HPを回復中の明日香達は、再び魔法障壁を展開しようとするが、負傷していて精神集中ができず、魔法障壁の展開が間に合いそうになかった。
「氷神飛翔斬!」
その時、無事だった星斗が、息を吸いながら頭を上げたブラックドラゴンを狙って巨大な冷気の斬撃を解き放つ。それが無防備のブラックドラゴンの喉元に直撃した。
「ギギャアアアアアアアア!」
その一撃によってブラックドラゴンが吐き出そうとしていた瘴気のブレスが、口の中で暴発した。
ブレス攻撃は強力なスキルだが、普通、クールタイムが五分程度あって、連続では使えなかった。だがブラックドラゴンは暗黒のブレスと瘴気のブレスを持っていて、それを連続で使うことができた。
「今のはうまくいった」
星斗はブラックドラゴンの連続ブレスのことを知っていて、最初のブレスを防げた時は、次のブレスを阻止するために氷系必殺技を使おうと決めていた。
「はあああああ!」
続いて後衛にいたアンリが、赤竜の剣に膨大な光の魔力をまとわせながらブラックドラゴンに向かって高速で突撃する。
「レイブレイク!」
アンリは上段に振り上げた赤竜の剣を豪快に振り下ろす。すると剣にまとっていた巨大な光の魔力がブラックドラゴンの黒いうろこを破壊し、同時に光属性の特大ダメージを与えた。
「ガアアアアアアアアア!」
アンリの光系必殺技を受けたブラックドラゴンは、体がよろけて動きが鈍る。
「もう動ける。竜麟斬り!」
HPが回復して傷が癒えた明日香は、ブラックドラゴンに接近して再び攻撃を始める。それに星斗、島、鈴木、ゴールドナイトも続いて、アンリはまた後衛に戻って魔法発動の準備を始める。
「ガアアアアアアアアアア!」
一方、ブラックドラゴンは、口から瘴気弾を吐きだしたり、ドラゴンテールやダーククローで戦うが、星斗達の隙の無い連携で劣勢だった。すると後衛陣の二回目の魔法発動の準備が整う。
「サンダーストーム!」
「ボルトカノン!」
「ファイナルジャッジメント!」
「グオアアアアアアアアアアアアアアアア!」
最後のアンリの光系最上級魔法によって、ブラックドラゴンは致命傷を受け、光の柱の中で意識を失ってその場に倒れて消滅した。そして大きな宝箱が出現し、星斗はレベルが49になった。
「やった!」
「ブラックドラゴンを倒した!」
「レベルも上がったわ」
「私も!」
「もっと苦戦すると思ってたんだが、意外と普通に倒せた。俺達も強くなったもんだ」
「さあ、宝箱を開けましょう」
全員で大きな宝箱の周りに集まり、明日香が蓋を開ける。すると中に魔石(特大)、黒竜の剣、黒竜の腕輪、貫通のスキルブックが入っていた。
「帰ったら分配するから、本条君、収納しておいて」
「はい」
星斗がそれらの戦利品をアイテムボックスに収納して、全員で天満ダンジョンを脱出する。その後、彼らは車でライジンギルドの本部ビルにやってきた。
「それじゃ、今回の報酬の分配を決めます。一番活躍したのは、ブラックドラゴンに一番ダメージを与えていたアンリちゃん! ……と、仲間のモンスターと共に活躍してくれた本条君!」
星斗は明日香のその言葉を聞いて驚く。
「俺もですか?」
「そう。本条君はブラックドラゴンが二度目のブレスを吐こうとした時、攻撃して止めてくれたでしょ。あの一撃がなかったら、正直、私達は危なかったわ」
「確かにあの飛ぶ斬撃はすごかったな」
「だから本条君には黒竜の腕輪ね。これはサイズ自動調節機能があるから、仲間のモンスターも装備できるよ」
「ありがとうございます」
星斗は明日香から黒竜の腕輪を受け取った。
黒竜の腕輪 攻+15% 魔力+15%
(これはゴールドナイトに装備させよう)
「そしてアンリちゃんは、貫通のスキルブックね」
「貫通って?」
「貫通は、敵が何かの耐性を持ってても、それを無視して攻撃できるようになるの」
「それって凄いスキルじゃん。やった!」
「あと、黒竜の剣は、鈴木君にあげる。体を張ってパーティの盾役してくれたから」
「おお。苦労が報われた」
鈴木は明日香から黒竜の剣を渡され、それを見ながら星斗は考える。
(鈴木さんが漆黒の盾と鎧を装備してあの剣を持ったら、完全に暗黒騎士だ)
星斗は頭の中でその姿を想像して笑いそうになるが、なんとかがまんした。
「私と恭子とあずさは、魔石を売ったお金が報酬ね。ブラックドラゴンの魔石はレアだから高く売れるはず」
「わかった」
「それでいいわよ」
「じゃあ、戦利品の分配はこれで終わり。おつかれさま」
その後、星斗は自宅に帰りその日が終わる。そして時は過ぎて、夏休みが終わって九月になり、第七覚醒者学校の二学期が始まった。
「本条、ちょっと来てくれ」
「はい」
平日の午前中の担任の先生の授業が終わり、名前を呼ばれた星斗は担任の先生の所へ行く。
「来月、全国覚醒者学校ランキング戦がある。本条はうちのランキング一位だから、代表として出場して欲しいんだがどうだ?」
「えっ? 全国ランキング戦?」
「そうだ。全国にある覚醒者学校のランキング一位が出場して、日本一を決める大会だ。もちろん本人が出場したくないなら棄権できる。その時は二位の生徒が出場することになるんだが、本条はどうしたい?」
次回 四つのユニークスキル に続く




