第六十六話 弱点
上空にいるフォルネウスが、後衛達を狙って極寒の冷気の嵐を放ち、それが仙狐が展開した巨大な壁状の魔法障壁に激突する。
「防げるか!」
「頼む!」
「キュオーーン!」
仙狐の魔法障壁に守られている黒田と酒井は、魔法の準備をしながら仙狐を応援している。するとフォルネウスの冷気の嵐の放出が止まり、仙狐の魔法障壁は破壊されずに残っていた。
「なっ! 俺のコールドストームが!」
フォルネウスは得意の氷魔法を完全に防がれて動揺している。その隙を狙って、星斗が魔力で作り出した氷の槍を放つ。
「フロストスピア!」
星斗はフォルネウスが上空に移動した時から、氷系中級魔法の準備を始めていたので、このタイミングで発動することができた。
「むっ!」
フォルネウスは全身にまとっている強大な魔力でその氷の槍を弾き、落ち着きを取り戻して、星斗の方を向いて話す。
「この俺に、その程度の氷魔法が効くはずないだろ」
「でも注意は引けた」
「何っ?」
「サンダーストーム!」
フォルネウスの意識が星斗に向いた時、ハイダークエルフが嵐のような強力な電撃を放ち、それがフォルネウスがまとう魔力を吹き飛ばして、その全身を感電させる。
「ガガガガガガガガ!」
弱点である電撃を全身に受けて大ダメージを受けたフォルネウスは、意識を失いそうになりながら地面に落下していく。フォルネウスも魔法障壁を展開することができるが、星斗に気を取られて、それができなかった。
「今だ! ハイオーラブレード!」
「風牙斬!」
「烈火斬!」
「紫電!」
「オーラクラッシュ!」
「ハイオーラブレード!」
地面に落下したフォルネウスに、浅井達が次々にスキルで攻撃してダメージを与えていく。
「みんな! 離れろ!」
さらに黒田の魔法発動準備が整い、浅井達は急いでフォルネウスから離れる。
「スパイラルハリケーン!」
黒田は、風のやいばが渦巻く巨大な竜巻を作り出して放ち、それがフォルネウスの全身を飲み込んで、全身にダメージを与えていく。
「バニシング・エクスプロージョン!」
続いて酒井が、強大な力を秘めた火球を高速で放ち、それがフォルネウスに命中すると炎を伴う大爆発が発生して、フォルネウスは全身に大ダメージを受けた。すると今の風と火の最上級魔法によって、フォルネウスのHPが残りわずかになる。
「グオオオオオオオオオオ! おのれぇぇぇ、人間共めぇぇぇ!」
地面に倒れていたフォルネウスは、全身に膨大な魔力をまといながら、あたりかまわず暴れ始める。
「ちっ、これじゃ近づけない」
「最後の悪あがきか」
「まずい。このまま時間が経てば、また空中に逃げられてしまう」
浅井のその言葉を聞いた星斗は、精霊の盾を構えながらフォルネウスの正面に立ち、フォルネウスの暴れまくる攻撃を受け止めた。
「ぐぐっ、また貴様か!」
「ハイオーラブレード!」
すかさず浅井が動きが止まったフォルネウスに接近し、強大なオーラをまとわせた聖剣でフォルネウスの体を切り裂く。
「ガアアアアアアアアアァァァァァァ!」
その一撃が致命傷となり、フォルネウスは宙に浮くことなくその場に倒れて消滅した。そしてその場所に大きな宝箱が出現し、星斗はレベルが46になった。
「やったわ!」
「倒した!」
「やっと倒れたか」
「俺達だけでSランクを倒せたぞ!」
「おおおおおおおお!」
この場にいる全員が、フォルネウスの討伐成功を喜んでいる。
「ふぅ、何とか倒せた」
「浅井さん。大規模作戦では、止めをさした者がその報酬を手に入れることができます。さあ、どうぞ」
聖剣を腰の鞘に納めた浅井に、島が宝箱を見ながらそう話す。
「ああ、報酬がありましたね。でも、みなで戦ったのに、俺だけもらうのは……」
「まず、宝箱を開けてみては?」
「そうですね。Sランクの宝箱なら中身も期待できるでしょう」
この場にいる全員が宝箱の近くに集まり、浅井が宝箱を開ける。すると中に巨大な魔石、豪華な装飾のついた青い剣、豪華な装飾のついた杖、青い玉の四つが入っていた。
「これがSランクの魔石か。大きいわね」
「黒田君。魔石以外の鑑定お願い」
「わかった。ちょっと待ってろ」
黒田が宝箱から剣と杖と玉を取り出して、アイテム鑑定のスキルを使う。
「これは氷魔の剣、攻撃力が85上がる氷属性の剣だ。こっちは大魔導士の杖で魔法の威力が40%強化される。そしてこの玉は氷の宝珠で、氷系のユニークスキルの熟練度が上がるようだ」
(氷系の熟練度!)
星斗は、黒田の言葉を聞いて目の色が変わる。そして黒田の鑑定の後、浅井が続けて話す。
「では魔石はうちがもらうとして、ほかの三つは、三つのギルドで分けるというはどうでしょう。それぞれのギルドが欲しい物を指定して、かぶったらじゃんけんで決めるんです」
「いいんですか? 本来なら、すべて浅井さんの物なのに」
「さっきも言いましたけど、俺達だけじゃ、とてもフォルネウスを倒せませんでした。だから報酬は分けるべきです」
(特にライジンギルドの彼の貢献が大きい。いや彼だけじゃなく彼のモンスターも)
浅井は星斗を見ながらそう考え、次に三つの報酬のうちの、ひとつを選ぶ。
「ではうちは氷魔の剣を指定します」
「ならうちは大魔導士の杖で」
ライトウィングギルドの浅井は氷魔の剣を選び、ドラゴンファングギルドの酒井は大魔導士の杖を選ぶ。
「明日香」
「わかってる」
島と明日香は小声でそう話し、ギルドマスターの明日香が報酬を選ぶ。
「うちは氷の宝珠をお願いします」
「それなら各ギルドの欲しい物が被らないですね。ではどうぞ」
浅井は酒井に大魔導士の杖を渡し、明日香には氷の宝珠を渡す。
「本条君。これあげる」
「えっ? いいんですか?」
「もらっときなさい。本条君しか氷系のユニークスキル持ってないし、君が強くなれば、ブラックドラゴン戦の勝率も上がるでしょ」
島が星斗にそう話し、彼は明日香から氷の宝珠を渡される。
「ありがとうございます。これでもっと強くなれます」
星斗は氷の宝珠を手に取り喜んでいて、その様子を浅井が見ている。
(よかった。無事、彼に氷の宝珠を渡せた)
浅井は、今回の戦いで活躍した星斗に氷の宝珠を渡したいと思っていた。それで自分が剣を選べば、魔法使いである酒井は杖を選ぶだろうと考え、さらに明日香なら仲間のために氷の宝珠を選ぶだろうと考えた。その浅井の思いを知らない黒田が、彼に話しかける。
「浅井、その剣どうするんだ? 浅井と前田の今の剣より弱いだろ」
「鍋島君達にあげればいいよ。彼らでじゃんけん大会してもらおう」
鍋島達というのはライトウィングギルドの第三のパーティで、以前、天満ダンジョンで星斗達と会ったことがある人達だった。
「あ、そうそう。今回の大規模作戦でも、国から全員に報酬がでるからね」
島が星斗にそう話す。
「前の時はCランクだったけど、今はBランクだから、報酬も増えますよね」
「もちろん。それに覚醒者協会からランクアップポイントももらえるから、後で確認してみて」
次回 ランクアップ試験 に続く




