第六十四話 フォルネウス戦
「前方に五体のサハギンを発見。排除します」
フォルネウス討伐部隊の高機動車が移動を止めて、自衛隊の部隊がアサルトライフルで進行方向に現れたサハギンを討伐し、再び移動を再開する。その後、AランクとBランクのモンスターも出現したが、星斗とほかのSランク覚醒者達は戦力温存のために戦わず、アンリなどのほかの覚醒者達が討伐し、部隊はさらに進んでいく。
「目的地点に到達しました。覚醒者の皆さんは、戦闘準備をお願いします」
海堂ダンジョンの入り口から二百メートルくらい離れた場所で高機動車が停止し、星斗達が車から降りる。
「あれがフォルネウスか。エイの姿って聞いてたけど、顔はサメみたいだ」
星斗は望遠眼のスキルで、遠くにいるフォルネウスを見ている。フォルネウスは、海堂ダンジョンの入り口付近の空中を、泳ぐようにゆっくりと移動していた。
「ターゲットを確認。さらに周囲に複数のモンスターを確認しました」
自衛隊の隊員が双眼鏡で周囲を確認し、前線基地へ無線で連絡している。
「それではみなさんは指定の位置へ移動してください」
星斗と十一人のSランク覚醒者達は、武器や盾を構えながらフォルネウスにゆっくりと接近していき、ほかの覚醒者や自衛隊は、周囲にいるモンスターを倒すために、いくつかのグループに分かれて移動していく。
「まずうちの立花が、みなさんに能力強化スキルを使います。その後、前衛が突撃し、後衛は魔法発動の準備を開始してください」
浅井が歩きながらそう話す。
「本条君。もう召喚してもいいわよ」
「そうですね。では、ゴールドナイト、ハイダークエルフ、仙狐召喚!」
島の言葉を聞いて、星斗は立ち止まって三体の仲間のモンスターを呼び出す。それを周囲の覚醒者達が立ち止まって見ている。
「君はモンスターを召喚できるんですか」
「はい。三体だけですが」
「俺にはわかります。その黄金の騎士とダークエルフ、かなりの強さですね」
浅井はゴールドナイトとハイダークエルフを見ながらそう話す。
「仙狐も侮れませんよ。この子は補助と回復魔法が使えます」
浅井の言葉を聞いて、島がそう話す。
「なるほど。前衛二人に魔法使いと回復役。パーティのバランスが取れてます。これなら君ひとりでダンジョンに潜れますね」
「はい。その方針で彼らを選びました」
「もしかしてゲーマー?」
浅井と星斗が話していると、ライトウィングギルドのエースパーティの戦士風の男性が、星斗に話しかけてきた。彼は長いマフラーを首に巻き、防塵ゴーグルで目を隠している。
「えっ……は、はい」
星斗は、日本で最強と呼ばれる人物にいきなり話しかけられたので驚く。
「RPG系はやる?」
「大好きですよ」
星斗のその言葉を聞いた戦士風の男性が、右手を出して握手を求めてきたので、星斗がそれに答える。
「ゲームでの経験が、君をきっと強くしてくれるはず」
「は、はい。ありがとうございます」
戦士風の男性は、星斗と話した後、仲間がいる場所へ戻っていく。
(あの人もゲーマーなのか。今までの印象が変わった)
星斗とライトウィングギルドとのやり取りが終わり、皆が移動を再開する。そして星斗達が、フォルネウスから二十メートルくらいまで接近すると、地面から二メートルくらいの空中を泳いでいるフォルネウスが人間達に話しかける。
「ここに何の用だ?」
「もちろんお前を倒しに来た!」
フォルネウスの言葉に浅井が聖剣を向けながら答え、ほかの覚醒者達も身構える。
「ほう……人間にしては強いのが何人かいるな。これは面白い戦いができそうだ」
そう言うとフォルネウスは全身から強大な魔力を放出して身にまとい、浅井達を威圧する。
「こ、これがSランクモンスターの魔力!」
「さすが神話にでてくるほどの奴だ」
ドラゴンファングギルドの酒井と榊原が、フォルネウスの威圧に必死に耐えている。フォルネウスは、神話に登場するソロモン72柱(ななじゅうふたはしら)の悪魔のうちの一体で、海の怪物の姿をしていると言われているモンスターだった。
「聖女の加護!」
まずライトウィングギルドの立花が、仲間全員の全能力値を強化しつつ、失ったHPを徐々に回復するスキルを発動し、魔法使い達は魔法発動の準備を始める。その後、浅井を先頭にして前衛達がフォルネウスへ向かって走りだす。それに星斗も続くと、
フォルネウス
ユニークスキル
氷魔法(S) 魔力激化(S) 命名(A)
どれを誰にコピーしますか?
と星斗の目の前にウィンドウが表示され、
(やはりSランクの氷魔法、それに魔力激化。ん? 命名?)
星斗は見たことのないユニークスキルを見て驚くが、ここで走るのを止めるのはまずいので、そのままフォルネウスに接近していく。
「ファイナルギガバースト!!」
一番早くフォルネウスに接近した浅井が、持っていた聖剣に強大な魔力をまとわせて豪快に振るう。
「物理障壁!」
それに対しフォルネウスは、自分の周囲に球状のバリアを展開して身を守ろうとする。だが浅井の猛烈な勢いの必殺技がその物理障壁を破壊し、さらにフォルネウスの体に命中してダメージを与える。
「ぐおっ!」
「浅井に続け! 瞬速乱舞斬!」
次に前田の無数の高速の斬撃が、フォルネウスの全身に無数の傷を与え、それに明日香、島、榊原も続く。
「瞬速乱舞斬!」
「大破壊斬!」
「雷鳴一閃!」
さらに星斗とゴールドナイトも続く。
(奴が氷魔法が得意なら、氷結斬は使わないほうがいい)
「ハイオーラブレード!」
「ハイオーラブレード!」
「ぐはっ!」
前衛達の攻撃が空中に浮いているフォルネウスにダメージを与えるが、フォルネウスは地面に落ちることなく、空中に浮いたまま口を開く。
「ふん。人間には不相応の力を持ってるようだな。だがその程度!」
フォルネウスは全身にまとう魔力をさらに強化し、その魔力で超低温の冷気を作り出す。すると周囲の気温がどんどん低下していく。
「奴の攻撃が来ます! 魔法障壁を!」
浅井の指示で、この場にいる全員が魔法障壁を展開する。星斗も精霊の盾を構えて魔法障壁を展開しながら、目の前に表示され続けているウィンドウを見ている。
(どんなスキルかわからない命名は止めよう。そうだな。扱いが難しい氷魔法より、魔力激化の方にしとくか。魔力激化を仙狐にコピーだ)
仙狐
ユニークスキル(3/3)
回復魔法(A) 魔力激化(S) MP再生(B)
魔力激化(S)
魔力が四倍になる。
(よし。魔力激化がAからSになった。これで回復魔法の回復量も上がるし魔法障壁の強度も上がる。後はフォルネウス戦に集中だ)
仙狐も魔法障壁を展開中だったが、魔力が上昇したことにより、その強度も上がる。
「永久凍結波!」
一方、フォルネウスは、すべてを凍らせる極寒の冷気を放つ。それが地面も凍らせながら広がっていき、星斗達前衛の全員の魔法障壁を破壊して、彼らを飲み込んだ。
「ぐあああっ!」
「くっ、これほどの冷気とは……」
前衛の全員が、超低温の冷気を受けて大ダメージを受ける。一方、後衛達の魔法障壁は破壊されず、皆、無事だった。
「エクストラエリアヒール!」
前衛達がダメージを受けたのを見た立花は、持っている豪華な杖を掲げて、仲間全員のHPを大幅に回復するスキルを発動し、星斗達が失ったHPが回復していく。
次回 激戦 に続く




