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コン!なのでました  作者: リノキ ユキガヒ
Route:13よたバナシ②
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ヨタばなし②

 世の中に「絶対」と言う言葉はあっても存在はしない。

 しかし、限りなくそれに近づける事は可能だ。

 それを成らしめるのがシンプルな構造の機械だ。

 シンプルな故に壊れ難く、修理もしやすい。

 OHV というエンジン形式は正にそれを叶える魔法のエンジンなのだ。

 日本人からすると故障などは運悪く遭遇するようなアクシデントだが、アメリカのバイク乗りからするとそれは整備不良からくる必然なのだ。

 メンテナンスフリーなどはあり得ない。機械というものは壊れて当然という考えの素に作られる。故に絶対性能の一つに整備性というものが含まれる。この辺の考えは日本とアメリカでは実に差がある

 。

 複雑な機構を備えひたすら高性能を追い求める日本のバイク。道幅の狭い峠道をヒラヒラと蝶が舞うように抜けていくその姿は繊細かつ大胆でライダーを魅了していく。

 しかしの高性能は脆さと隣り合わせだ。

 一旦故障が発生すればその原因の特定は専門職の人間でなければ不可能であり、修理しようにもユニットによってはメーカーでないと出来ない場合も多い。

 それに対してハーレー。広大なアメリカの大地。どこまでも続くハイウェイ。そのような場所での故障は場合によっては「死」を意味する。

 一日に数百キロの移動はザラ。ハードな使用に耐えうるにはタフなエンジンが必要なのは想像に難しくないだろう。

 なので日本人以上にアメリカ人は故障に対して考え方がシビアだ。

 全てが自己責任で完結するお国柄、故障でさえそれは己の責任だ。

 そこで最悪、修理できなければそれは死神を自ら呼び寄せる事に他ならない。

 広陵な大地と自然はそんなに甘くない。弱り動けなくなったものには容赦なく牙を剥いてくる。

 なのでアメリカのバイク乗りは自分のバイクを自分で直せる位の技量がなければツーリングなど出来ない。

 日本のツーリングとは訳が違うのだ。


「止まる事。それはすなわち死を意味する」


 を地でいくのだ。

 ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト。フォーバルブが小型車でなければどの様なバイクにも適応される日本のバイク。小型化が得意な日本らしいバイク。

 それに反してオーバー・ヘッド・バルブのエンジンにタイアを二つ括り付けたような乱暴な外形。

 実にアメリカらしく、シンプルで大味なフィーリング。感性で操る感じが何ともそれらしい。

 しかし、そのシンプルさはアメリカの数多のバイク乗りから受け継がれてきた意思でもあり生き残る為の知恵なのだ。

 OHVというシンプルなエンジン形式。まずDOHCエンジンに比べると部品の点数が圧倒的に少ない。ここにタフなエンジンを作る知恵が潜んでいる。

 単純に一つ一つの部品を肉厚に作る事ができる。それだけで故障の確率はグンとへる。しかし利点はそれだけでは無い。

 ハーレーの大多数は今だに空冷エンジンだ。

 ここにも先人の知恵が生かされている。水冷エンジンにする事によってハイパワー化は勿論の事、高回転、高負荷時におけるエンジンの信頼性をあげる事も可能だ。

 しかし、広大なアメリカの大地。飛ばした所でその移動距離は高が知れている。

 速度と距離は伴わない。

 猛スピードで移動したことによってライダーに負荷が掛かりそれ以上に休憩をとってしまえばそれは意味を成さない。

 つまり移動距離を稼ぐにはアベレージをいかに保つかだ。

 それに特化したバイクをツアラーと呼ぶ。

 日本ではサクラの駆るGPZ900R、その後継機種、ZZRシリーズなどがそう言われる。

 しかしこれらは空冷エンジンではないしVツインエンジンでもない。

 スペックを重視した日本は高性能化の為に当然のようにエンジンを多気筒にした。

 確かにそれでエンジンの性能は飛躍的に上がったがそれ以上に震動が激しくなった。

 技術力で問題を克服する日本の開発陣は二次バランサーという技術を使ってその震動問題を克服したが、それによってエンジンはより複雑な作りになった。

 そうなると野良整備でどうにかなるメカニズムでは無いことが想像に難しくは無い。

 しかも、エンジン内部をイジルときに水冷エンジンはクーラントという冷却水を抜かないといけない。そして抜いたからにはそれを補充する必要がある。そうなると、ますます野良整備だと難しい。

 その点ハーレーのエンジンはシンプルだ。空冷なのでエンジンさえ冷えればヘッドは簡単に開けられる。

 おまけにV型エンジンというのはお互いにの震動を打ち消し合う特性を持つ。

 長距離ツーリングに不快な震動が、ある速度から消えるのがハーレーだ。

 なのでアメリカ人はV型エンジンを好む。

 なにもV型が持つマッシブなイメージを好んでいる訳では無い。

 そこにはキチンと合理的な意味があるのだ。

 シンプルイズベスト。

 それがハーレーだ。

 正にアメリカの広大な大地を生き残る為に走る鉄馬。マシーン。

 そこにはフロティアスピリッツと合理性が同居する。

 それがアメリカのモーターサイクルだ。

 そこまでに生き残る事にこだわったバイクが有るだろうか?

 それを聞いても尚ハーレーというバイクに対して魅力を感じる事がなければアナタは


「こちら側」


 の人間になる事は無いだろう。

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