ヨタばなし①
「イイイヤャッホーー‼」
V ツインエンジンの豪快な排気音が響き渡る。
日本車には無いダイナミックなそのフィーリングは正にアメリカという国を象徴するかのようだ。
アメリカ人にバイクと言えばハーレーで、ハーレーと言えばアメリカという位、アメリカ人にとってハーレーというバイクは正にアメリカそのものなのだ。
小型、軽量、ハイパワーが日本のバイクのお家芸とすれば、ハーレーはその対極を行くものだ。
排気量にモノをいわせたビックトルク、鉄の塊をそのまま鋳抜いたようなエンジン、広大なアメリカ大陸をブッ飛ばすための居住性。
キングオブブイツインの名を欲しいままに我が道をいくそのスタイルは最早一つの文化として昇華していると言っても過言ではない。
スペックを重視する日本人からするとその性能はほぼ前世代的な赴きを感じる。
故に日本人の一部のバイク乗りからは魅力的には映らない場合がある。
しかし、それはハーレーを極表面的にしか見ていないだけだ。
日本の路地では使いづらそうなワイドなハンドルは、重量級のマシンの操舵をテコの原理で楽にする。
そして、万が一バイクを倒した場合にもその長いハンドルバーは役に立つ。
ハンドルの端を持って持ち上げる。先ほどのハンドリング同様、テコの原理で三百キロ超の巨体は女性の力でも易々持ち上げる事ができる。
実に合理的、多機能な仕組みだ。この辺りの実用性はカタログスペックには反映されない。
様々なハーレー乗りの実体験からの工夫だろう。
土壇場で「根性」と言う精神論を持ち出す日本とは一味違う。
エンジンにしてもそうだ。日本車は高効率化の為、DOHC をはじめとした複雑な機構を備えたものが多い。中には可変バルブタイミングなどの自動車顔負けのハイテクを備えたものまである。
勿論ハーレーにだってそのようなハイスペックを謳った車種はあるが、大多数のハーレーはOHV というエンジン形式が流通している。
今現在のエンジン工学からするとこのような前々世代的なエンジン形式は最早クラッシックカーの領域と言っても差し支えはないだろうが、ハーレーをはじめアメリカではまだまだ現役だ。
ここには勿論スペックには反映されない利点が様々ある。正に合理性と実用性を重んじるアメリカらしいスピリットがこのOHV というエンジン形式には宿っているのだ。
まず、構造がシンプルで壊れ難い。現在のエンジンは複雑かつ繊細にできており、町工場レベルではエンジン内部の修理はほぼ不可能だ。メーカーによってはエンジン内部を開けての修理を認めないところもあり、ブラックボックス化している。ハイブリッドなどはエンジン工学と電気工学の知識も併せ持つ必要もあるのでそれが顕著だ。
しかし、それは日本ならではかもしれない、国土が狭くレッカーサービスが充実しているからそのような流れになっているのかもしれない。
視点をアメリカへと移してみよう。広大な大地に一本のハイウェイ。自分の現在地でさえ見失いかねないこの場所で、もし故障が起きたら?
日本なら携帯やその辺の公衆電話でレッカーサービスを呼ぶ事ができるだろう。運がよければガソリンスタンドなどで修理が出来るかもしれない。
しかし、ここはアメリカだ。見渡す限り何もない。ガソリンスタンドなど何十キロ先か解りもしない、歩く人はおろか、車すら通らない。レッカーサービスを呼ぶなどとは気楽に口に出来ない環境だ。
そのような所で故障は実に命取りだ。




