表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コン!なのでました  作者: リノキ ユキガヒ
Route:2「始まりはヨコハマヨコスカ」
PR
6/69

 サクラはとある波止場へとバイクを滑らせた。

 そこは普通の波止場とは違い厳重なゲートに囲まれていて入れそうにはなかった。

 ゲートの入り口らしき所には看板が掲げられている。


「三笠記念公園」

 

 サクラはそれを確認するかのようにバイクのエンジンを切った。

 辺りに静寂が訪れる。今まで聞こえなかった波の音が聞こえてきた。

 ヨシはヒョイとリアシートから降りる。サクラもバイクに跨ったままメットを脱いで、それをミラーに引っかけてから降車した。

 磯風が二人の頬を撫で、抜けていく。

「う~ん。どうも入れないみたいね」

 ヨシは特にこれといった表情を浮かべずサクラに話しかけた。

「こういう風になっていたんだ」

 サクラはそのゲートを見ると更にそのおくにある物に視線を向ける。そして呟いた。

「あれが、戦艦三笠かぁ」

「あなた、飛行機だけじゃなくて船にも興味があるの?」

 少し驚いた感じでヨシはサクラの方を見ながら言った。

「うん。乗り物ならなんでも」

 彼女は満面の笑みで答えた。暗闇で放たれるサクラの笑顔。二人の出会いで初めて見る屈託のないそれはヨシの心中に何らかの作用をもたらした。

「せっかく来たのにこれじゃ近くで見れないね」

 ヨシは残念そうな表情を浮かべるがサクラは違った。

 ゲートの向こう側で鈍く光る船体。かつての武勲を誇らしげにしているようにさえ見える。

 それを羨望の眼差しで見つめるサクラ。

 彼女の横顔から間近でも見れない残念さは伺えない。


 戦艦三笠


 かつてこの船は日本海を守り切り戦後も記念艦としても余生を送っているがその威光は衰えてはいない。

 それをサクラは感じているのだ。彼女はそれだけで十分だったのだ。

 ヨシはそんなサクラの隣に寄り添う。その二人を見守るようにGPZ900R・Ninjaは佇む。

 

「だれか!」

 

 突然サクラとヨシの耳に怒号が入る。二人は思わずそちらの方に身体を向けた。

 二人の視界には一人の水兵が立っていたが、サクラはその水兵が構えている物を見るとギョッとした。

 彼女の眼前に、ヌラリと光るものがあった。徐々にそれにピントがあっていく。それはナイフみたいなものだったが何かの先に取り付けられるようだった。

「え?」

 サクラは息を呑んだ。それはどうも銃剣のようで旧型のライフルの先に取り付けられていた。

「こんな夜更けに何をしておる」

 水兵は鋭い目付きで二人に問いかけた。サクラはその鬼気迫る形相に面食らったが違和感を感じずにはいられなかった。頭から水兵の容姿を見ていく。そして違和感の原因と思われるものを見つけた。

 セーラー服の水兵の被る帽子に「大日本帝国海軍」の文字。

「帝海…」

 サクラは思わず口に出してしまった。

「貴様質問に答えんか!!」

 水兵はズイとサクラの鼻先に銃剣を突き付ける。思わずのけ反るサクラ。しかし自分でも驚くくらい冷静にその視線の先にあるものを見据える。黒く鈍く光るそれは三八式歩兵銃。

 しかしそれだけではその違和感を拭い去る事はできなかった。なぜなら大日本帝国海軍はすでに解体されていてこの日本には存在しない軍隊だからだ。

 コスプレの類か?とも疑ったが軍服と銃剣を携えただけでその気迫は生まれないだろう。

 戦時下の人間だけが放つ事ができる覇気、気合い。そんなもの平時下である今の日本人には到底生み出せない。

 ヨシの方に目線をを向けようとしたが水兵から目を離なす事などできそうにもなかった。

 サクラは心の奥底だがある一つの答えを導き出していた。しかしそれは余りにも荒唐無稽だ。

 すると、ゲートの向こう側と思われる方から声がした。

 

「なにかあったのかね?」

 

 ひっ迫する事態とは正反対のひょうひょうとした言葉がサクラとヨシの耳に入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ