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峠道は終わり開けた港街みたいなところに二台のバイクは辿り着いた。
サクラとシンディは申し合わせた様にフェリーの船着き場へとをバイクを進めた。
「いよいよ九州が見えてきましたネー」
波止場に着くとシンディは海を見つめた。停車してもハーレーの雄々しい三拍子の排気音はその存在を主張する。
そしてその鉄馬にまたがる彼女の長い足は低い車体と相まって足を広げてもなお、ベッタリ踵を余裕で付けられる。そこから滲み出る自信溢れる姿は波止場とその向こうに見える海原。かすんで見える九州とマッチして映画のワンシーンのようだった。
「ヒュ~。絵になるぅ」
ヨシはそう言うとヒョイとバイク・ニンジャから降りた。
サクラもシンディの姿にしばらく見とれていたが、ハーレーの排気音が不意に消え彼女はそれで我に返った。
「乗船手続きしないとね」
サクラはニンジャのエンジンを切るとそそくさと降車した。
港という言葉より波止場と言った方がしっくりくるフェリー乗り場。
それもそのはず、ここを拠点とする「国道九四フェリー」は人々の生活の足として毎日運行しているのだ。
しかし、牧歌的な雰囲気はない。どちらかというと少々慌ただしいというか?殺伐としたいうか?どことなく旧国鉄時代の列車運行のような雰囲気だ。
まぁ、電車や飛行機と違って小型のフェリーの場合は作業員や運航に関わる人がそこかしこで見かけるのでついつい客には見せてはいけない職場の裏が見えてくる。その為なのだろう。
サクラとシンディは乗船手続きを済ませるとバイクを押してフェリーが係留されている脇へと赴いた。ニンジャのリアシートにはヨシが陣取っている。
「あんたの分の料金は支払ってないから姿は消してなさいよ」
「アイアイ・サー☆」
「Oh密航ですネー」
「シンディも妙な日本語知ってるわね…」
サクラは軽くため息交じりに呟く。
四輪車は係員の指示で整列されて停車しているが、二輪車は見渡す限りの範囲では自分達の二台しかないし、特にこれと言った指示も受けそうな気配もなかったので二台のバイクは邪魔になりそうにない所にとりあえず落ち着けた
。
サクラは波止場にあるフェリーを何気に見た。
フェリーにしては小型の部類に入る三千トンクラスの貨客船だが間近で見ると流石に乗用車やトレーラーとは違った桁違いの重量感を放つ。「ゴンゴンゴン」とディーゼルエンジンの吸気・圧縮・膨張・排気の行程がそのまま音になっているようなアイドル音が波止場にはBGMのように響いていた。
「ニュー豊予…」
サクラは船体に書かれている船名と思われるものを思わず読み上げた。
「New…」
シンディが英語の部分のみに反応する。
「ニューって新しいって意味でしょ…」
三人の視線が側舷に描かれた「ニュー豊予」の文字に注がれる。
「ニューっていう割にはボロくない?」
「ちょっと」
サクラがヨシを慌てて制する。
「きっと幾多の戦いに勝ってきたのデショー」
「外見だけよ中はそんなでも無いんじゃない?」
サクラがそう言うと、乗船待ちをしていた車列が動き始めた。
それを目で追っていると船体が再び視界に入る。
船首と船尾に桟橋のようなゲートを備え、積載物の積み降ろしが効率よく行えるようになっているフェリーとしてはオーソドックスな形だろう。
しかし、遠目からみても錆びの浮き加減や塗装の剥げ具合が気になる。
おまけに船名に新しいという意味のニュー。
「よく見ると結構アレな感じね…」
サクラは思わずつぶやくが、その声は係員の
「おーいバイクの方~」
と、いう掛け声に掻き消された。




