②
「ほー。なんだか知らないけど低くて細くて凄いバイクだね。いろいろ剥き出しだし」
ヨシがいつもの調子でそう言うと、バイクの主はサングラスをとった。
美しい鳶色のヒトミがクリンとヨシに向けられる。
「おや?」
「What’s」
二人はお互いを見合うとそのまましばらく見つめ合った。
「あなたニンゲンじゃないネー!」
「私の正体がわかるの!?」
ヨシは意外な言葉に頓狂な声をあげた。
「ここは四国ねー。ワタシ何があっても驚かないヨ」
「はぇ~」
「なにか、こう四国を勘違いしているような…」
一連のやり取りを見ていたサクラは思わず呟いた。
「そこのオネーさん!このニンジャ只者ではないネー」
その矛先が急にサクラに振られる。金髪の彼女は低いシートから立ち上がると、長い足はいとも簡単にバイクを跨いだ。その体型と相まって日本のスポーツバイクだと考えられない事だ。
ジャリジャリとブーツの踵が路肩を踏みつける音がサクラに近づく。そして目の前に立つとズイと顔を寄せた。
「安心して。貴方と勝負する気はありまセーン」
そう言うとそのまま身体をニンジャへと向けた。
「ビューティフォー…」
彼女はため息交じりにそう言うとウットリとした視線をニンジャへと注いだ。
「このディティール、これがジャパンのmotorcycleね!」
「モーター最高?」
「そう!サイコー!」
「そう!最高!」
「HAHAHA!!」
「アハハハ!」
同じように金髪同士だからなのだろうか?意気投合したようにヨシと彼女はお互いの肩を叩きながら笑いあった。
「なんだか楽しそうで何よりだわ」
そんな二人をよそにサクラはニンジャの向かいにあるバイクに視線を向けた。
ワイドなハンドルに目が行きがちだが、特徴的なのは二つあるはずのレバーがこのバイクに至ってはアクセルグリップの所のブレーキレバーしかない。しかも通常はクラッチレバーがある側はただのグリップになっている。
「ん?このハーレー、ジョッキーシフト?」
サクラはまじまじとそのバイクのシートを見た。すると左側から見慣れない棒が突き出てて、それは丁度ギアボックス辺りへと通じていた。
「Oh!あなたハーレーの事知ってるネ!」
彼女は嬉々とした声をあげるとサクラの手を握った。
「えぇ、少しは…」
その勢いとサクラを軽く見下ろす身長に圧倒されながらも答える。
「やりすぎてオリジナルなところはフレーム位デース」
そんなサクラに構うことなく彼女は聞かれてもない事を話し始める。
「ハハっ。流石はカスタムの本場アメリカだわ」
「イエース。オンリーワン、これが私のバイク。アイアンホース」
「ふふ」
「?。何がおかしい?」
金髪の彼女は軽く噴き出したサクラに対して困惑の表情を示す。
「いえ。アメリカでも日本でもバイクの事を鉄の馬っていうのね。バイク乗りの考える事は万国共通ね」
「Yes!グローバルスタンダード!」
その言葉に三人は二台のバイクを前にワハハと声をあげて笑った。
特に面白い事はないのだが、意気投合した勢いで突然三人の間には何かが芽生えたようだ。そこから込み上げてくる笑いだろう。
「ワタシ、シンディ」
金髪の彼女は自分の事をシンディと名乗った。
峠道の昼下がり。思わぬ出会い。それらを包み込むように昼下がりの日差しは、三人と二台を優しく照らす。




