④
「先ずはオードブル」
塚本のすました口調から発せられる言葉と共にメイドたちが料理の載った皿をテーブルへと運んできた。
「オードブル?」
ヨシがその言葉と同時に眉間にしわを寄せる。
しかしサクラはその皿に盛られたものを見ると「へえ」と感嘆の声をあげた。
目にも鮮やかなグリーンサラダ。それらに和えられていると思われる魚の切身。
彼女がその料理に興味を示すと同時くらいに塚本の口からその詳細が述べられた。
「季節の野菜と鯛の冷製パスタ風サラダです」
「冷製パスタ風…」
サクラがそう言いながら塚本の方へと視線を向けると彼は微笑をたたえるだけでこれといった表情を示さなかった。
「ふん。あたしゃ虫じゃないんだよ。菜っ葉なんて出しやがって」
ヨシはそう言うと乱暴にフォークを突立て料理を口へと運んだ。
「え!?」
そのヨシの目の色が驚愕の声と共に白黒する。
「ひょっとしてこの白い細長いパスタっぽいもの…」
サクラもそれを抑えきれなかった。
「パスタ風ってところがこの料理のミソね」
おケイが上品にそれを食している横で豪快にヨシが冷製パスタを啜りこんでいた。
「確かにこのコシがなければこの料理は成立しないわね」
貪るように食べるヨシとは別に、サクラはその白いパスタのような物の料理を味わっていた。
「プハー!ウドンってこんな食べ方もあったんだ!!」
ぺろりと平らげたヨシが満面の笑みで叫んだ。
「どうでしょう?パスタにも負けない讃岐うどんのコシは」
カトウさんがニコニコと微笑みながらヨシ達に話しかける。
「本当。白いだけで言われないと判らないくらいだわ」
サクラはそう言うとまじまじとそのパスタの様に細いウドンに見入っていた。
「ウドンの太さは工業規格で決められているだけあって、本来はどのような太さでも構わないんですよ。特にお料理に合わせて太さを変えることが出来ればこのような事も可能です」
「それとね、このコシは機械製麺じゃないと出せないのよ」
同じく料理を食べ終えたおケイがそう言うと、カトウさんは深くうなづいて言葉を繋げた。
「元々、讃岐うどんのコシの秘密はこねる際に足で踏んだりして出していました。しかし手前どもは大量生産する為にそれを機械でしています。これはもう足で踏むのとは桁違いの力を掛けられます。それが冷凍ウドンにしてもコシのある麺ができる秘密なんですよ」
「本場のパスタも最終的にはパスタマシーンで圧延しますものね」
カトウさんの説明におケイが補足を入れる。
「なるほど。だから工場まで私達を連れてきたのね」
サクラは納得の表情を見せる。
「さーぁ。次はどんな変わったウドンが出てくるのかな?」
先ほどとは打って変わって満足気なヨシ。
社員食堂の一角に突如として現れた豪華なディナータイム。
「はぁー。極楽極楽」
ヨシはそう言いながらお腹をさする。
「やはり最後はこれで締めていただきます」
カトウさんがそう言うと全員の前に湯気の立つ湯掻きたてのウドンの入った丼が出てきた。
「カトーさん。さすがにもう…。それにアレだけ変わったウドン料理のあとに普通のウドンじぁ…」
人一倍食い意地の張っているヨシが珍しく顔を曇らせそれを拒んだ。
「まぁ、騙されたと思って口に運んで下さいな」
カトウさんは笑顔でヨシに一押しする。
「そんなに言うなら」
ヨシは渋々その湯気立つウドンを口へと運んだ。しかし内心彼女でも一口が限界と思っていたのだが、喉をツルツルとウドンが通っていく。
そしてあっという間に平らげてしまった。
「プハー!やっぱり讃岐ウドンはコレよね!」




