第3話:『変身したい!キメたい!爆発せよオリジナル必殺技!』
「あぁ〜〜〜っ! ホントは悪党の真ん前で! ドカンとキメポーズ作って『変・身!』って叫びたいのにぃぃぃッ!」
グラウンドを突き進む巨大ドリル機械獣。逃げ惑う生徒たち。
校舎裏の物陰で、輪は自分の頭をガシガシと掻きむしりながら身悶えていた。
「なにジタバタしてるのよ! さっさと変身しなさい!」
隣でサキが焦り顔で急かすが、輪の悩みは切実だった。
「無理無理無理! あんなグラウンドの真ん中で変身したら、全校生徒に『天宮輪=破天吹雪』ってバレちゃうじゃん! 舞なんてバッチリ一眼レフ構えて配信の準備してるし!」
「自業自得でしょうが! 早くしないと校舎が潰される!」
「分かったわよ! ……こうなったら『物陰ステルス変身』からの『超高速飛び出し』で行く!」
輪はポリマーブレスを締め直し、物陰で小さくポーズを決めた。
(本当は『この世に悪がある限り!』って大音量で叫びたいのに……!)
悔しさを噛み締めながら、 whispers(小声)で呟く。
「……へんしん……(ボソッ)」
ブワッ!!
漆黒の特装スーツが全身を包み込む。完璧な変身。
だが、決めポーズを叫べなかった不完全燃焼感が、輪のエネルギーを爆発させた。
ドバババババッ!!
「うわああああっ! ストレス発散じゃあああ!!」
物陰から音速を超えた猛ダッシュで飛び出した漆黒のヒーロー。あまりの速度に土煙が嵐のように巻き起こり、グラウンドの砂が視界を完全に遮る。
「な、なんだ!? 視界が……目がああぁっ!?」
ドリル機械獣が怯む隙に、輪は敵の背後へ一瞬で回り込んだ。
(よし! 砂嵐で姿が見えない今なら、決め台詞を叫んでもバレない……!)
視界ゼロの中で、輪は満を持してビシッとポーズを決めた。
「よくぞ聞いたわね! この世に悪がはびこる限り、あたしの拳が打ち砕く! 破天荒……あ違った、破天流が逃がさない! 悪党ども、お前の罪を数えなさい! 破天吹雪! 参上ッ!!」
「だから! 誰も見てないところで叫んでどうすんのよッ!?」
物陰からのサキのツッコミに、輪はニヤリと胸を張る。
「うるさい! 言わないと調子が出ないの! ……それにね、人の技を真似るだけが破天流じゃないのよ!」
回転するドリル腕を振り下ろす機械獣。輪はその攻撃を紙一重でかわすと、今までコピーしてきたあらゆる格闘技の踏み込み、腰の捻り、そして拳圧の波動を一つに融合させた。
両拳を胸の前で交差させ、解き放つ。
「鬱憤晴らしの、あたしのオリジナル! 食らいなさい! 破天流真奥義——銀世界!!」
ズガアァァァァンッ!!
コピー技を超越した輪独自の必殺拳。解き放たれた超絶的な衝撃波は、迫るドリルを根元から粉砕し、あまりの風圧と摩擦熱によって周囲の砂嵐を一瞬で真っ白な衝撃の結晶へと変え、まるで銀世界のような美しい光景を生み出した。
「な……なにあの威力……! コピーどころか、完全に自分の技にして昇華させてる……!?」
サキが呆然と目を見張る中、ドリル機械獣は跡形もなく爆発散華した。
ドゴォォォォンッ!!
「……ふぅ。やっぱり決め台詞を叫んでからのオリジナル技は最高ね!」
変身のロマンを制限されたフラストレーションを爆発させ、見事なオリジナル必殺技で勝利を収めた輪。だが、砂嵐が晴れ渡った瞬間、「ヤバっ!」と大慌てで空へ跳び立ち、逃げるように去っていくのだった。




