第2話:『バレちゃった!?正体隠して型を隠さず』
第2話:『バレちゃった!?正体隠して型を隠さず』
「まさか、転校してくるなんて聞いてないよーッ!?」
休み時間の女子トイレ。輪は洗面所で顔を洗いながら、一人で激しく頭を抱えていた。
鳳凰学園に現れた転校生、神代 サキ(かみしろ さき)。
右肩の包帯、隙のない立ち振る舞い、そして何より全身から漂う「戦う者」の気配。昨夜、臨海地区で機械獣と死闘を繰り広げていたポリマーレディ本人物に間違いなかった。
(落ち着けあたし……! スーツ姿しか見られてないし、ボイスチェンジもかかってたはず。絶対にバレるわけが——)
「天宮 輪さん、ね」
「ひゃいっ!?」
背後から掛けられた冷ややかな声に、輪は跳び上がった。
振り返ると、入り口に腕を組んだサキが立っていた。鋭い眼光が、輪の全身を値踏みするように射抜く。
「……何か用かな、神代さん? 転校初日から女子トイレで待ち伏せなんて、物好きなんだね!」
ぎこちない笑顔で必死にシラを切ろうとする輪。しかし、サキは静かに歩み寄ると、輪の手首——昨夜ポリマーブレスが装着されていた右手をサッと掴んだ。
「その手首の微かな痕……そして、その身体の軸」
「えっ……?」
「武道の素人には誤魔化せても、私の目は誤魔化せない。歩き方、重心の置き方、筋肉のつき方……どれをとっても並の女子高生じゃない。そして何より——」
サキは輪の耳元に顔を寄せ、低く呟いた。
「私の技の『クセ』を、そっくりそのままコピーして戦う奴なんて、世界に一人しか心当たりがないのよ」
「っ……!」
(型をコピーしたせいでバレたーーーッ!?)
破天流の特性そのものが、最大の証拠になっていたのだ。
「認めなさい。昨夜の『破天吹雪』……あなたね?」
「ち、違いますぅー! あたしはただの可憐なJKで、そんな『お前の罪を数えなさい』とか言っちゃう変なヒーローとは無関係で……!」
「……やっぱりあなたね。誰もそこまで言ってないわ」
「あ」
墓穴を掘った輪は、ガックリと肩を落とした。
「……頼むから、誰にも言わないで。あたし、普通に暮らしたいの。幼少期に強すぎて道場破りを壊滅させてトラウマになって……もう目立つ戦いは嫌なの!」
必死に手を合わせる輪。サキは一瞬呆れかけたものの、すぐに真剣な表情に戻り、自身の右腕を抱えた。
「バラす気はないわ。ただ……助けてほしいの」
「え……?」
「私の『ポリマーブレス』は、昨夜の戦いであなたに引き寄せられ、そのまま適合してしまった。今の私には、群がる機械獣を一人で抑え込む力がない……。お願い、私と一緒に戦って」
頭を下げるサキ。都市を守る重圧を一人で背負ってきたヒーローの、切実な願いだった。
その時、校舎全体を揺らす激しい衝撃音が響き渡った。
『フェフェフェ! 出てこいポリマーレディ! 今日の機械獣は一味違うぞ!』
グラウンドに巨大なドリルを装着した怪人が出現し、校舎を破壊し始めていた。悲鳴を上げて逃げ惑う生徒たち。その中には、カメラを構えて果敢に突撃しようとする幼馴染の舞の姿もあった。
「舞……! あいつ、また無茶して……!」
輪はサキを見つめ、ハァと大きなため息をついた。
「……はぁ、分かったわよ! でも、条件が二つ!」
「条件……?」
「一つ、あたしの正体は絶対に秘密! 二つ……決め台詞のセンスには口出ししないこと!」
「二つ目、要るの……!?」
ツッコミを入れるサキを置き去りにし、輪は手首に現れたポリマーブレスを掲げた。
「行くよ、神代さん! ……あたしの拳で、ぶっ叩いてあげる!」




