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断罪の光と星の導き

渦巻く霧の中、エルディアスは反射的にファリオンをしっかりと抱きしめていた。

離ればなれにならないように——それは本能的な行動だった。


しかし——


霧の中で彼の心に浮かんだのは、アステリアだった。


あの紫の瞳、銀糸のような髪、静かに微笑む姿。

星々の声を聞き、未来を占う女神。


彼女の優しさは誰に対しても変わらない。

誰にも等しく、穏やかで、慈しみに満ちている。


けれど——エルディアスは知っていた。


(あの瞳が自分を見ているときだけ、特別だと思えたなら——)


その想いが確かにあることを、認めるのが怖かった。


「……アステリア……」


無意識に、その名を呼んでいた。


その瞬間——


ゴウッ!


霧が一気に晴れる。


目の前に広がったのは、星々の輝きに満ちた空間だった。


星の庭園。


ファリオンとエルディアスは、ふかふかとした柔らかな布の感触を足元に感じながら、驚きに目を見開いた。


「え?」


次に目に入ったのは、薄紫の瞳を驚きに見開くアステリア。


彼女は髪を解き、寝間着のような軽やかな衣を纏っていた。

——まさに、眠りにつこうとしていた。


「アステリア……?」


エルディアスが混乱しながら声を漏らす。


「これ……星の庭園じゃないか!?」


ファリオンが興奮気味に言った。


「スゴいな、フォグ・リフトって! あ、アステリア!!」


その瞬間、アステリアはようやく事態を把握した。


自分の寝室、それも天蓋付きのベッドの上に、突然現れた二人の少年。


エルディアスとファリオン。


そして——


「——きゃあああああっ!!」


これまで聞いたことのない悲鳴が、庭園に響き渡った。




「なるほど、そういうことね……」


アステリアは反省してうなだれる二人の侵入者を前に、優雅に蜂蜜茶を一口飲むと、静かに口を開いた。


「フォグ・リフトを使って、イグニスとリリスを下界へ逃がすつもりだったのね。でも、イグニスはリリスだけを送り出し、自分はアルクィアに残った……」


「……リリス、大丈夫かな。」


エルディアスは胸をぎゅっと掴み、不安そうに呟いた。


「下界は戦争で荒れてるって聞いたのに……」


アステリアは彼の肩にそっと手を置き、優しく慰めるように語る。


「星々がイグニスとリリスに何かが起こると告げていたの。でも、はっきりと読み取れなくて……まさかオルドがこんなにも早く二人を捕らえに来るなんて。」


彼女の声には、悔しさが滲んでいた。


オルドの名を聞いた途端——


ファリオンは弾かれたように顔を上げた。


「イグニスは……あれからどうなったんだろう?」


その美しい虹彩を持つ瞳が、不安と自責の念に揺れる。


「……僕はリリスと師匠を救えなかった……」


「それは違うよ、ファリオン。」


エルディアスは真剣な目で兄を見つめる。


「フォグ・リフトを使って、リリスはアルクィアから……オルドの手から逃れることには成功したんだ。」


そう言いながらも、イグニスの運命を考えると、彼はそれ以上の言葉を飲み込んだ。


沈黙。


部屋に静けさが広がる。


その時——


アステリアが、ぽつりと呟いた。


「未来はまだ不確かだけれど……イグニスの魂は消えないわ。」


双子は顔を見合わせた。


「どういうこと? イグニスは、もしオルドに断罪されても死なないってこと?」


ファリオンが問いかける。


アステリアは困惑したように首を振った。


「わからない……」


星々は囁く。

不確かな中にある、確かな未来を。


アステリアは瞳を閉じ、意識を星々のささやきに傾けた。


闇の中で、微かな光が瞬く。

それは無数の星の軌跡。


——けれど、今夜の星々は不安定だった。


まるで何かに乱されるように、いつものような整った流れを描いていない。


(未来が定まっていない……? それとも……)


その中で、一つだけ異様な輝きを放つ星があった。


燃え上がるような赤。

まるで炎そのもののような光が、ゆっくりと浮かび上がる。


次の瞬間、アステリアの脳裏に映像が飛び込んできた。


炎のように揺らめく、燃えるような深紅の髪。


その髪を持つ者の姿は、まだはっきりとは見えない。

しかし、確かに感じる——そこに宿る強い意志と、燃え盛るような力を。


(これは……イグニス……?)


アステリアはそっと瞳を開いた。


「……イグニス……?」


気づけば、その名を口にしていた。


今見たものが何を意味するのかは、まだわからない。

けれど、星々が示したのは、彼の存在が未来にまだ消えていないこと。


それが、希望なのか、それともさらなる試練なのか——

その答えは、まだ霧の中だった。


——その時だった。


ふわりと光が部屋を包む。


白い羽根が微かに揺れ、静謐な威厳をまとった天使が、静かに現れた。


天使は三人を見渡し、静かに言葉を紡ぐ。


「神々の審判が始まります。

 イグニス様が断罪を受ける場へ、すでに神々が集まっております。

 ファリオン様、エルディアス様、アステリア様もどうぞお越しください。」


その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気が凍りついた。


「……イグニスが、断罪される……?」


ファリオンの喉が詰まり、かすれた声が漏れた。

まるで、その言葉の意味を理解することを拒んでいるかのように。


「そんな……」


アステリアの声は震えていた。


「……こんなにも早く……?」


思わず零れたのは、エルディアスの呟きだった。


だが——


天使は何も言わず、ただ光の扉を開き、手を差し出す。


「ご案内いたします。」


それは、まるで決まりきった運命のように響いた。




読んでいただきありがとうございます!

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