(116)エルフと捨て恥
夏菜が加わり、三人で一緒に少しずつ桜貝を集めていると、雲の切れ目が増え始め、気付けば満月が煌々と辺りを照らし始めた。
その光の強さは、もはや、電池が切れかけの懐中電灯よりも強いものだった。
波の音だけが聞こえてくるビーチの砂浜で黙々と作業を続けていると、フィリアが「で、できましたわ…!」と声を上げた。
「やったー!」と俺は思わず、つい声を上げる。
夏菜が不思議そうに首を傾げる。
「もしかして、フィリアちゃん、桜貝が気に入っちゃって、空港に向かう前に最後の思い出作りに来たってことだったのかな?」
「ユウト、そういうのはちゃんと先にやってあげなきゃダメでしょ!」と俺をこづく。
「た、台風だったじゃんか」と俺は答える。
「あ、そりゃそうか。」と夏菜が笑う。
一件落着だ。これでフィリアはこれから故郷に帰れる。
フィリアが桜貝で作った薄ピンク色の魔法陣の前に立ち、涙ながらに声を出す。
「カナさん、本当に、本当にありがとうございます…!」
「へへーん、いいってこと。夏休みを一緒に過ごしてくれたフィリアちゃんのためだし、礼ならあたしを無理やり呼び出したユウトに言ってよね」と照れ隠しのように夏菜は口にする。
「は、はい…ユウトさん、ありがとうございます!」
「う、うん!良かった良かった!」
と俺は口にしつつ、さて、どうしようかと心の中で思っていた。
フィリアは慌てていたのか、既に薄ピンク色の魔法陣からは輝きが生まれ始めていた。
恐らく、これからフィリアが初めて銭湯にやってきた時のように、光に包まれるのだろう。
ただ、ちょっとこれは月の光だと説明がつかない。
ここで最後、フィリアが異世界からやってきた、なんてことになれば、フィリアが帰った後も夏菜から問い詰められ、大変なことになってしまう。
そう思った俺は、もう恥も何もかもを捨てて、夏菜を抱きしめた。
「ごめん!カナ!ちょっとだけ目を閉じて!」
そして抱きしめたカナの背中が、フィリアを向くように向きを無理やり変える。
「え!あ、ちょ、ちょっとユウト!どうしたの?!」
華奢だけれども柔らかなカナの体を抱きしめ、そしてカナのにおいがして、俺は人生で史上最高速度の心臓の鼓動を叩き出していた。カナが何か言っていたような気がするけれども、俺の耳にはもう何も聞こえてこなかった。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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