(114)エルフと電灯
俺とフィリアはストレートビーチで桜貝を探し始めた。
夏休みの時期だけれども、台風明けで平日、それも夕暮れだったこともあり、人は俺たち以外、誰もいなかった。そしてラッキーだったことに、すぐに桜貝は見つかり始めた。
「台風のおかげで、海の中から運ばれてきたのかもしれないな」
と俺は思わず口にする。
「こ、これだけすぐに集まれば、きっと満月が輝く頃には、魔法陣が組めるようになりますわ」
と、フィリアは集めた桜貝を、波が届かない砂浜で少しずつ置き始める。
何もかもが順調だと思っていた。
しかし、三十分ぐらいで日がすっかり落ち、辺り一面は暗くなってしまった。
懐中電灯を使って桜貝を探すのは中々に難しい。
そうこうしていると、懐中電灯の光も少しずつ弱まってくる。
人手が足りない。光も足りない。どうしたらいいんだ。
俺は焦りながら考える。
夏菜しかいない。
もしかしたらフィリアが違う世界からやってきたことが、夏菜には伝わってしまうかもしれないけれども、もう後は帰るだけだ。四の五の言っていられない。
急ぎ俺はメッセージではなく夏菜に電話を掛ける。
「ちょっと!急にどうしたの?!」
夏菜の元気な、けれどもちょっと不満が混じった声が聞こえてくる。
「晩ご飯、食べてるとこなんだけど!」
「ご、ごめん!」
「ただ、急ぎなんだ!ストレートビーチに来てくれないか!スマホと懐中電灯を持って!」
「はぁ?あんた何言ってんの?」
そうだよな、そうなるのは間違いないよな。
「ちょっと理由は後で説明する!一生のお願いだ!夏菜しか頼めないんだ!」
「それってどう──」
「ごめん!待ってる!」
夏菜が何か言いかけたけれども、俺は電話を切った。一つ一つを説明する時間もないし、この切迫感はきっと電話では伝わらない。電話を切ることで、焦りを伝えようとした。
その様子を見て、フィリアが心配そうに口を開く。
「か、カナさんが来てくださいますの?」
「分からない。ただ、あいつなら来てくれると俺は信じてる。」
もしカナが来てくれるとすれば三十分後、もしあいつが来なかったとしても間に合うように、全力を尽くすしかない。
俺は光が弱まってきた懐中電灯を手に、ひたすらビーチで砂を掘り返し、桜貝を探し続けた。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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