(113)エルフと無茶
俺とフィリアはビーチに向かう準備を整え、自転車に飛び乗った。フィリアはいつも通り荷台へ。
「しっかり掴まってて!飛ばすから!」
「む、無茶されないでください…!」
フィリアが心配してくれているけれども、時間には限りがある。懐中電灯がある、スマホのライトがあるとは言ったけれども、真っ暗になっては見つけるのに苦戦するのは目に見えている。
そっから先、俺は飛ばした。ひたすらに自転車をこいだ。
ストレートビーチは街の南西側の海辺。夕日に向かって俺はひたすらに足を回した。
そういえば、フィリアと夏菜とビーチに遊びに行った時は、夕陽を背に帰ったっけ、と思い出す。
ただ、そうやって思い出に浸っている余裕はない。前だけ向くんだ、俺!
そうやってひたすらにこいでいると、フィリアが後ろからぎゅっと抱き着いてきた。スピードを出し過ぎたせいか、彼女を不安にさせてしまっただろうか。
いつもなら心臓が飛び跳ねているだろうけれども、既に全力でこいでいて心臓はバクバクだった。
なので、俺の心臓はフィリアに後ろから抱きしめられていることからはねているのか、酸素が足りなくてバクバクしているのか、もうその区別さえつかなくなっていた。
汗がぽたぽたと落ちてくる。日が落ちてきて涼しくなる時間帯なのに、容赦なく夏の残暑が襲ってくる。ただ、首に巻いておいた冷凍タオルが時々、その首回りの冷たさを伝えてくれる。
銭湯で始まった売上アップ作戦の日から、常に冷凍庫に入れておくことになったタオルが、こんなところでも役立つとは。
信号待ちに引っかかった。この信号は待ち時間が長いところだ。するとフィリアが、「ゆ、ユウトさん、これ」といって白装束の胸元から透明な小瓶を取り出してくれた。中にはオレンジ色の液体が入っている。
「ミカンラッシーです。も、持ってきました!」
フィリアの胸元から出てきたこともあって、いつもなら緊張してどぎまぎするだろうけれども、もう俺は何も感じなくなっていた。「ありがとう!」と言って一気飲みする。
冷たく甘い爽やかなドリンクが体を駆け抜けていく。これが銭湯で売れないわけがない!ちょっと高い値段でもいいんじゃないかな?と思いつつ、それは後回しだ!と自分に言い聞かせ、空いた瓶をカゴに入れる。
ちょうど信号が変わったので、俺はまた走り出す。止まるわけにはいかない。
本当は30分ぐらいかかるところだけれども、俺が全力でこいだことで、20分ぐらいで到着することができた。
息もだえだえだった。
「だ、大丈夫ですかユウトさん…」
「も、もちろん!」と俺は作り笑いをする。
その辺にあった自動販売機で水を買い、息を整える。時刻は既に六時になろうとしていた。スマホで調べると日没は六時半ぐらいらしい。
既に茜色の空は暗くなり始めている。急がないと!
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
https://ncode.syosetu.com/n8980jo/
「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、ぜひ【★★★★★】の評価やコメントをいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
@chocola_carlyle




