第170話 最強の戦い
「<五重剛塊岩石砲>」
プリスアルマはおれに向けて、巨大な岩石の五重攻撃を放ってきた。それに対し、防御の姿勢を取るどころか無防備に突っ立ているおれに、アイシス先輩が叫び声を上げる。
「な、なにをしているんだ!? 早く、魔力障壁を展開しない……と……!?」
おれに向かって飛んできた巨大な岩石達は、おれに欠片も触れることなく消失した。当然、おれはダメージどころか宣言通りかすり傷すら付かず、その光景に驚いたのかアイシス先輩の言葉が止まる。まあ、こんな物を見せられれば驚くのも無理はない。
「これがおれの本当の力にして最強のゆえんたる吸収魔法、その名も<絶魔吸襲壁>!」
「か、<絶魔吸襲壁>だと!? そ、それはいったい……?」
「今見た通り、魔法を元の魔力へと戻して無力化し、自分の魔力として吸収できる魔法です。言うなれば、絶対防御ですね」
「そ、そんな魔法が……! い、いや、確かにすごいがそれでは駄目だ! 奴には身体強化も――」
アイシス先輩が言葉を言い終える前に、プリスアルマがおれに猛スピードで突っ込んでくる。この速度、身体強化にかなりの魔力が込められてるな。だが、今のおれには無意味だ。
おれは魔力を刃のように鋭く圧縮し右手に集中させ、手刀の構えをとる。そして、プリスアルマがおれの心臓めがけて繰り出してくる拳を無視して、自分の右手を振り下ろす。
「<絶魔吸襲壁>!」
おれの放った手刀はプリスアルマの左腕を切り裂き、宙を舞ったそれは大きな音を立てながら地面に落ちた。ふむ、実戦で使うのは久々だから少し手元が狂ったな。しかも、実戦と言っても試したのは魔物相手だったし。
「な……!? あのプリスアルマの腕を落とした!? しかも、あの拳の直撃を受けたはずなのに……!?」
驚きと共にアイシス先輩が目を向けた先にはプリスアルマのひしゃげた右手があった。対するおれの左胸にはなんのダメージも入っていない。
「おれの<絶魔吸襲壁>は魔法を元の魔力へと戻して吸収できる魔法、つまり魔力を吸収する魔法ですからね。おれの身体全体を覆う最強の壁の前には、どんな魔力の鎧も剣も意味を成しませんよ」
「……そ、そうか! 身体強化で身体にどれほどの魔力を纏っても、それが君の身体に触れる前に吸収され消失してしまうわけか!」
「その通り。だから、おれの相手は自分だけ魔力なしの状態でおれと戦っているような物です。この、絶対防御にして防御不可能な絶対攻撃能力を持ってすれば、目の前の光景は当然の結果ですよ」
無傷のおれに対し、両腕が使い物にならなくなったプリスアルマ。戦況は完全におれの圧勝、いや、完勝と言える状況だ。おれに勝ち目がないと悟ったプリスアルマからも、その事実を指し示す機械音声が聞こえてくる。
「対象ノ殲滅及ビ戦闘継続ハ不可能。退避モードヘ移行」
プリスアルマは<飛行>を発動し、後方へと高速で飛んでいく。そのままこの部屋の壁を突き破り外へ逃げようとしたようだが、その手前にある結界魔法の壁に叩き落とされた。
「……知らなかったのか……? 大魔術師からは逃げられない……!!」
この部屋の周囲にはすでにおれが<防魔結界>を展開してあるからな。まあ、プリスアルマほどの魔力なら、本来であればその壁を突き破って逃げられただろう。だが、おれの場合は<防魔結界>の手前に<絶魔吸襲壁>を展開しているから、それを壊すのは不可能だ。
立ち上がったプリスアルマはそのまま微動だにしない。もはや、この戦況でどうしていいか分からないのだろう。それなら、そろそろ引導を渡してやるとするか。おれは右手で魔法陣を描き、最大の魔力出力で魔法を放つ。
「<神聖不死鳥>!!」
「じょ、上級攻撃魔法とはいえこれほどの威力を! ……だ、だが、奴にも魔力障壁による絶対防御が……! いや、そうか!」
アイシス先輩の言葉の通り、おれが魔法を放つと同時にプリスアルマの前に魔力障壁が自動展開される。だが、その魔力障壁がおれの神聖なる不死鳥とぶつかる前に、おれが発動した<絶魔吸襲壁>により消失する。
結果、無防備な状態で獄炎に包まれたプリスアルマだが、まだその機能を停止する気配はない。まあ、さすがにこれだけで終わる相手ではないか。おれは再び手刀の構えを取り、猛スピードでプリスアルマに突っ込む。
「終わりだ! これが、最強の防御にして最強の攻撃、<絶魔吸襲壁>!!」
おれが放った最強の一撃でプリスアルマの身体は真っ二つになり、大きな音とともに地面に倒れた。




