第169話 約束と本気
時間は少しさかのぼり、場所は王都――
男の夢が叶い二人の彼女とのダブルデートにこぎつけたおれは、三人でとある飲食店の個室にいた。ここなら他の客の視線はないため、存分に二人の彼女とイチャイチャすることができる。
「はい、あ~ん」
「……宇宙一うまい」
「じゃあ、次はあたしね。あ~ん」
「……宇宙一うまい」
「なんなの? あなたの世界には宇宙が二つあるの?」
ああ、なんて最高な空間なんだ。ここは四人席だが、全員で片方の席に座っている。つまり、二人用の席に三人で座っているため、必然的におれ達の身体が密着している。当然、彼女達の柔らかい身体に触れているおれは気持ちが良い。
しかも、リミアもサフィアもそんな状態を嫌がる素振りもない。いや、むしろ、喜んでいるように見える。やはり、女の子も彼氏相手なら身体が触れ合うのは嬉しいのだろう。やっぱり、恋人ってすごい!
もう永遠にこの時間が続けば良いのに……。……いや、それは困るな。だって、男としてはやっぱり可愛い彼女達とあんなことやこんなことやそんなこともしたいし。
なんにせよ、このダブルデート自体はもっと長く続いて欲しいと思っていると、おれの左手中指に付けている盟約の指輪が光り出した。
「レインさん、これって!?」
「アイ先輩になにかあったってことよね!?」
「そうみたいだな。悪いけどデートは中断だ。今すぐアイシス先輩のところに行って来る」
「それはいいですけど、どうやって行くんですか!?」
「そうよ! 今のアイ先輩ってかなり遠い場所にいるんでしょ!?」
二人は真っ青な顔でおれを見つめていた。盟約の指輪が光れば、通常それは相手に命の危険が迫っていることを示している。そんな状況では、普通に考えてはるか遠くにいる相手を助けるには間に合わない。だが、おれは普通ではない。そう、普通ではなく異常者だ。
「大丈夫だ。おれには一瞬で離れた場所に移動できる魔法、<転移>がある」
「そ、そんな魔法まで使えるんですね……」
「……ホント、あなたにはいつも驚かされるわね」
「じゃあ、急ぐからこれで。ちゃんと、無事にアイシス先輩を助けてくるから安心してくれ」
「……あの、それなら、わたし達も行ったほうがいいんじゃ?」
「そうよ。人手は多いほうがいいでしょ?」
……ありがたい申し出だが、アイシス先輩に危険が迫っているならかなりの強敵がいるのかもしれない。それに、相手の人数も分からないなら、おれ一人で行ったほうが安全だろうな。
「いや、なにがあるか分からないから、おれ一人でいくよ。二人とも悪いな」
「……いえ、分かりました。じゃあ、気を付けてくださいね」
「ちゃんと、アイ先輩と二人で帰ってきなさいよ。待ってるから」
「ああ、ありがとな」
おれは盟約の指輪に示されたアイシス先輩がいる座標を確認し、その場所めがけて<転移>を発動した。
*****
時間は戻り現在、場所は研究都市フォルンの実験室――
「な、なぜ君がここにいる? 君は王都にいるはずでは……?」
「その通りです。ついさっきまでおれは王都にいましたよ。それで、アイシス先輩と対になる盟約の指輪が光ったから――」
おれがアイシス先輩と話を続けようとすると、再び<絶零氷柱槍>が飛んできた。まあ、これくらいはさっきみたいに魔力障壁で防げばいいんだが、これだと会話がしづらいな。
「とりあえず、あいつをなんとかしないと駄目みたいですね。おれはアイシス先輩に<治癒>をかけるので、その間に状況を説明してもらって大丈夫ですか?」
「……あれはプリスアルマという魔道兵器で暴走を始めた。こちらの魔法は魔力障壁の自動展開で防ぎ、高威力の魔法と身体強化を使ってくる。その強さはこの私よりもはるかに格上だ」
「この状況でも的確で簡潔な説明とはさすがですね。ありがとうございます」
しかし、アイシス先輩よりもはるかに格上とは驚いた。このロボットみたいなのを作った人物は恐ろしいほどの天才だな。しかも、アイシス先輩と戦っていたはずなのに、未だに大きな魔力を感じる。どうやら、このプリスアルマとやらには絶大な魔力を有する魔石が何個も使われてるな。
「……正直、君でもこのプリスアルマの相手は厳しい……。いや、ディーバ殿に勝るという強さを持つ君ならあるいは……」
「……そうですね。普通に戦ったら苦戦するかもしれませんが、おれが本気で戦えば余裕でしょう」
「き、君はそこまで強いのか!?」
アイシス先輩が驚愕に満ちた瞳でおれを見た。おれはアイシス先輩を安心させるために、自信満々の声音で言葉を返す。
「はい、だから安心してください。今ここで、夏休みにしたおれの本当の力を見せるという約束を果たしますよ」
おれが正面に向き直ると、プリスアルマから機械音声が聞こえてくる。
「新タナ優先排除対象ヲ確認。即時殲滅対象ヲ変更、実行スル」
「なんかごちゃごちゃ言ってるが、お前はおれにかすり傷一つ付けられないぞ。かつて、王国最強の魔術師として名を馳せた師匠にすら勝ち目がないと言わしめた、このおれの本気を見せてやるよ!」




