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2.3-12 ブレスベルゲンの探検9

「ひぃー……やっと出たにゃ……」


 サヨはどうにか縦穴を登り切って、地上へと戻ってきた。出た場所は町の中のどこか。路地裏にある下水道への出入り口だ。


 そこで青い空を見上げたサヨは、肺の底から息を吐き出すように、深く溜息を吐いた。人を避けるために地下に潜って、まさか命の危機(?)に直面するとは微塵も思っていなかったのだ。気がつけば大冒険。気が抜けたせいか、彼女の膝はガクガクだ。


「お腹が減ったにゃぁ……」


 今は何時か……。空を見上げているサヨからは、太陽の姿は見えない。そもそも南の方角がどちらなのかも分からない彼女にとって、太陽の角度だけでは時刻を知ることは出来なかった。


 とはいえ、唯一、正確に機能している時計も存在する。


   グゥゥゥゥ……


 腹時計だ。


「この感じ、多分、お昼を少し回ったくらいにゃ」


 いつもよりも少しお腹が減り気味。ということは、昼ご飯を摂るのが少し遅れたくらいの時刻だろう……。サヨはそんな推測をしたようだ。なお、クッキーは別腹なので、腹時計は狂わない模様。


 実際、町の中には、美味しそうな匂いが漂っていたようである。どこからともなく漂ってくる匂いがサヨの唾液腺を刺激する。


「美味しそうな匂いにゃ……」じゅるっ


 サヨは獣としての本能に対して忠実に従い、美味しそうな匂いが漂ってくる方向へと足を向けた。


  ◇


 一旦、屋根の上に飛び出し、大通りを2つ飛び越え、そして3つめの大通りに差し掛かったところで、サヨは足を止めた。屋根の上にいた彼女は、ゆっくりと大通りを覗き込んで、そして涎をゴクリと飲み込む。


「お祭りみたいにゃ……。これが、小枝様の言ってた屋台かにゃ?」


 大通りの脇を埋め尽くすように並ぶ屋台。そこでは、ブレスベルゲンの周辺で採れたと思しき、肉や野菜を使った様々な料理がズラリと並んでいた。


 それを見たサヨは、空腹のあまり、人々に避けられていることも忘れて、屋根の上から飛び降りた。


   シュタッ!


「おじちゃん!これ1本下さいにゃ!」


「ひっ?!……ま、毎度!」


 空から女の子が降ってきて、いきなり食べ物を注文するという状況に、屋台の店主は戸惑うが、彼はプロフェッショナル。すぐに冷静になって、サヨの注文に対応する。もしかすると、サヨの他にも、似たような現れ方をする人物がいて、慣れているのかも知れない。


「300ゴールドだ」


「300……(たしか、茶色いお金が1枚で100の価値がある、って小枝様が言ってたから、茶色いお金が3枚にゃ!間違ってたら、その時はその時にゃ!)」すっ


「あいよ。確かに300ゴールド頂いたぜ」


「んにゃ!合ってたにゃ!」しゅたっ


 サヨは再び屋根の上へと跳びはねる。人で混雑する大通りで食事をする気にはなれなかったらしい。屋根の上なら、ゆっくり食べられると考えたようである。ネコらしい考えと言えるかも知れない。


「んーみゃ!」がつがつ


 屋根の上に上がったサヨは、早速、獲物を口に運ぶ。ちなみに魚ではなく、肉だ。湯気の上がる肉の焼き串を、ハフハフと口を動かしながら、美味しそうに平らげる。


 しかし、育ち盛りのサヨには、串焼き1本では物足りなかった。彼女は再び屋根の上から獲物を物色する。


「やたらと肉料理が多いにゃ。もしやこの町は、肉の名産地かにゃ?んー……あ。汁物を発見!」シュタッ


 サヨは再び地上に舞い降りた。


 そんな往復が5回ほどあって、サヨは満腹になったようである。彼女が降りてくる度に、屋台の店主たちは驚いた様子で目をまん丸くしていたようだが、驚きのあまり腰を抜かしたり、応対が出来なくなる者はおらず……。最後の方では、こっちに来い、とサヨに向かって自分たちの料理がよく見えるようにジェスチャーをしていた者までいたようである。


 どうやら、サヨが思っているほど、この町の人々は、小枝たちのことを嫌っているわけではないらしい。


もしかすると、明日から1、2週間ほど、アップロード出来なくなるかも知れぬのじゃ。

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