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2.3-11 ブレスベルゲンの探検8

 神父のハザと、シスターのシェムに前後を挟まれる形で、サヨは地上へと連行されていく。逆らったら、ベテルギウスと名乗ったゾンビと同じように消されるかも知れない……。そんな恐怖がサヨの中で渦巻いていた。


 ゆえに、サヨは、どうにかして逃げ出そうと、チャンスを探していたようである。前後の2人が自分から注意を逸らす瞬間を狙って、走れば良い……。


「(そう……走れれば良いんだけどにゃぁ……。この2人、全然スキが無いにゃ……)」


 アンデッドが1匹いたら、100匹は隠れていると思え。教会にはそんな格言があるらしく、シェムとハザは、これ以上無いくらいに、周囲を警戒していた。2人とも、小枝の関係者かも知れないサヨを守るために、全力を尽くしていたのだ。


 ちなみに行き先は木下家なので、このまま2人に連行されれば、無事に木下家に帰れるのだが……。サヨはそのことを知らなかったりする。もしも知っていたなら、きっとサヨは、逃げ出そうなどとは考えなかったに違いない。


「(んにゃぁ……。サヨに出来る事で、2人の注意を逸らせることは……)」


 他力本願で逃げる隙を探すのは、ほぼ不可能。なら自力で隙を作り出すことは出来ないか……。サヨはそんな考えに辿り着いたらしい。


「(ネコの姿ににゃって、隙間に逃げ込む?ダメにゃ……。隙間の先が袋小路ににゃっていたら、自殺行為にゃ。やっぱり、"あれ"しかにゃいかにゃ。上手く行けば逃げられるけど、失敗したら……ベテルさんと同じように消されるかも知れにゃいにゃ……)」


 サヨにはアイディアがあった。ただ、バレるかも知れないという心配が、彼女の行動にブレーキを掛けていたようである。


「(でも。やらないと、どこに連れていかれるかも分からにゃいし……。うん。やるしかにゃいにゃ!)」


 ダメで元々。サヨは決心する。


 と、そんなとき。


   ウ゛ォ゛ォ゛ォ゛


 聞いたことのないような低く大きな呻き声が、歩いてきた地下道の後ろの方から響いてくる。やはり、他にもアンデッドが生き残って(?)いたらしい。


 その瞬間、サヨは反射的に行動した。


「(んー、にゃっ!)」


   ポワッ


 サヨが心の中で力んだ瞬間、少し離れた場所の空中に小さな炎が現れる。青白い炎だ。まるで熱を感じられないその炎は、鬼火。魔法でもなく、科学でもない、いわゆる超常現象である。


 洞窟の奥から響いてきた呻き声と相まって、シェムとハザは鬼火に釘付けとなる。サヨが疑われなかったところを見るに、どうやら、彼女の鬼火は、魔力とは一切関係ない現象らしい。


「何だ?あれは……」


「いえ、私も見たことがありません」


「強力なアンデッドが出てくる前兆かも知れないな……。ここは一旦——」


 一旦引こう……。そう口にしようとしてハザが振り向くと、そこには——、


「んん?あの少女はどこに行った?!」


「えっ?!」


——サヨの姿は無くなっていた。サヨはどうにか、シェムとハザの目を掻い潜って、逃げることに成功したのだ。


  ◇


 心臓が破裂するほど必至に足を動かし、時にはネコの姿になり、壁を駆け上がって、サヨは地下道を駆け抜けた。


 随分と遠くまで走ったせいか、流石に体力が限界を迎えたらしく、サヨの速度は段々と落ち、彼女はその場にへたり込んでしまう。


「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ……。サ、サヨは逃げ切ったかにゃ……?」


 後ろを振り向くも、既に聖職者2人の姿は見えない。アンデッドの気配も無い。ただ静かな空洞が広がるだけ。


「な、なんとかなったにゃ……」


 緊張感から解放されたサヨの全身から、ドッと力が抜ける。


 それからサヨは息を整え、そして溜息を吐いたわけだが、その際、彼女は、通路の先に、微かな光を見つける。天井から差し込んでいる光だ。紛れもない太陽の光だった。


「よ、ようやく……ようやく外に出られるにゃ……」


 安堵したサヨの身体から、再び力が抜けた。


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