↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

猫はどこまで知っている?

掲載日:2026/08/29

(ネ、ネ、ネコぉぉぉぉ! こっちから先、どうする気だよぉぉ)


 飼い猫に丸裸にされた俺は、投げ込まれた川で王様に救出され、気がつけば"カラバ侯爵"なんて呼ばれて、お姫様との結婚話を提案されてるんだが?


 何がどうして、こんななった???



(粉ひき小屋の三男が貴族を(かた)るなんて、処刑まっしぐらの未来しか見えないっ)


 王様とお姫様と同じテーブルにつき、豪華な料理を前に(とど)まることない涙を心の中で流す。

 手に持つワインが震えてる。

 一滴でも金貨相当の高級ワイン。こぼすくらいなら、口に流し込まなくては……! だが、はたして喉と胃が受け付けるだろうか。



 ここ数か月の記憶を振り返ると、想像も及ばないような経験の連続だった。


 まず、親の他界で上の兄が粉ひき小屋を、下の兄がロバを相続した。

 そして俺の元に残ったのは、一匹の猫。


 遺産相続で与えられたこの猫が、とんでもないクセモノだった。


「袋と長靴が欲しい」と強請(ねだ)られたから工面(くめん)してやると、なんやかんや毎日出かけて、気がつけば王様と懇意(こんい)になっていたという。


 猫は"カラバ侯爵"の名前で、ウサギやカモを王様に届けていたのだ。


 そしてある日、ヤツは決行した。

 王様が馬車で通るタイミングを見計らい、俺に水浴びを(すす)めておいて、こう叫んだ。


「大変だ! カラバ侯爵様が(おぼ)れているぞ!」


 聞きつけた王様の家来たちに助けられ(?)、立派な貴族服を与えられながら話を聞くと、なんとまぁ猫のヤツ、とんでもない嘘をでっちあげてた。

 俺が裸だったのは、強盗に身ぐるみ()がれたからだって。


 いや、強盗も狙いそうにないボロっボロの庶民服だよ。

 着てたら到底、貴族と間違われるはずもない。多少、川で洗われたからって、侯爵様なんて雲の上過ぎる。猫の設定には無茶しかない。


 なのに王様とお姫様は俺を馬車に乗せ、あっという間に"カラバ侯爵のお城"とやらに到着した。歓迎の宴でごちそう山盛り。


 王様はこの歓待を大いにお気に召し、お姫様との結婚話が浮上した、今ココ。


 俺は立派な料理の前で、グラス片手に固まったままだった。

 テーブルマナーなんて知らん。皿の料理は全然減らない。


(おい、ネコ。何とかしろよ、これ!)


 (すが)る思いで猫はと見れば。

 アカン。魚メニューに夢中でこっちを見てない。なんでシレッと席についてる。神経ごん(ぶと)か。


 離れた席で、王様が何か冗談を言ったらしい。

 お姫様が可愛く笑って頷いている。


「は……、ははは……」

(心臓もたねぇぇ)


 味も見た目も覚えてない食事の後は、流れでお姫様とバルコニーin人食い鬼の城。


(お姫様との縁談なんて、無理しかない。今ここで謝れば、ワンチャン許して貰えまいか……!)


 隣に立つお姫様は、とても優美で品良くて。

 艶めく髪に、愛らしい頬。長いまつげに、(みどり)の瞳。

 白い肌は内から発光してそうなくらい、輝いている。


 完璧なカタチした唇が、飴細工より甘そうで……。

(どこ見てるんだ俺!)

 バッチーン。心の中で自分を平手打つ。


(俺の正体が粉ひき小屋の三男だなんて知ったら、きっとその場で打ち首だよな!?)


 ドウッドウッと脈が最期に足掻(あが)いてる。

 俺だってまだ死にたくねぇよ!


「侯爵様のお名前は、なんとおっしゃるのですか?」


 ふいに、お姫様が()いた。


「俺ですか? ジャン・ムニエ……」


 そのまま答えてハッとした。ムニエは粉ひきの、って意味なだけ。苗字はカラバじゃなきゃおかしい!

 固まる俺に微笑んで、お姫様がこう言った


「ふふ、ジャン様。ご安心ください、わたくしはあなたの味方です」

「……へ?」

「大変失礼なのですが、貴族には今日、おなりになったばかり……ですよね?」

「!!」


 見抜かれてる!!


「あ、あの、実は……」


 言い訳しようと頭を回すが、空転だらけで言葉が出ない。


「泳ぎの上手いあなたが、"溺れた"だなんて。ユーモアあふれる演出ですこと。でも危険なので、二度となさらないでくださいね?」


「え?」

 俺はマジマジとお姫様を見返した。

(なんでこの方は、俺が泳げるって知ってるんだ?)


 疑問は口に出さなかった。なのにお姫様は俺の視線に答えをくれた。


「お忘れですか? 以前、溺れたわたくしを助けてくださいましたこと」


 お姫様が言う。

 彼女は昔、お忍びで街歩きをした際、誤って足を(すべ)らせ川に落ち。

 偶然通りかかった俺に助けられたことを忘れてないと。


(そういえば、うんと昔にそんなことがあった……かも)


 身分が高そうな女の子を、川から引き()げたことがあった。

 "お礼がしたい"と名前を聞かれたけど、わらわらと出て来たお付きの人たちにビビって、急いで逃げた記憶がある。


「じゃあ、あの時の……?」

「その後あなた様のことを調べましたが、身分差ゆえ叶わぬ恋だと思っておりました」

「え。つまりそれは、本来の俺を知っている──」

 ってことだよな!?


 サッと全身の血が、足元に落ちる。


「存じております。わたくしの恋を叶えようと、(たず)ねて来た猫から聞いています」


(ネコ! あいつ!!)


 何をどこまで知っていて、いつから計画立てていた!?


 お姫様が真剣なまなざしで俺を見上げた。


「何も問題はありません。どちらにせよ、お父様は悪い人食い鬼を退治した者に、爵位を与えるおつもりでしたから」


(退治したのはネコですがね?!)


「わたくしを、貰ってくださいましね? カラバ侯爵様」


 お姫様の笑顔がまばゆい。その(まぶ)しさに目がくらみ、思わず俺は聞いていた。


「お、俺なんかで良いんでしょうか?」


 良くないに決まってる。なのに!


「あなたが、良いのです」


 すっかり正面から俺を見てるお姫様。そんな彼女から、目を逸らすことが出来ない。


「優しいお人柄に、精悍なお顔立ち。鍛えられたお身体。わたくしはあの日、助けていただいた時から、あなたをお慕いしております」


(そんな幸運、本当(ホント)にある? まるで奇跡だ)


 夢の中ではと(うたぐ)る俺を、柔らかな声が包んだ。


「末永く、どうぞよろしくお願い申し上げます」

「う、あ、え。こちらこそ?」


 思わず答えると、どこからか、にゃあんと鳴く猫の声。


 ネコ、すっげぇぜ、お前!!




 こうして、粉屋の三男坊は、お姫様と幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。




 お読みいただき有難うございました!

「長靴を履いた猫」ベースなお話。侯爵を名乗ってもバレるのでは、という思いがずっと心にあり、でもお姫様が共犯ならあるいは…?に起因したお話です。


 2年前に途中まで下書きして、置いてたメモを本日完成させました。

 最近、小さなお話を連発していますのは、アルファポリス様で開催中の「第1回児童書大賞」に参加しているため…!

 更新しないとすぐ24時間ポイントが落ちるのです。恐ろしい…!!


 ジャンルは変更するかもしれませんが、楽しんでいただけましたら幸いですヾ(*´∀`*)ノ

 皆様、良い週末をお過ごしください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良かったらコチラもよろしくお願いします!
普段は異世界恋愛が多いです!

・▼・▼・▼・▼・▼・
【総合ポイント順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【新しい作品順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【異世界恋愛+α】
・▲・▲・▲・▲・▲・

【最近書いたお話】
童話ジャンル『空からこぼれた、星のお話 (童話版)』
エッセイ『パセリって「悪魔のハーブ」なの?』
― 新着の感想 ―
遠い昔に主人公がした人助け。 猫が見事にそれを実らせてくれましたね。 とてもほっこりしました。
猫ちゃんに乗せられて、あれよあれよと言う間に侯爵様になっちゃった三男くん、まさにこんな心境だったのでしょうね(≧∇≦) お姫様の初恋の人で良かった良かったε-(´∀`*)ホッ 今回も素敵なお話をあ…
拝読させていただきました。 確かに「長ぐつをはいた猫」の原作はハッタリと綱渡りの連続で、お姫様と結婚できたとしても早晩育ちの悪さがバレたのではと懸念されますよね。 でもこういうことなら安心ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。