再起動3:【グルーミングの手口についての暗喩】
イメージソング:ロックマンDASHエピソード2大いなる遺産 サウンドトラック
https://youtu.be/T3h0h34ZJ0A?si=G4vzTjwUQWORyvyE
ハンマーコアラとヤスリウサギは、フウカ・ヴェリタスの手先として、忠実かつ完璧な「破壊の機械」へと変貌していた。
ある日は王都全域の郵便局を巡り、勤勉に働くすべての局員の左足だけを正確に金槌で粉砕し、永久に歩行不能にした。
またある日は、王都の競技場やトレーニング施設を急襲し、すべてのアスリートの右足だけを精密に破壊し、肉を壊死させて毒を全身に回させた。
さらにある日は、王都周辺のすべてのにんじん農家を襲撃し、悲鳴を上げる農夫たちの鼻を冷酷に削ぎ落とした。
絶対防御の魔力を身に纏った二人は、銃弾も魔法もすべて体表面で無効化し、ただ黙々と、確実に作業を遂行した。
その成功率は完璧な100%。
目も見えず耳も聞こえない障碍を抱えながら、王都全域にわたる広大なミッションを誰一人取りこぼすことなく完遂するその凄まじい精度と遂行能力は、もしこれが凄惨な拷問処刑でなければ、人類史上に残る偉業として世界中から称賛されるべき奇跡であった。
だが、彼らに与えられるのは賞賛ではなく、肉体をバラバラに破壊されては引き戻される無限の蘇生だけであった。
そんな無慈悲な地獄の底に、奇跡のような救いの手が差し伸べられた。
二人のもとに現れたのは、フウカの暴虐に密かに異を唱える正義の人権活動家、通称「あしながおじさん」であった。
光も音も奪われた二人は、互いの手のひらに指で触れ合い、触覚と点字だけを頼りに密かなコミュニケーションを交わした。指先を小刻みに動かし、文字を刻み合う。
『フウカを倒すのではない。逃げるのだ』
『あしながおじさんの助けを借り、この悪夢から抜け出そう』
二人は表向きはフウカの命令に従い、さらなる凄惨な処刑や殺しを冷酷に遂行しながら、着々と脱出の計画を練り上げた。そして雨の降る夜、二人は死力を尽くし、ついに恐怖のヴェリタス・アジトから抜け出すことに成功したのである。
あしながおじさんの隠れ家は、王都の喧騒から遠く離れた静かな森の中にあった。
あしながおじさんは、目も耳も失った二人を暖かく迎え入れた。手厚く傷を介抱し、温かいスープを与え、二人が人間としての尊厳を取り戻せるよう親身になって尽くしてくれた。フウカの恐怖から逃れられたという安らぎ。
二人はそこで、穏やかで幸福な時間を過ごした。
一ヶ月が過ぎ、一年が過ぎ……気が付けば、あの地獄のようなアジトを抜け出してから3年の月日が流れていた。
二人は手と手を携え、静寂の中で互いの温もりを感じながら、人並みの「幸せ」を噛み締めて生きていた。
そんなある日、あしながおじさんが点字を通じて、二人に夢のような提案を持ちかけた。
『失った目と耳を、最新魔導医療によって完全に取り戻すことができる』
その言葉に、キットとジルの胸は大きく躍った!
再び光を見ることができる!
再び互いの声を聞くことができる!
もう一度、人間として、自分の足でまともな世界を歩むことができるのだ……と!
期待と喜びに胸を膨らませた二人は、自ら進んで医療用の手術台の上に横たわった。
手術が始まった。
まぶたの裏に、数年ぶりに冷たい金属の触感が伝わる。魔導の電流が脳髄を駆け抜け、失われていた神経回路が急速に再結合されていく感覚。鼓膜が再生し、三半規管が復元され、閉ざされていた視神経に、パッと眩しい白い光が飛び込んできた。
キットは歓喜の声を上げようとした。
ジルの顔を見ようと、ゆっくりと視線を動かした。
3年ぶりに目にする世界。3年ぶりに取り戻した光。
しかし!
手術台の上に固定された二人が目にしたのは、希望に満ちた未来などではなかった!
目の前に立っていたのは、黒系ドレスに豪奢な毛皮を羽織り、サメの鋭利な歯を剥き出しにしてクスクスと笑う、一人の女だった!
フウカ・ヴェリタス!
「あら?ごきげんよう、俗物ども!3年ぶりの外界の光は、いかがかしら?」
あしながおじさんなど、最初から存在しなかった!
人権派の活動家も、穏やかな森の隠れ家も、3年間の幸福な日々も!
すべてはフウカが二人に「完璧な希望」を見せた後に、それを底底から叩き潰すために仕組んだ、壮大な戯曲に過ぎなかったのだ!
キットとジルは、一瞬で悟った!
自分たちの人生は、生き様は、苦しみも、逃亡も、3年間のささやかな幸福すらも、すべてこの化け物の手のひらの上で弄ばれていたに過ぎなかったのだと!
「あはははは!期待に胸を膨らませて手術台に寝そべるあなたたちの顔、傑作でしたわ!さて、おバカな豚さんたちには、最高の『ご馳走』になっていただきますわね!」
逃げ出そうとしたが、手術台の拘束具が二人をガチリと固定していた。
フウカは鋭いサメの爪をキットの腹部に突き立て、まるで熟した熟した果実の皮を剥くように、生きたまま腹を裂いた。
バリバリッ、という生々しい咀嚼音が部屋に響き渡る。
フウカは、キットの腹から引きずり出した大腸や肝臓を、そのまま口に放り込んで噛み砕いた。温かい血と肉汁が彼女の顎を伝い、ドレスを赤く染める。続いてジルの腹部も同様に引き裂かれ、脾臓や胃袋が生きながら食い荒らされていった。
「あぐっ……ぁぁぁぁっ!おゆ!おゆ!おんゆーーーっ!!!!」
「い!いーっ!ぱ!まああああ!くっ……あぁぁぁっ!」
「あら?しぶとい豚は美しくありませんわよ!」
フウカは冷酷に言い放つと、二人の顔面に覆いかぶさった。
彼女のサメの巨頭が狂暴に顎を開き、キットとジルの顔の右半分を、骨ごと雑に食いちぎった。
右の眼球、右の頬肉、右の顎骨が、一口で削り取られる。脳髄の一部が露出した状態で、二人の生命活動はついに限界を迎え、荒い痙攣とともに絶命した。
王都国会議事堂の豪奢な大ホールは、割れんばかりの拍手と、無数の魔導カメラが放つフラッシュの瞬きに包まれていた。稀代の殺人鬼として王都の夜を恐怖と血の海に沈めていた「ハンマーコアラ」と「ヤスリウサギ」を完全に討ち果たしたという大義名分により、フウカ・ヴェリタスは救国の英雄として、特設された純白の表彰台の頂点に立っていた。国家の最高権力者たちが彼女に媚びへつらい、その壇上に最も近かった肥えた防衛大臣が、恭しく最高位の黄金の勲章をフウカの胸元へと掲げようと、一歩、また一歩と足を踏み出していた。その、歴史的な栄誉が最高潮に達した瞬間であった。
一切の予兆はなかった。フウカの愛らしい口元が、物理法則を完全に無視して突如として耳元まで不気味に裂けた。そこにあったのは上品な笑みなどではなく、ノコギリのように幾重にも重なった、サメの牙の円陣であった。
鼓膜を引き裂くような凄まじい咀嚼音が大ホールを揺るがした。防衛大臣の右半身、頭蓋骨の右半分から右肩、右腕、右肺、そして心臓の半分に至るまでが、一瞬の瞬きすら許されない速度でフウカの胃袋へと消失した。
「ひっ……!化け物だ!撃てェェェッ!殺せェェェッ!!」
警備に当たっていた精鋭の魔導兵たちが、一斉にアサルトライフルと高出力の魔導兵器を構え、銃弾をフウカへ向けて放った。だが、煙が晴れた後に立っていたフウカは、豪奢な毛皮の毛一本すら焦がしておらず、ただ退屈そうに血に濡れた指先で口元を拭いながら、こう言い放った。
「……まあ、ね」
その一言の直後、フウカの影が消えた。彼女は最前線に群がっていた数人のカメラマンと、重武装の警備員たちの懐へと瞬時に飛び込み、彼らの手足を、腹を、顔面を、生きたまま次々と踊るように喰らい尽くしていった。
そこからのフウカの行動は、あらゆる概念を超越した完全なる平等であった!
善悪も、貧富も、老若男女も、そして生体としての種族の壁すらも、彼女の食欲の前では完全に無意味だった!
逃げ惑う白髪の老人男性の頭部を丸呑みにし、足元で恐怖に震えながら通り抜けた野良ネコをバリバリと噛み砕き、悲鳴を上げて階段を駆け上がる成人女性の喉笛を背後から食い千切る。空を飛んでパニックを起こしているカラスの群れをまとめて口に放り込み、足元を這いつくばっていた野良イヌを骨ごとすり潰す。そして、パニックのあまりその場に立ち尽くしていた一人の少年を捕らえ、無邪気に笑いながら丸ごと咀嚼した。
それだけでは終わらない。
フウカは街の目抜き通りへと躍り出ると、当然のように、数十階建ての高層ビルに向かって跳びつき、その鉄骨とコンクリートをガリガリと喰い荒らした。崩落する瓦礫の中から驚いて飛び出してきた一匹のドブネズミを、愛らしい指先で摘んでポイと口に放り込み、満足げに喉を鳴らす。
次の瞬間、フウカは特に理由もなく、当然のように極寒の南極大陸へと空を蹴って飛び立った。
氷原に着地するやいなや、そこでぼんやりと歩いていた巨大な白クマを頭から丸齧りにし、さらに海の底から這い出してきた神話級の巨大シードラゴンを、その長い胴体ごと串刺しにして胃袋へと収めた。
かと思えば一転して、今度は灼熱の太陽が照りつける広大な砂漠へと一瞬で転移する。砂の中から飛び出してきた巨大なデスワームを、特に意味もなく、細切れにして貪り食った。
胃袋がちぎれんばかりに満たされたはずの彼女は、しかし満足することなく、再び一瞬で王都へと舞い戻った。そして、王都の古い路地裏にひっそりと佇むアンティークショップの軒先で、怯えながら震えていた少女の右手を、当然の権利であるかのように綺麗に喰いちぎった。
その直後、なぜか感情の糸がプツリと切れたように、フウカはもう一度あの灼熱の砂漠へと単身で舞い戻り、誰一人いない乾いた砂の上で、天を仰ぎながら狂ったように、泣き叫び、地面を引っ掻き回した。
数分後、再び王都へと戻ってきた彼女は、怒りに任せたのか、あるいはただの気まぐれか、歴史ある街の古い本屋へと大量の魔導引火弾を投げ込み、建物全体を激しい業火で焼き討ちにした。燃え盛る本と紙の焦げ臭い匂い、崩れ落ちる書棚を背景に、フウカは腹の底からケラケラと楽しげに笑い転げ、その瓦礫の山の上で、まるで赤子のようにすっきりと、そして幸せそうに眠りについた。
これは、終わりである!
人類が数千年をかけて積み上げてきた秩序、数学的な理論、社会的な常識。そのすべてが、たった一人の少女の気まぐれな咀嚼音によって、完全に、そして無残に破壊されたのだ。
世界は終わった!
誰もがそう確信し、冷たいアスファルトの上で絶望に身を震わせていた、その時であった。
空間が、耳をつんざくような高周波の音とともに眩く発光した。
歪んだ次元の裂け目から現れたのは、褐色の肌に清潔な純白の白衣を纏った、この地球最強の魔導士、エラーラ・ヴェリタスであった。
「フム……なるほどね!始祖・ヴェリタス。会えて光栄だよ!」
そのエラーラに続いて、重々しい足音とともに空間から降り立ったのは、圧倒的な殺気を放つ最強の武闘派探偵ナラティブ・ヴェリタスであった。
ナラティブは鋭く危険な双眸で、瓦礫の上で眠るフウカを冷たく睨みつけ、エラーラに向けて緊迫した声で告げた。
「エラーラ!あいつはただの殺人鬼じゃない!いや、理そのものを喰らうバグだ!あいつの存在そのものが……いや、これは、まさか!……飛龍!?」
彼女は、自分たちの血族の起源や、世界の成り立ちに関する謎解きという「どうでもいいこと」を続けようとしていた。もちろん、その言葉が最後まで紡がれることは、永遠に訪れなかった。
音速の数倍の速度で、眠っているはずのフウカが消えた。
エラーラの網膜が捉えたのは、文字通り「残像」すら残さない絶対的な黒い閃光だけだった。次の瞬間、ナラティブの身体の左半身が完全に、一片の肉片すら残さずに胃袋へと消え去っていた。
最強の武闘派探偵と呼ばれ、数々の修羅場を潜り抜けてきたナラティブは、驚愕の表情を浮かべる暇すらなかった。断末魔の悲鳴を上げる間もなく、右半身だけの肉塊となって、ドス黒い血の海の中へ音もなく崩れ落ちた。
エラーラが喉の奥から恐怖の悲鳴を絞り出そうとした時、すでにフウカの冷たい黒髪が彼女の鼻先をかすめていた。
これは、終わりである!




