美食18:【覚醒する意志!原始ヴェリタスよ天に昇れ!】
イメージソング:忍者戦士 飛影 サウンドトラック
https://youtu.be/lO5JaBuRvoY?si=22wC949OIN2PF0zR
す、べ、て、が、終、わ、っ、た、後、の、世、界、は、ひ、ど、く、無、彩、色、で、あ、っ、た。無、色、で、透、明。た、だ、た、だ、静、謐、で、狂、お、し、い、ほ、ど、に、無、意、味、な、時、間、の、連、続、だ、っ、た。朝が、来て、そうして、夜が、来る。風が、吹き、たまに、雨が、降る。サメ獣人、としての、特異な、肉体は、衰える、ことなど、知らない。無限の、魔力を、その、奥底に、燻らせ、ながら、泥臭い、凡夫の、肉体は、病を、弾き、怪我を、瞬時に、癒やして、しまう。死にたいと、願う、心を、嘲笑う、かのように、彼女の、心臓は、正確に、リズムを、刻み、続けて、いた。王都の喧騒を、遠く離れた、冷たい石造りの、洋館。そこでフウカは、一日中、窓の外の灰色の空を、眺めて過ごした。何も、することがない。何かを、する、理由がない。脳裏に蘇るのは、かつての鮮やかな記憶だけだ。マオ。最愛の少女。ヴェリタスという重すぎる名をフウカに託して散っていった、あの日の血の温もり。ノルン。魔導規制局の冷徹な猟犬でありながら、その奥底に歪んだ信念と哀しみを抱えていた女。ジン。愚直なまでに己の正義を貫こうとした男。彼らとの日々は、間違いなく楽しかった。裏社会の泥水の中を這いずり回り、血で血を洗うような闘争の最中にあっても、そこには確かに生の熱狂があった。魂がぶつかり合い、互いの存在を削り合いながらも、確かな絆があった。だが、今はもう誰もいない。彼らはすべてを奪われた。命を、未来を、尊厳を、理不尽な世界によって叩き潰された。そしてフウカ自身もまたすべてを奪われた彼らという光を失い生きる目的を失いただ一人この灰色の世界に取り残されてしまったなぜ自分だけが生き残ってしまったのかその問いが毎夜毎夜鋭い棘のようにフウカの胸を刺した富を手に入れ名だたる学術機関を裏から支配しエルフの権威すら揺るがす力を持ちながら死んだ友人一人を取り戻すこともできないこの無限の魔力も卓越した知性もサメ獣人の生存能力も結局のところ何もできないことの証明でしかなかった泣き喚く気力すらもうなかった悲しみは飽和し怒りは凍りつき後に残ったのは圧倒的な虚無感だけだった本を読んでも文字はすべりおちさけをのんでもようことはなくただじかんだけがすなのようにゆびのあいだをすりぬけていくまどがらすにうつるじぶんのかおをみるそのかおはまるでせいこうにつくられたしたいのようにせいきをうしなっていたとものしのうえにまってこきゅうをしているじぶんじしんがひどくけがらわしいものにおもえたそれでもよあけはようしゃなくおとずれるふうかのこころはゆっくりとしかしかくじつにかんぜにすりへっていったこのままれきしのかたすみでだれにもしられることなくしずかにくるってくちていくのだろうそうおもっていた……
しかし。
世界は、彼女を静かな絶望の中に留めておくことを許さなかった。
あるいは、彼女自身の内に潜む「完全なる野蛮と知性」が、最後の叛逆を求めて疼き出したのかもしれない。
灰色の憂鬱な日々が続いたある日。
フウカ・ヴェリタスは、立ち上がった。
彼女の瞳には、かつての虚無に代わり、世界そのものを焼き尽くすような、冷たく青い業火が灯っていた。
彼女は静かに笑った。
その笑顔は、絶対的な知性と暴力を内包した、美しき反逆者のそれであった。
「……休息は、ここまでといたしましょう」
決意の日が、来たのだ。
その日!
正午!
世界中のあらゆる通信網、電波塔、魔導・ネットワークが、一瞬にして、ジャックされた!
巨大ビジョン!
テレビ・モニター!
魔導端末!
果ては、交通機関の運行掲示板に至るまで!
すべての画面が暗転した!
直後!
漆黒のドレスに身を包んだ、一人の女の姿が映し出された!
フウカ・ヴェリタス!
彼女の背後には、王都を見下ろす圧倒的な高度感が広がっていた!
嵐のように、吹き荒ぶ、突風!
彼女が立っているのは、王都の象徴であり、魔導規制局の中枢でもある「王都タワー」、最上部!
展望台すら超えた、アンテナがそびえ立つ、正真正銘の「頂上」であった!
『ごきげんよう!わたくしは、フウカ・ヴェリタス!今日、皆様にいくつかの「真理」をお伝えするために参りました!』
よく通る声だった!
世界中の人々は、その、圧倒的な存在感に目を奪われ、歩みを止めた!
『一つ目!あなた方が恩恵として享受している「魔力」について!長年、魔力は生命のエネルギーであり、無害な奇跡であるとされてきました!ご存知の通り、それは大嘘です!魔力は、人間の大脳を徐々に、確実に侵食します!魔力使用は、最終的には、深刻な認知障害と人格崩壊をもたらします!』
市民たちは、ただ、呆然と画面を見つめていた!
『二つ目!魔導規制局が、この大脳への毒性を知りながら、なぜ魔力の行使を黙認、いや、推奨してきたのか!それは皆様も薄々ご存知の通り、「経済」のためです!魔力による産業が、この世界の経済を回しているからですわ。これも、周知の事実ですわ!』
フウカは冷たく微笑みながら、さらに深い闇へとメスを入れた。
『しかし、それだけではありません!彼らは予見していたのです!いずれ、この歪んだ世界に「飛龍」が襲来することを!』
飛龍!
その言葉に、世界中が息を呑んだ!
それは伝説の災厄であり、かつてノルンが毒殺したとされる少女のコードネームでもあった!
『魔導規制局の内部では、飛龍は「世界を滅ぼすために襲来する」とまことしやかに語られてきました!しかし、それすらも!彼らの嘘です!飛龍の真の目的は、攻撃などではありません!飛龍とは、世界を、完全に白紙に戻し、「やり直す力」そのものなのです!現在の国連の出資者であり、魔導規制局の最大のパトロンである王都の支配者たちは、その「世界をやり直す力」をこそ、獲得したいのです!自分たちに都合の良い、完全な支配体制をゼロから構築し直すために!』
世界が激震した。
絶対的な正義とされていた機関の、腐敗しきった真の目的。
『そして、最後に!最も愚かで、最も滑稽な真実を教えましょう!あなた方が神からの授かりものだと信じている「魔力」の起源!それは、かつての旧王都、帝都政府がクーデターの際に放った致死性の毒ガス、通称「キングダム・ウイル……』
フウカの言葉がそこまで到達した瞬間!
ブツンッ、と音を立てて、世界中の放送が途切れた!
魔導規制局が総力を挙げて通信を強制遮断したのだ!
しかし、もう遅かった!
真実は放たれた!
世界を覆っていた欺瞞の殻は、決定的に叩き割られたのだ!
なぜ、フウカはすべてを暴露したのか?
正義感に目覚めたからか?
自分からすべてを奪った世界への復讐のためか?
真実を語ることで、正義の味方になったような気休めを得たかったからか?
否、どれも違う!
彼女がこの大立ち回りを演じた本当の理由は、この世界を「臨界点」に達させるためだった!
王都タワーの頂上!
凄まじい突風が吹き荒れる中、放送設備を破壊されたフウカは、乱れる髪を押さえながら、はるか上空を見上げていた!
空が、割れていた!
フウカが世界の欺瞞を暴き、人類の集合無意識に隠されていた恐怖と混乱と悪意が限界を突破したその瞬間!
世界の構造そのものに巨大な亀裂が入り、次元の壁が崩壊したのだ!
天の亀裂から……圧倒的な光と、重厚な爆発音を伴って……「それ」は降臨した!
巨大な翼!
神々しい鱗!
そして、世界のすべてを包み込むような、深い悲しみを帯びた瞳!
飛龍!
かつて、ノルンによって毒殺されたあの竜人の少女、ヌルの魂が、次元を超えて顕現した姿であった!
なぜ、ヌルが今のタイミングで来たのか!
それは、フウカが暴露した真実によって、世界中の人々が「現実」を完全に認識し、認知の歪みが、ついに、絶対的な修正を必要とするタイミングに達したからだ!
フウカの暴露は、ヌルをこの世界に呼び戻すための、巨大な召喚儀式であった!
「……久しぶりですわね……飛龍!」
暴風に煽られながら、フウカは空に浮かぶ巨大な飛龍に向かって微笑みかけた。
飛龍は、フウカを見下ろし、ゆっくりとその巨大な頭をタワーの頂上へと近づけた。
ポロリ、ポロリと。
飛龍の瞳から、涙が溢れ落ちた!
それは光の粒子となってタワーの床に降り注いだ!
世界を滅ぼすほどの力を持つ存在が、ただ一人の、少女のように泣いていた!
それを見て、フウカの瞳からも、いつの間にか涙が伝い落ちていた!
マオを失ってから、どれほど心をすり減らしても決して流れることのなかった涙が、とめどなく溢れてきたのだ!
飛龍の意志が、直接フウカの脳裏に響いた!
『この世界を、どうしたい?』
それは、究極の選択だった!
飛龍の力をもってすれば、この腐りきった世界を完全に破壊し、白紙に戻すことができる!
王都も、魔導規制局も、欺瞞に満ちた歴史も、すべてを無に還すことができる!
フウカの心には、猛烈な破壊衝動があった!
こんな世界など!
もう!
終わらせてしまいたい!
嘘で塗り固められたこの狂った世界など、跡形もなく消し飛ばしてやりたかった!
当たり前だろう!
ああ!
当たり前だよ!
終わらせてしまいたかった!
だが!
それでも!
フウカは、血まみれの泥水の中で足掻き、生きてきた人間たちを知っていた!
弱く、愚かで、裏切り、支配し、自己正当化ばかりする、人間たち!
また、利用されるだけかもしれない!
あるいは、自分が利用してしまうかもしれない!
それでも!
フウカは、人間が持つ「泥臭い生命力」を、自らの力で立ち上がろうとする意思を、信じてみたかったのだ!
フウカは涙を拭い、まっすぐに飛龍の瞳を見据えて言った!
「わたくしの願いは、ただ一つですわ!」
「本当に……本当に、この世界の人々が絶望し、世界が白紙になり、完全なる終わりを迎えたならば!その時だけ!その瞬間だけ!……この世界を助けてくださいまし!」
今はまだ、終わらせる時ではない!
まだだ!
まだなんだ!
人間が、自らの足で、この歪んだ世界を、正していくための時間を与えてやってほしい!
『生きろ!』
それが、フウカの願いだった!
ヌルは、静かに目を閉じた!
そして、最後にフウカにこう尋ねた!
『誰かの身体を借りて、また、この世界に遊びにきてもいい?』
その無邪気すぎる問いに、フウカは答えなかった……!
ただ、優しく、悲しげに微笑んだだけだった……!
光の粒子がタワーを包み込み、飛龍と、フウカ・ヴェリタスの姿は、次元の彼方へと、溶けるように消えていった……!
後に残されたのは、真実を知らされ、大混乱に陥った世界だけだった…………!
・・・・・・・・・・
それから、100年の時が流れた。
新暦108年。
現在の世界は、かつての彼女が思い描いた通りの姿になっていた。
医学と魔法物理学の発展により、大脳を侵食する「内なる魔力」に頼る時代は終わった。
誰もが安全な外付けデバイス「ナンバー」を携帯し、種族の壁を超えて魔法を行使できる社会が実現していた。
エルフによる絶対的な支配構造は崩れ去り、獣人たちもまた、自らの力で世界を切り拓いている。
王都の中央広場には、「初代ヴェリタス」フウカ・ヴェリタスの言葉が刻まれた石碑が建っている。
そこには、学生たちや、これから未知の世界へと旅立とうとする若者たちが、決意を胸に集まっていた。
平和な世界。
しかし、それは停滞を意味するのではない。
人間の欲望がある限り、新たな権力闘争や、次なる危機は必ず訪れる。飛龍の再来が必要になる日が、いつか来るかもしれない。
だからこそ、人々は立ち止まらない。闘志の火を絶やさない。
石碑に刻まれた、フウカが最後に説いた『ヴェリタスの最終定理』。
それは、今を生きるすべての人々に向けた、激しくも温かい檄であった。
【希望とは、誰かから与えられる救済ではない。自らの力で立ち上がり、抗うための『発端』である】
世界は続く。
泥に塗れ、傷つきながらも。
少女が遺した真理の炎は、人々の心の中で、今も激しく燃え盛っているのだ……!




